怒りっぽい人だけの謎の現象

今日は、毎月開催している英語論文を読む会「Aiジャーナルクラブ」でした。
持ち回り担当制で、担当は自分が読みたい論文を選びます。今回は私の担当で、「怒り」に関する論文にしました。

論文のタイトルは、「危険に引き寄せられる:怒りの形質は怒った顔への自動的な接近行動を予測する(Drawn to danger: trait anger predicts automatic approach behaviour to angry faces)」というものです。

平たく言うと、「怒りっぽい人は、怒った顔に近づいていく」という、謎の特徴をもつというものです。
なぜ謎なのかというと、ほとんどの人は、幸せな表情の人には近づいても、怒った表情の人からは身を引くという傾向があるからです。この傾向は、人間以外の動物にもあるとのことです。
怒っている様子、動物でも、威嚇的、敵対的な様子の相手に近づくのは危険だと感じて、自動的に後ずさりするのです。

しかしながら、怒りっぽい人は、逆に怒っている相手、敵対的な様子の相手に近づいていく傾向があるのではないかというのを、実験で試してみたという論文です。

学生に写真を見せ反応を測定する

大学生に、4パターンの写真、1)幸せそうでこちらを向いている顔、2)幸せそうでこちらを向いていない顔、3)怒っていてこちらを向いている顔、4)怒っていてこちらを向いていない顔を見せて、ジョイスティックでそれらの写真を近づける、あるいは遠ざける反応のどちらをするかと、反応の時間を測定します。
実験が終わった後、それぞれの学生が怒りっぽい性格かどうかの検査もします。

その結果、怒りっぽくない人は、怒っていてこちらを向いている顔に対しては、遠ざける反応をしたのに、怒りっぽい人は、近づける反応をしたことが分かりました。

これまでの論文での実験では、怒りっぽい人は、怒った顔に対する反応が速いというのは分かっていたのですが、近づくかどうかは示されていませんでした。

今回の実験では、近づくという謎の傾向は分かったものの、その理由は明らかになっていません。

自分なりの仮説

そこで、自分なりにそうなる可能性を探ってみました。

まず、前提として、日常の場面で、誰かから怒った顔を向けられた場合の一般的な反応ですが、楽しいとか嬉しいとかプラスにはならず、マイナスの反応になると思います。
そのマイナスは、恐怖、戸惑い、不安の場合もあれば、怒りの場合もあります。

恐怖は、相手が強そうな場合、上の立場、大切な相手の場合、仕事であれば、上司や得意先に対して感じやすいと思います。「わっ、怒らせた、まずい」という気持ちです。

そして、戸惑い、不安は、怒りっぽくない人は、同じ立場、下の立場、弱そうな相手に感じると思います。友人や家族、同僚や部下に対して、「えっ、なんで怒っているの?(戸惑い)」「なにか怒らせることした?(不安)」という気持ちです。

しかし、怒りっぽい人は、同じ立場、下の立場、弱そうな相手の場合、相手から喧嘩を売られていると思い、「なんか文句あんのか?」「ガンつけてる?」と喧嘩を買う、怒りで返すことになりやすいのではないでしょうか?

つまり、怒りっぽい人の場合、相手が自分より強くも偉くもないのに、喧嘩を売っているのが気に食わないので、叩きのめしてやれということになって、近づいていくのではないでしょうか?
あくまでも私の考え、仮説ですが。

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アンガーマネジメント的には、怒りには、自分を守るという機能、役割があります。
怒りっぽい人は、自分を守ろうとする気持ちが強いわけなのですが、その場合、脅威(と思われる事柄)に過敏に反応し、「やられる前にやる」という好戦的な態度につながることがあります。
このあたりが関係しているのではないでしょうか?

さて、この論文では、理由に関しては、「今後の研究が必要である」としています。
そして、今回の怒りっぽい人が脅威に近づく傾向は、アンガーマネジメントのトレーニングで減少させることができるのではないかとも書いてあります。

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ツナグバサンカクのWebサイトに、ジャーナルクラブの魅力についても原稿を書いていますので、そちらもどうぞ → 最初は「論文?」と思ったけれども、かなり楽しい、英語論文を読む会「ジャーナルクラブ」


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