人権って何だっけ?(2)世界人権宣言に書いてあること


今回は、現代の人権の考え方のベースになっている「世界人権宣言」(Universal Declaration of Human Rights)の条文を見ていきたいと思います。

条文は、第一条(Article 1)から第三十条(Article 30)まであります。

第一条と第二条(外務省 仮訳文 クリックして表示)


第一条
 すべての人間は、生れながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。人間は、理性と良心とを授けられており、互いに同胞の精神をもって行動しなければならない。
 
第二条
1 すべて人は、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治上その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、門地その他の地位又はこれに類するいかなる事由による差別をも受けることなく、この宣言に掲げるすべての権利と自由とを享有することができる。
2 さらに、個人の属する国又は地域が独立国であると、信託統治地域であると、非自治地域であると、又は他のなんらかの主権制限の下にあるとを問わず、その国又は地域の政治上、管轄上又は国際上の地位に基づくいかなる差別もしてはならない。
 
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/udhr/1b_001.html


まず、第一条の「尊厳(dignity)」ですが、これは、人間の内的価値を意味する哲学的な概念で、プラトン(ギリシャ)、キケロ(ローマ)、カント(ドイツ)などが提唱しています。

研究者によって解釈が違いますが、まとめると、人間は理性を持つ存在で、道徳に基づいて徳を積むことで尊厳が高まる、尊重される存在だと言っています。

この世界人権宣言では、前文にも2か所「尊厳」という言葉が出てきており、理性と良心に基づき「尊重される」「大事にされる」存在であるというニュアンスだと考えられます。

第一条を小学生が分かるようにかみ砕くと、下記のような感じでしょうか?

すべての人は、生まれたときから自由で、同じように大事にされ、何かをすることができます。人は、賢さと良い心を持っていて、お互いに仲良く行動しなければなりません。

第二条は、いろいろ違っていても差別はされませんということで、いろいろが具体的に書いてあります。

このなかの「門地(もんち)」って何?  と思うかもしれませんが、家柄のことです。世界のさまざまな国では貴族、日本でも華族という特権階級があったので(イギリスなど、優遇はされないけれども今も名称が残っている国はある)書かれています。

そして、第三条から第二十八条は、具体的な「権利」と「禁止事項」が書かれているので、自分なりにまとめてみました。カッコ書きは私の補足、解釈です。

第三条~第十三条(外務省 仮訳文 クリックして表示)


第三条

 すべて人は、生命、自由及び身体の安全に対する権利を有する。

第四条

 何人も、奴隷にされ、又は苦役に服することはない。奴隷制度及び奴隷売買は、いかなる形においても禁止する。

第五条

 何人も、拷問又は残虐な、非人道的な若しくは屈辱的な取扱若しくは刑罰を受けることはない。

第六条

 すべて人は、いかなる場所においても、法の下において、人として認められる権利を有する。

第七条

 すべての人は、法の下において平等であり、また、いかなる差別もなしに法の平等な保護を受ける権利を有する。すべての人は、この宣言に違反するいかなる差別に対しても、また、そのような差別をそそのかすいかなる行為に対しても、平等な保護を受ける権利を有する。


第八条

 すべて人は、憲法又は法律によって与えられた基本的権利を侵害する行為に対し、権限を有する国内裁判所による効果的な救済を受ける権利を有する。


第九条

 何人も、ほしいままに逮捕、拘禁、又は追放されることはない。


第十条

 すべて人は、自己の権利及び義務並びに自己に対する刑事責任が決定されるに当っては、独立の公平な裁判所による公正な公開の審理を受けることについて完全に平等の権利を有する。

第十一条

1 犯罪の訴追を受けた者は、すべて、自己の弁護に必要なすべての保障を与えられた公開の裁判において法律に従って有罪の立証があるまでは、無罪と推定される権利を有する。

2 何人も、実行の時に国内法又は国際法により犯罪を構成しなかった作為又は不作為のために有罪とされることはない。また、犯罪が行われた時に適用される刑罰より重い刑罰を課せられない。

