ガザ攻撃で露呈した、ナクバなどイスラエルの不都合な真実

エルサレム市街地

今年1月26日に、国際司法裁判所(ICJ)が、イスラエルに対して、ガザへのジェノサイドを防ぐため、あらゆる対策を講じるよう命じた後も、攻撃は続いています。ガザでの死者数は、4月16日時点で、3万3843人です。

さらに、昨日(4月21日)、イスラエルのネタニヤフ首相は「痛烈な追撃を加える」と発言し、ラファへの地上侵攻を念頭に置いていると見られています。

このネタニヤフ政権に関して、イスラエルの歴史学者で、世界的ベストセラー「サピエンス全史」の著者、ユヴァル・ノア・ハラリ氏が、イスラエルの新聞「ハアレツ」に、4月18日に書いている記事が、なかなか興味深いです。

記事のタイトルは「ガザからイランまで、イスラエルの存続を危うくするネタニヤフ政権」で、「サムソンの死」の挿絵が入っています(記事:英語)。

記事は長いのですが、いくつか抜粋します。

  • パレスチナ人に対する行動を改めなければ、私たちの傲慢と復讐心が歴史的な災難をもたらすだろう。
  • 米国や世界中の若い世代は、イスラエルは人種差別的で暴力的な国であり、何百万人もの人々を故郷から追放し、全住民を飢餓に陥れ、復讐以上の理由もなく何千人もの民間人を殺害する国だと考えるようになった。その結果は、今後数日、数カ月だけでなく、数十年先まで続くだろう。
  • ネタニヤフ首相とその政治的パートナーたちは、長年にわたって人種差別的な世界観を培ってきた。そのため、パレスチナ人の命の価値を軽視することに慣れてしまったイスラエル人があまりにも多い。
  • ネタニヤフ首相はイスラエルの「完全勝利」を約束し続けているが、実のところ、われわれは完全敗北まであと一歩だ。
  • 私たちをここに連れてきた悲惨な政策を採用したのはネタニヤフ政権であり、復讐と自殺というサムソンのような政策を採用したのはネタニヤフ政権だ。(川嵜注:サムソンは、ユダヤ教の聖書に出てくる英雄で、怪力だったが、心の弱さから騙され、最後は復讐して自分も死ぬ)
  • 新たな政府を樹立することが極めて重要であり、これまでとは異なる道徳の指針に導かれ、ガザの人道危機に終止符を打ち、我が国の国際的地位の再構築に着手することになる。

つまり、これまでネタニヤフ政権が行なってきた、パレスチナに対する人権無視の政策は、イスラエルの存続を危うくするので、直ちに辞任し、新たな政府を樹立することが重要だと言っていて、まさにその通りだと思います。

「世界中の若い世代が~」と書かれていますが、今回のガザへの攻撃で、若い世代のみならず、世界中の人々がこれまで思っていたイスラエル(欧米諸国並みの民主主義国)と、パレスチナ問題(2000年前からの宗教での対立)は、どうやら違うことに気づいたはずです。

イスラエルでも「ナクバ」を知らない人が多い

そもそものイスラエルの国の成り立ち「ナクバ」から、イスラエルがこれまでパレスチナ人に行なってきた、さまざまな人権侵害という不都合な真実が露呈したわけです。

1948年のイスラエルの成り立ちが「ナクバ(パレスチナ人を虐殺し、武力で追放し、パレスチナの土地を占領したこと)」であることは、これまであまり知られていなかったのではないでしょうか? じつは、私も最近まで正確なことは知りませんでした。

私は、中学生の時に、イスラエルについて調べ、先生に確認して、建国の際、虐殺や武力での追放があったことを知って憤りを感じていたのですが、それは一部だと思っていました。多くのイスラエル人は、パレスチナの地主にお金を払って不動産(土地、建物)を取得し、パレスチナの住人は借家、借地から出ていくように言われたのだと思っていました(先生もそう思っていました)。

そうではなく、ナクバで、75万人のパレスチナ人が故郷を追われたのでした。
その後のイスラエルのパレスチナ支配に関しても、詳しく知れば知るほど、人権侵害、国際法違反なのです。ちなみに、イスラエルの入植活動が国際法違反という見解は、日本の外務省のサイトにも記載されています。

これまで、西側諸国の一般の人々の多くは、ナクバもその後の支配の実情もよく分かっていなかったと思います。イスラエルの人たちでも、ナクバを知らない人が多いようなので。
まさに、「人種差別的で暴力的な国」というイメージは、数十年先まで続き、国の存続を危うくするかもしれません。

その前に、今、イスラエルが行なっているジェノサイド(大量虐殺)、ドミサイド(大規模破壊)は決して許すことはできないので、即時停戦を求めます。そして、これまで続けてきた入植活動など国際法違反は、裁かれる必要があるでしょう。