世界の人たちが事実を知り、状況が変わりつつあるのは喜ばしいことだと思う

昨日は、毎月行なっている「振り返りシェア会」でした。参加者それぞれが1か月を振り返るイベントです。シートにいろいろ書くのですが、そのなかに「今月の3つのハイライト」という項目があります。
私は、「パレスチナ大使講演会」と「アンガーマネジメント親子イベント」「経営士協会の半導体業界の勉強会」を書きました。

「パレスチナ大使講演会」は、じつは昨年11月に、「パレスチナと長崎をつなぐ会」などが、長崎、広島、東京をつないで、被団協にもご協力いただいて行なうことを予定していたのですが、実現できませんでした。
今年、長崎で急遽、講演会ができてよかったです。講演会の大使の動画は、今、会で編集中です。

パレスチナとイスラエルに関して誤解されていること

パレスチナとイスラエルに関しては、誤解されていること、知られていないことも多く、少しでも事実を知ってほしいという気持ちが、私にはあります。
誤解は、たとえば、「宗教対立」である、ユダヤ人とアラブ人の「武力衝突」で、どっちもどっちだ、「2000年の因縁がある」「パレスチナは国ではない」「解決は不可能」などです。

実際には、イスラエルの国際法違反の侵略、占領による領土問題、難民問題です。
ガザは、2007年からイスラエルにより封鎖され、人々の出入りも物資の搬入もインフラの利用もイスラエルの支配下にあります。これに対して、国連や国際機関は、国際人道法違反の人権侵害としています。
そして、現在も、イスラエルが(世界中からの)物資の搬入を極端に制限しているため、ガザの人たちが飢えているのです。

ユダヤ人は、2000年間、ずっと、パレスチナに帰りたいと思っていたわけではありません。1896年に、テオドール・ヘルツルが、「ユダヤ人国家」という本を出し、1917年にイギリスが、ロスチャイルドにお金を出させるために「ユダヤ人国家の建国を支持する」という書簡を送った三枚舌外交が、領土問題のきっかけとなっています。

パレスチナを国として承認しているのは140カ国です。

イスラエルが国策として2700件以上も行なっていること

イスラエルは、これまで強力なプロパガンダ(宣伝活動)と、3つの情報機関、モサド(首相直属の海外対象の諜報機関)、シン・ベト(首相直属のイスラエル国内、パレスチナ対象の情報機関)、アマン(軍事情報部)による情報収集と暗殺により、国内外に影響力を及ぼし、「自衛」してきました。

「自衛」に関しては、先日のブログ「パレスチナの歴史~この80年」で、イスラエルの自衛の考え方は、日本とは違うことを書きました。

すなわち、日本の自衛は、攻撃に対する必要最小限の対応であるのに対し、イスラエルは、将来、敵となる可能性が感じられれば、完全に芽を摘んでおくという考え方です。

イスラエルの歴代の首相は、実戦経験のある元軍人です。しかも、確実に敵をなきものにする特殊部隊の出身です。

イスラエル政府は、研究者(日本大学の小谷賢教授)によれば、2700件以上の暗殺を行なっており、これは国の安全保障のための制度として、首相が決裁しているものです。国際法では「暗殺」ですが、イスラエルにとっては、政策の一つなのです。(朝日新聞の記事) 

学校で「選民意識」と「被害者意識」を学ぶ

イスラエル国民の意識としても、イスラエルの中道左派の新聞「ハアレツ」によれば、今年6月にヘブライ大学が行なった調査では、イスラエル人の64%が、「ガザには無実の人はいない」と答え、とくに現政権の支持者では89%がその考えを支持しているとのことです。(記事

すなわち、イスラエルがパレスチナに行なっていることは、国際法的には「ジェノサイド(虐殺)」であっても、多くのイスラエル人にとっては、恐ろしい敵に対する自衛なのです。

ガザにいるのは、医者もジャーナリストも、子どもも赤ちゃんも、国連職員も、海外の人権団体のボランティアも、テロリストか、将来のテロリスト(子ども、赤ちゃん)、その協力者という考え方です。

この考え方に関して、日本在住のイスラエル人、ダニー・ネフセタイ氏は、「選民意識」と「被害者意識」があると言っています。学校で12年間、旧約聖書を学ぶなかで、自分たちは「選ばれた民」だという感覚になり、ナチスによるホロコーストに関して小さい頃から繰り返し学び、強い軍隊と先制攻撃の必要性を学ぶと言います。
(時事ドットコムニュースの記事