第十二条

 何人も、自己の私事、家族、家庭若しくは通信に対して、ほしいままに干渉され、又は名誉及び信用に対して攻撃を受けることはない。人はすべて、このような干渉又は攻撃に対して法の保護を受ける権利を有する。

第十三条

1 すべて人は、各国の境界内において自由に移転及び居住する権利を有する。

2 すべて人は、自国その他いずれの国をも立ち去り、及び自国に帰る権利を有する。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/udhr/1b_001.html

  • 第三条 (権利)生命、自由、身体の安全
  • 第四条 (禁止)奴隷、苦役(=つらく苦しい労働)
  • 第五条 (禁止)拷問、非人道、屈辱的な取扱い
  • 第六条 (権利)法の下で、人として認められる(=法律によって守られる)
  • 第七条 (権利)法の下の平等(=法律によって同じように守られる)
  • 第八条 (権利)権利が侵害されたら、裁判所によって救済される
  • 第九条 (禁止)不当逮捕、拘束
  • 第十条 (権利)公正な公開裁判
  • 第十一条 (権利)無罪推定(=有罪の立証まで無罪として扱われる)
         (禁止)冤罪、規定より重い罰
  • 第十二条 (禁止)プライバシーの干渉、攻撃
         (権利)干渉、攻撃に対する法の保護
  • 第十三条 (権利)国内での移転、出国、帰国
第十四条~第三十条(外務省 仮訳文 クリックして表示)


第十四条
1 すべて人は、迫害を免れるため、他国に避難することを求め、かつ、避難する権利を有する。
2 この権利は、もっぱら非政治犯罪又は国際連合の目的及び原則に反する行為を原因とする訴追の場合には、援用することはできない。


第十五条
1 すべて人は、国籍をもつ権利を有する。
2 何人も、ほしいままにその国籍を奪われ、又はその国籍を変更する権利を否認されることはない。


第十六条
1 成年の男女は、人種、国籍又は宗教によるいかなる制限をも受けることなく、婚姻し、かつ家庭をつくる権利を有する。成年の男女は、婚姻中及びその解消に際し、婚姻に関し平等の権利を有する。
2 婚姻は、両当事者の自由かつ完全な合意によってのみ成立する。
3 家庭は、社会の自然かつ基礎的な集団単位であって、社会及び国の保護を受ける権利を有する。


第十七条
1 すべて人は、単独で又は他の者と共同して財産を所有する権利を有する。
2 何人も、ほしいままに自己の財産を奪われることはない。


第十八条
 すべて人は、思想、良心及び宗教の自由に対する権利を有する。この権利は、宗教又は信念を変更する自由並びに単独で又は他の者と共同して、公的に又は私的に、布教、行事、礼拝及び儀式によって宗教又は信念を表明する自由を含む。


第十九条
 すべて人は、意見及び表現の自由に対する権利を有する。この権利は、干渉を受けることなく自己の意見をもつ自由並びにあらゆる手段により、また、国境を越えると否とにかかわりなく、情報及び思想を求め、受け、及び伝える自由を含む。


第二十条
1 すべての人は、平和的集会及び結社の自由に対する権利を有する。
2 何人も、結社に属することを強制されない。


第二十一条
1 すべて人は、直接に又は自由に選出された代表者を通じて、自国の政治に参与する権利を有する。
2 すべて人は、自国においてひとしく公務につく権利を有する。
3 人民の意思は、統治の権力の基礎とならなければならない。この意思は、定期のかつ真正な選挙によって表明されなければならない。この選挙は、平等の普通選挙によるものでなければならず、また、秘密投票又はこれと同等の自由が保障される投票手続によって行われなければならない。


第二十二条
 すべて人は、社会の一員として、社会保障を受ける権利を有し、かつ、国家的努力及び国際的協力により、また、各国の組織及び資源に応じて、自己の尊厳と自己の人格の自由な発展とに欠くことのできない経済的、社会的及び文化的権利を実現する権利を有する。


