アンガーマネジメント 6秒とは

「6秒経っても、私の怒りは収まりません」という訴え
私は、アンガーマネジメントの公開講座や研修を行なっているのですが、事前によく聞かれるのが「6秒」についてです。
アンガーマネジメントの「6秒ルール」は広く知られるようになってきました。
「アンガーマネジメントと言えば6秒ですよね。6秒で怒りが収まるんですか~?」とよく聞かれます。
研修の事前の質問にも「6秒待てば怒りは収まると聞いていますが、私も周りの人も6秒で怒りは収まりません。よりイライラするだけです。どうすればよいのでしょう」と書いている方がいらっしゃいます。
「6秒経っても怒りは収まらないので、アンガーマネジメントの6秒ルールは意味がない」「6秒で怒りが収まるのなら、怒る人はいない。まったくナンセンスだ」という意見も聞きます。
じつは、アンガーマネジメントの6秒は、単に「腹が立っても6秒経てば怒りが収まる」というものではありません。
お腹いっぱい食べて痩せる、5分でマッチョになると同じ?
「しかし、本のタイトルにありますよ。たった6秒で怒りを消すとか、どんな怒りも6秒でなくなるとか」とも言われます。そして、実際にそれらのタイトルの本はあります。
これは、お腹いっぱい食べて楽に痩せる本とか、1日5分でみるみるマッチョになる本と似ていて、「えっ」と思って手に取ってもらうのが(編集者的には)目的で、本を読めば、こういう意味ですよということや、そのための方法が書いてあります。
お腹いっぱい食べて楽に痩せるといっても、カロリーの高いものを大食いして、まったく運動をしなければ痩せませんし、1日5分といっても、散歩5分でマッチョになるわけでもないのと同じように、イライラを募らせたまま6秒経っても、怒りが収まるわけではありません。
痩せるためには、食べるものや食べ方を変える必要があり、筋肉を鍛えるためには、たとえば「ヒート(HIIT)」という高強度インターバルトレーニングを、正しい方法で繰り返しやる必要があるのと同じように、6秒にも意味や方法があるのです。
アメリカでは「10数えなさい」がポピュラー
では、アンガーマネジメントの「6秒」とは何なのでしょうか?
アンガーマネジメント発祥の地、アメリカでは、じつは「6秒」とは言っていませんでした。そのかわりに「10数える(count to ten)」と言っていました。
第3代アメリカ大統領、トーマス・ジェファーソンの言葉「怒りを感じたら、話す前に10数えなさい。激しい怒りを感じたら100数えなさい(When angry count to ten before you speak. If very angry, count to one hundred.)」という言葉がよく知られています。
「6秒」は、日本アンガーマネジメント協会が、アメリカの考え方、ノウハウや、脳科学的な観点から分かりやすく言い換えているのです。
同じように、アメリカのアンガーマネジメントでポピュラーな「コアビリーフ(core belief 中核的信念)」も「べき」と言い換えています。
そして、今では、海外でも、この「6秒」を使う人が出てきています。
6秒は脳のメカニズムと関係している
6秒は、脳のメカニズムと関係していると、医学博士の柿木隆介氏は言います(日経Gooday 記事)。
怒りは、大脳の偏桃体がつかさどっている生存のための機能、「本能」であるのに対して、それをコントロールする「理性」は、前頭葉の前頭前野がつかさどっています。そして、理性が働くまでの時間が3~5秒のため、「6秒待つ」ことが推奨されるのです。
「怒ってもよい」は間違い?のブログに書いたように、怒りは自然に発生するし、怒ってもよいのですが、爆発する(キレる)のはダメなのです。爆発してしまえば、本人にも周りの人にも手に負えず、ひどいことになる可能性が高いからです。
キレてから6秒は待てないので、キレないように6秒、いろいろな方法を使って落ち着くようにするのがアンガーマネジメントなのです。
落ち着くことで最悪の事態を防ぐ
6秒待つのは、要は「落ち着くため」「冷静になるため」です。
怒りは強い感情であり、その感情に任せて発言したり行動すると、暴言暴力につながります。アメリカは銃社会でもあり、最悪の事態を招かないよう、とにかく落ち着くことが大事です。
「6秒経ったけど、私の怒りは収まりません」は、筋トレで「1回やってみたけど、マッチョにはなりません」というのに近いものがあります。
イラっとしたときに落ち着くための自分に有効な方法を見つける必要があります。また、自分の怒りの傾向や考え方の癖を知り、よりよい日常のために、必要に応じて対策を講じることが大切です。