オックスフォード大学の討論会で投げかけられた「もし」

ガザで、どんな残虐なことが行なわれているか、パレスチナ系アメリカ人科学者で作家のスーザン・アブルハワ氏は、昨年11月のオックスフォード・ユニオン・ディベート(オックスフォード大学を中心とする世界で最も権威のある討論会)で、次のように語っています。(以下は、部分引用です。→ オリジナル

立場を変えてみよう。
もし、パレスチナ人がこの80年間でユダヤ人の家を奪い続けていたら。追放し、抑圧し、投獄し、毒を盛り、拷問し、レイプして殺していたら。
もし、パレスチナ人が1年で30万人のユダヤ人を殺していたら。記者、知識人、医療関係者、スポーツ選手、アーティストを狙い撃ちしていたとしたら。
イスラエル国内のすべての病院や大学を、図書館、博物館、文化施設、シナゴーグ(ユダヤ教会)を爆撃したら。
虐殺の様子を見物できる場所を用意し、観光スポットとして市民が集まっていたとしたら。

もし、パレスチナ人が大量のイスラエル人を粗末なテントに押しやり、安全地帯と呼ぶ場所で爆撃し、生きたまま人を焼き、水、食糧、医薬品が届くのを阻止したら。
もし、パレスチナ人によってユダヤ人の子どもたちが、空の鍋を手にして裸足でさまよい歩き、両親の肉片をビニール袋に集めなければならなかったら。肉親や友人を自ら埋葬することになったら。
子どもが真夜中にテントを出て、親の墓の上で眠るようなことがあったら。死を願うしかなく、孤独でひどい現世を終わらせて、家族の元へ行きたいと祈るとしたら。
パレスチナ人が非道なテロを仕掛けて、ユダヤの子どもたちの髪が抜け、記憶が消えて、心が壊れ、5歳にもならない小さな子どもが心臓発作で死んだら。
もし、私たちがユダヤの未熟児を死に追いやり、その泣き声が尽きるまで病院のベッドに放置したら。保育器の中で死に絶え、体が腐乱したら。

もし、私たちが小麦粉を載せたトラックでユダヤ人をおびき寄せ、食事を得ようと群がる人々を撃ち殺したとしたら。
もし、パレスチナ人が飢えたユダヤ人の避難場所に食糧の搬入を許可し、その後、避難所と支援トラックに火を放ち、空腹のユダヤ人を殺したとしたら。
もし、パレスチナ人のスナイパーが1日に42人のユダヤ人の膝を撃ち抜いたと自慢したら。2019年にイスラエル兵がやったように。もしパレスチナ人がCNNのインタビューで、戦車で数百人のユダヤ人を轢いたと証言し、キャタピラに肉片が絡まっていたと語ったら。

もし、パレスチナ人がユダヤ人の医師や患者や拘束者を組織的にレイプしていたら。熱した鉄の棒、電流を流した器具や消火器を使ってレイプをしていたら。レイプの末に殺していたら。アドナン・アル=ブルシュ医師や他の被害者のように。

もし、ユダヤ人の女性が汚物の中で出産を強いられたら。麻酔なしで帝王切開や足の切断手術を強いられたら。
もし、私たちがユダヤ人の子どもたちを殺戮し、そのおもちゃを戦車に飾ったら。ユダヤの女性を追い出し、殺し、その下着をつけて記念撮影したら。
もし、世界中の人々がネットの中継でユダヤ人の絶滅をリアルタイムで見ていたら。

それがテロやジェノサイドなのかという議論など起こらない。

以上の発言のそれぞれの内容は、イスラエルがパレスチナに行なっていることとして、世界のメディアがニュースとして、あるいは現地のジャーナリストなどがSNSにアップしたもので、これらに加えて、たくさんの残酷なニュースを目にします。

世界に日々情報を発信するジャーナリストたちは、2023年10月から今年8月までで、246人が殺害されています。そのなかには、イスラエルからSNSで脅迫(警告)されていた、人気の高い(発信力のある)人もいます。

