人権って何だっけ?(3)法的拘束力をもつ「国際人権規約」

前回、「世界人権宣言」の内容を見ていきましたが、この宣言で挙げられている権利をあらためてまとめると、下記のようになります。

  • 生命や安全が守られ、生活水準が保障される
  • 教育が受けられ、自由に考え、意見を言い、創造活動ができる
  • 休息を取りながら働け、組合の活動や集会ができる
  • 結婚、離婚ができ、財産をもつことができる。移転もできる
  • 国籍をもち、法によって守られる。公正な裁判が受けられ、迫害からの他国への避難もできる

条文をマズローの欲求階層説に大まかに分けると、だいたい下記のような感じになります。

  • 生理的欲求・安全の欲求……「生命、自由、身体の安全」「国籍をもつ」「社会保障を受ける」「生活水準の保障、母と子への援助」「法律によって(同じように)守られる」「権利が侵害されたら、裁判所によって救済される」「公正な公開裁判」「無罪推定」「迫害から他国への避難」
  • 安全の欲求・所属と愛の欲求……「思想、良心、宗教、その変更」「教育を受ける」「労働に関する条件、保障、労働組合をつくる、参加する」「労働時間の制限、休息、余暇」「財産の所有」「国内での移転、出国、帰国」「プライバシーの干渉、攻撃に対する法の保護」
  • 所属と愛の欲求・承認欲求……「結婚、離婚、国による家庭の保護」
  • 承認欲求・自己実現欲求……「意見、表現」「文化生活への参加、創造物の保護」「平和的集会、結社」「自国の政治への参与、公務につく」「社会的、国際的秩序」

日本は「国際人権規約」を批准している

では、これらの権利をどうやって守るのかというと、法的な拘束力のある「国際人権規約」という「条約」でということになります。

「条約」は、国家間、国と国際機関との法的な約束で、この「国際人権規約」を批准した国は、自国民に対して、規約に書いてあることを保障する必要があります。規約の内容に合わない国内の法律等は、改正する必要があります。

「国際人権規約」には、「社会権規約(経済的、社会的、文化的権利に関する国際規約)」「自由権規約(市民的、政治的権利に関する国際規約)」「第1選択議定書」「第2選議定書」があり、日本は「社会権規約」「自由権規約」は批准していますが、条文のなかで留保している部分もあります。また、「議定書」は批准していません。

ちなみに、「議定書」という名称は、既存の条約を補完するものに対してつけられることが多く、この場合、「社会権規約」「自由権規約」の補完的な内容になっています。

「社会権規約」には、すべての人民は「自決の権利」があることや「労働」「社会保障」「教育」に関することなどが書かれています。また、「自由権規約」には、同じく「自決の権利」や「生命」に関すること、禁止事項(拷問、奴隷、拘禁)、「公正な裁判」「思想・表現等の自由」などが書かれています。

そして、日本が批准していない「第1選択議定書」は、人権を侵害された個人が国際人権(自由権)規約委員会に申し立てができる制度、「第2選択議定書」は死刑廃止の内容となっています。

人権に関する規約は、このほかに「人種差別撤廃条約」「女性差別撤廃条約」「子どもの権利条約」「障害者権利条約」など7つあり、日本は6つ批准しています。

批准とは、条約に対する、国家の主権者による最終的な同意のことなので、批准すると守る必要が出てきます。「社会権規約」を批准しているのは172国(2021年8月時点)、「自由権規約」を批准しているのは173国(2020年10月時点)です。

人権を守るのに不可欠な「法の支配」

国際社会においてはよく「法の支配(rule of law)」ということが言われます。

「法の支配」は、もともとは、国家権力を法で拘束するという考え方です。古代ギリシャの哲学者の思想や、古代ローマの法律を経て、中世のイギリスで明確化されています。

権力者が、それぞれ好き勝手に統治するのではなく、誰が権力者であっても、法に基づいて統治するというものです。もちろん、権力者が自分の都合の良いように法を変えると、この考えは崩れてしまいますが。

現在、それぞれの国(法治国家)は、その国の法律によって一定の秩序が守られています。この国際版が、「国際社会における法の支配」です。

国際秩序を保ち、各国の領土の保全や海洋権益、経済的利益の確保、国民の保護のために、国際ルール(国際法)に則って各国が動くというものです。

「法の支配」と対照的なのが「力による一方的な現状変更」です。

この場合、言うまでもなく、国際秩序は乱れ、各国の領土や海洋権益、経済的利益が損なわれ、国民に危険が及びます。

すべての人に人権があるというからには、それを守るためには、すなわち、お互いに人権を侵害されず、自由にさまざまなことをやっていくためには、国内外での「法の支配」、各人が一定のルールに則って行動することが不可欠でしょう。

じつは、この考え方は、アンガーマネジメントチームビルディングにも生かされていますが、それはまた別の機会に。

次回は、「法の下の平等」について書きます。