常連客からのカスハラが、Z世代との新たなプロジェクトに
カスハラ対策に悩む経営者からの相談
しばらく前に、ある経営者からカスハラ(カスタマーハラスメント)対策の相談を受けました。
BtoCのサービス業なのですが、常連のお客さまからある従業員に向けたカスハラともとれる態度に頭を悩ませているとのことでした。
- 常連のお客さまは、何よりも影響力をもった方で、対応が難しい。
- 担当した従業員は、Z世代の優秀な人で、会社のルールに則った対応をした。それが、常連のお客さまからすると「特別扱い」となっていなかったため、怒りにつながった。
- 常連のお客さまは、この担当した従業員を辞めさせろと言っている。従業員は、落ち度がないのに、今回の事態になり、メンタル的に打撃を受けている。けれども、将来的に独立も考えていて、勉強したいと前向きでもある。
- 現場責任者は、Z世代を含めた従業員に、顧客、とくに常連客には「融通を利かせた対応をしてほしい」と思っているが、Z世代に具体的にそれを指導するのは難しいとも感じている。
と、まあ、こんな感じでした。
相談(Zoom)に来られるのは、経営者の方だけだと思っていたら、現場責任者、担当した方も来られ、3人のお話を聞くことになりました。
(ちなみに、この件は、企業が特定されなければ、紹介してもらっても構いませんということで、文もご覧いただき、許可を得ています)
まず伝えたのは、
会社のルールに則った対応が、お客さまの怒りにつながったことに対して「融通を利かせた対応を」というのは、Z世代でなくてもNGだということ。
ルールが、曖昧で、ダブルスタンダードになってしまっては、もはやルールの意味がなくなります。
そのため、「融通を利かせる=こういう場合はこうする」は、ルールに追加する、定期的にルールを見直したほうがよいということです。
カスハラ対策プロジェクトの具体的な進め方
そして、この件は、次のようにすることになりました。
- 常連のお客さまへの対応策
常連のお客さまに対しては「プライドが傷つけられた」と思われている様子なので、リカバリーする策と応援団になってもらう策のたたき台を現場責任者が考える。 - カスハラ対策の基本方針策定
経営者は、カスハラ対策への取り組みの「基本方針、基本姿勢」を明確にする(文を作る)。 - カスハラの判断基準策定
現場責任者は、現場の従業員たちと一緒に、これまでのカスハラと思われるケース(発言、言動)を洗い出し、カスハラの判断基準のたたき台を作る。 - 従業員のプレ研修
従業員は皆、アンガーマネジメントの研修を受け、顧客が怒りにつながる心理を勉強する。また、ストレスマネジメントの研修も受け、メンタル対策も勉強する。 - 対応マニュアルの作成
カスハラ対応マニュアルのたたき台を、いわゆる融通の利く、これまで乗り切ってきた従業員を中心に、顧客心理、メンタル対策も踏まえて作る。クレーム対応のマニュアルも見直す。 - ロールプレイングの実施
そのマニュアルのたたき台をもとに、従業員でロールプレイング(お客さん役、従業員役、オブザーバーに分かれて実施)をして、調整する。 - 従業員の研修
カスハラ対応マニュアルとロールプレイングをもとに、従業員の研修を考え、実際に行ないながら調整する。 - 相談対応体制の整備
現場責任者は、従業員からのカスハラ相談対応(窓口など)の体制を考える。
以上のプロジェクトを立ち上げて、今回のZ世代の人が現場責任者とともに進めることになりました。
最初は、納得のいかないZ世代の従業員(少し怒った顔)、融通の利かないZ世代の従業員に頭を悩ませる現場責任者(少し怒りつつ、困った顔)、常連客と現場に悩む経営者(困った顔)の方々でしたが、ひょんなことから、カスハラ対策のプロジェクトを進めるという前向きな話になりました。
Z世代の従業員の方は「本当に挫けそうになっていたし、私の対応に対して注意を受けると思っていたので驚いています。嬉しい。まだ解決はしていませんが」と言い、皆さん、笑顔になっていたのが印象的でした。