パワハラは「WPV」だった!

パワハラの論文が見つからない

昨日は、英語論文を読む会「ジャーナルクラブ」で、私が担当でした。
今回、私は、パワハラ関連の論文を探していました。
しかし、「パワハラ」は、和製英語で、英語は「ハラスメント(harassment)」もしくは「職場のいじめ(Workplace Bullying)ということで、そのキーワードで探していたのですが、あまり見つかりませんでした。

そして、英語では「WPV(Workplace Violence)職場の暴力」という言い方のほうが、一般的だということを発見!
ILO(国際労働機関)、WHO(世界保健機関)、ICN(国際看護師協会)、PSI(国際公務員労働連盟)などでは「WPV」を使っているぞ!ということが分かり、「WPV」で調べるとたくさんの論文がありました。

「暴力」というと、殴る、蹴るのイメージがありますが、肉体的暴力だけでなく、心理的暴力が入っています。
心理的な「いじめ」「嫌がらせ」は、「え~っ、気にしすぎ」「悪意はないよ」「大げさだよ」と過小評価されやすい側面もありますが、「立派な暴力です」ということになっています。

看護師に対するパワハラ、カスハラ防止プログラム

論文の内容は、看護師に対するパワハラ、カスハラをなくすためのプログラムを作り、試したら、効果があったというものです。

看護師の場合、内部、つまり上司や他の医療スタッフからのパワハラのみならず、外部、患者やその家族などからの、いわゆる「カスハラ(カスタマーハラスメント、顧客によるハラスメント)」も受けることになりがちです。

患者やその家族と接する機会が多いので、医師の責任や病院の仕組みであっても、患者の不安からの怒りだったりしても、看護師にぶつけられることがあります。

論文では、ベテラン看護師や専門家(心理、法律)を中心としたグループで、現場に即した、WPS(職場の暴力)につながりそうなハイリスク要因を11個出して、それに対する対応策を考え、プログラムを作って、現場の看護師が4週間合計26時間の研修を受けるというものでした。

対応策としては、「CICAREコミュニケーションモード」という、UCLAと提携している公的医療システム、UCLAヘルスが開発した、患者とのコミュニケーションモデルを使っています。
CICAREは、Connect(つながる)、Introduce(紹介する)、Communicate(伝える)、Ask(尋ねる)、Respond(答える)、Exit(退出する)です。

たとえば、こんな感じです。
 つながる:〇〇さんのご家族の皆さん、こんにちは。
 紹介する:私は、〇〇さんを担当する看護師の△△です。
 伝える:〇〇さんの状態について説明させていただきます。~
 尋ねる:〇〇さんの一刻も早い回復には、~が必要です。~でよろしいでしょうか?
 答える:(質問に答える)
 退出する:~の際はすぐにお知らせください。今後~の予定です。

ハイリスク要因をピックアップして、対処法を考えるというのは、業務の課題解決、質的向上がテーマだと行なっていても、パワハラ、カスハラ対策では、そこまで一般的ではないので、参考になりました。

論文は、世界中の研究者が、いろいろなテーマで書いていて、こういう目的で、こういうことを、こういう手順で行なったら、こういう結果になったということが、数字で出ているので、興味深いです。

論文勉強会は、月1オンライン開催で、オブザーブ参加も行なっています。担当者が、日本語訳したPDFを配布します。「学術論文の読み方実践講座」も行なっています。