変化が起こりつつあるG7やアラブ諸国

そういったなか、G7諸国はこれまでずっとイスラエルを支持してきましたが、最近、変化が起こりつつあります。

ガザの実情が、世界中の人たちに、メディア、SNSで広く知られ、イスラエルへの非難の声が上がってきたからです。

フランス、カナダがパレスチナを国家として承認すると表明し、イギリス、フランス、ドイツは、ガザでの人道的危機に対応するようイスラエルに求めています。

フランスのマクロン大統領は、8月26日に、イスラエルのネタニヤフ首相に書簡を送り、イスラエルの継続的な(パレスチナへの)行動は「あなたの国をさらに孤立させ、反ユダヤ主義の口実としてイスラエルを利用する者たちを勇気づけ、世界中のユダヤ人コミュニティを危険にさらすだけだ」と書いています(ハアレツ 記事)。

また、アメリカのキニピアック大学の調査で、アメリカ人有権者に「イスラエルはガザでジェノサイド(大量虐殺)を犯しているか」聞いたところ、そう考える人が50%で、そう考えない人が35%、判断できない人が15%と回答したとのことです。

この結果は党派で違い、民主党支持者では77%がジェノサイドだとする一方、共和党支持者(現トランプ政権は共和党)は64%がそうではないと逆転しています。

メリーランド大学が同時期に行なった世論調査では、アメリカ人の成人は、イスラエルが行なっていることは、「ジェノサイド」または「ジェノサイドに近い」が、去年は23%だったのが、今年は41%となっているとのことです(ハアレツ 8月28日の記事)。

一方で、アラブ諸国は、国連で、ハマスとの決別を表明しています。すなわち、ガザの再建に資金を投入する用意があるが、ハマスの武装解除とイスラエルへの(パレスチナ国家との)二国家解決への対応を求めています(ハアレツ 8月24日の記事)。

イスラエル国内でも「タブーを破り始めている」

イスラエル政府と多くのイスラエル国民は、ジェノサイドの根拠がないと言っていますが、イスラエル国内の有力者たちが、「タブーを破り始めている」とも、ハアレツの記事に書いてあります。

8月1日の記事には、イスラエルの著名な作家、デイヴィッド・グロスマン氏が、イスラエルが行なっていることはジェノサイドで、「声を上げる道徳的義務を感じている」と語っています。

また、昨日(8/31)のハアレツの記事で、イスラエルの弁護士、マイケル・スファード氏は、「今日、ガザで何が起こっているのか、疑いの余地はまったくない」「私たちイスラエル人は犯罪組織の一員だ。内部から戦うのが私たちの使命だ」「私たちは少数だが、決して取るに足らない存在ではない」と言っています。

イスラエルの内部から声を上げるのは、著名人、文化人とはいえ、危険でもあります。敵側に回ったと判断されれば、暗殺をも含めた容赦ない攻撃を受けるからです。

しかしながら、声を上げているのは、イスラエルの国際社会での孤立化を意識してのことでしょう。

「法の支配」がスタンダードになる世界を目指すべき

これまで、イスラエルがパレスチナに行なっていることに対して、世界中で無力感を感じる人たちが多かったと思います。

それでも、G7の政府を動かしているのは、それぞれの国民の「イスラエルを支持し、自分たちの税金でジェノサイドに加担するのはおかしい」という声です。

政治家にとって、国民の声はじつは大事で、次の選挙で自分たちが選ばれない可能性が高まることは避けようとします。

そして、それぞれの国は、今こそイスラエルが80年間続けてきた国際法無視に対して、それなりの対応を行なうべきだと思います。各国の国民は、それに対してももっと声を上げたほうがよいでしょう。

それぞれの国の国民は、国の法律によって罰せられ、守られてもいます。人を殺すと殺人です。日本の場合、3人殺せば死刑はほぼ確実です。放火も日本では重罪です。

「法の支配」は、それぞれの国内においては、社会の秩序にとって不可欠なものです。

 日本は、国家間においても「法の支配」を重要視しており、ICJ(国際司法裁判所)、ICC(国際刑事裁判所)、ITLOS(国際海洋法裁判所)などに、財政面、人材面で積極的に協力しています。

それら国際裁判所や国連を無力化させ、「武力による支配」をスタンダードにすることを看過すべきではありません。

それぞれの国内では当たり前になっていること(法による支配)を、国家間でも目指すべきだと私は思います。

あらためて、世界の人たちが事実を知り、変化しつつあるのは喜ばしいことだと思いますし、ジャーナリストをはじめとして伝えてきた人たちに感謝します。