「礼儀正しい国、日本で増えるキレやすい人々」という記事から考えたこと

「カスハラ」がテーマの記事

昨日、「パワハラは『WPV』だった!」というブログを書きましたが、今日、クーリエ(COURRIER JAPAN)に「『礼儀正しい国』日本でなぜ人々が“キレやすく”なっているのか?」という記事が載っていました。

これは、中国の「サウス・チャイナ・モーニング・ポスト」の記事で、「病院の受付に激怒する患者、JR職員に暴力を振るう乗客……礼儀正しさと他者への敬意を誇りとしてきた日本で、攻撃的になる人が増えている。客による迷惑行為『カスタマーハラスメント』が社会問題化している現状とその背景を中国紙が取材した」とあります。

中国の記事なのですが、(日本の)中央大学の教授や、日本の航空会社の人に話を聞いています。

まず挙げられているのが、読売新聞の悩み相談欄の投稿で、病院の受付の女性が、患者から不満をぶつけられ、つらいという件。

これに対して、中央大学教授の辻泉氏は、「丁寧に否定的な対応をされたときに無礼な態度に出たり攻撃的になったりする人が日本で増えている可能性がある」「自分が弱い立場だと感じている人々が、反論して抵抗すれば、立場が強くなることに気づいたのです」と言います。
そして、「その戦術を使うのは若者や女性に多い」とも。

これは「怒りの性質」として説明できる

これを読んで、私は、これは、アンガーマネジメント的には、「怒りは、高いところから低いところに流れる」という性質だなと思いました。

怒りは、力関係が高いところから低いところ、つまり強い立場から弱い立場に向かうという傾向があります。

病院の受付の人が、患者さんに対して、丁寧に否定的な対応をする、たとえば「それは出来かねます」などと言った場合、受付の人を自分(患者)より力関係で下の立場だと捉え「えっ、なんで出来ないの!」とキレるわけです。

「自分が弱い立場だと感じている人々」「若者や女性」も、強い立場の人々から怒りをぶつけられていて、その腹いせに、自分よりも弱い立場の人へ怒りをぶつけている可能性があります。

これは、アンガーマネジメント的には「怒りは連鎖する」「怒りは矛先を固定できない」という性質でもあります。後者は、たとえば、職場でのイライラを家庭や他の場所の関係のない人にぶつけるというものです。

先の辻教授は「キレる人が急増している最大の要因は、日本人が従来よりも大きなストレス下に置かれていることだ」と言っています。「多くの人にとっては将来を楽観視するのはとても難しい状況」とも。

そして、記事では、東京都やJRのカスハラ対策、奈良県天理市が保護者の苦情に対応する専門の窓口を新設したことなどが紹介されています。

さらに、日本の航空会社に勤める女性の話が続きます。
この女性は、ビジネスクラスの客が悪質で「一日中彼らの苦情を聞き続けて」いるという話をしています。

この記事の傾向は、日本人が読むと、そこまで珍しくはないのですが、海外の人にとっては「ストレスが原因で、礼儀正しい日本人がキレやすくなっているのか」と、少々驚くかもしれません。

いずれにせよ、ストレス管理を含む「メンタルヘルスケア」や「アンガーマネジメント」の重要性が高まっていると感じます。