第二十三条
1 すべて人は、勤労し、職業を自由に選択し、公正かつ有利な勤労条件を確保し、及び失業に対する保護を受ける権利を有する。
2 すべて人は、いかなる差別をも受けることなく、同等の勤労に対し、同等の報酬を受ける権利を有する。
3 勤労する者は、すべて、自己及び家族に対して人間の尊厳にふさわしい生活を保障する公正かつ有利な報酬を受け、かつ、必要な場合には、他の社会的保護手段によって補充を受けることができる。
4 すべて人は、自己の利益を保護するために労働組合を組織し、及びこれに参加する権利を有する。


第二十四条
 すべて人は、労働時間の合理的な制限及び定期的な有給休暇を含む休息及び余暇をもつ権利を有する。


第二十五条
1 すべて人は、衣食住、医療及び必要な社会的施設等により、自己及び家族の健康及び福祉に十分な生活水準を保持する権利並びに失業、疾病、心身障害、配偶者の死亡、老齢その他不可抗力による生活不能の場合は、保障を受ける権利を有する。
2 母と子とは、特別の保護及び援助を受ける権利を有する。すべての児童は、嫡出であると否とを問わず、同じ社会的保護を受ける。


第二十六条
1 すべて人は、教育を受ける権利を有する。教育は、少なくとも初等の及び基礎的の段階においては、無償でなければならない。初等教育は、義務的でなければならない。技術教育及び職業教育は、一般に利用できるものでなければならず、また、高等教育は、能力に応じ、すべての者にひとしく開放されていなければならない。
2 教育は、人格の完全な発展並びに人権及び基本的自由の尊重の強化を目的としなければならない。教育は、すべての国又は人種的若しくは宗教的集団の相互間の理解、寛容及び友好関係を増進し、かつ、平和の維持のため、国際連合の活動を促進するものでなければならない。
3 親は、子に与える教育の種類を選択する優先的権利を有する。


第二十七条
1 すべて人は、自由に社会の文化生活に参加し、芸術を鑑賞し、及び科学の進歩とその恩恵とにあずかる権利を有する。
2 すべて人は、その創作した科学的、文学的又は美術的作品から生ずる精神的及び物質的利益を保護される権利を有する。


第二十八条
 すべて人は、この宣言に掲げる権利及び自由が完全に実現される社会的及び国際的秩序に対する権利を有する。


第二十九条
1 すべて人は、その人格の自由かつ完全な発展がその中にあってのみ可能である社会に対して義務を負う。
2 すべて人は、自己の権利及び自由を行使するに当っては、他人の権利及び自由の正当な承認及び尊重を保障すること並びに民主的社会における道徳、公の秩序及び一般の福祉の正当な要求を満たすことをもっぱら目的として法律によって定められた制限にのみ服する。
3 これらの権利及び自由は、いかなる場合にも、国際連合の目的及び原則に反して行使してはならない。


第三十条
 この宣言のいかなる規定も、いずれかの国、集団又は個人に対して、この宣言に掲げる権利及び自由の破壊を目的とする活動に従事し、又はそのような目的を有する行為を行う権利を認めるものと解釈してはならない。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/udhr/1b_002.html

  • 第十四条 (権利)迫害からの他国への避難
  • 第十五条 (権利)国籍をもつ
         (禁止)国籍を奪う、国籍の変更を認めない
  • 第十六条 (権利)結婚、離婚、国による家庭の保護
  • 第十七条 (権利)財産の所有
         (禁止)財産を奪う
  • 第十八条 (権利)思想、良心、宗教、その変更
  • 第十九条 (権利)意見、表現
  • 第二十条 (権利)平和的集会、結社(=団体をつくる)
         (禁止)結社(=団体)へ属することを強制
  • 第二十一条 (権利)自国の政治への参与、公務につく
  • 第二十二条 (権利)社会保障を受ける
  • 第二十三条 (権利)労働に関する条件、保障、労働組合をつくる、参加する
  • 第二十四条 (権利)労働時間の制限、休息、余暇
  • 第二十五条 (権利)生活水準の保障、母と子への援助
  • 第二十六条 (権利)教育を受ける
  • 第二十七条 (権利)文化生活への参加、創作物の保護
  • 第二十八条 (権利)社会的、国際的秩序

最後の2つ、第二十九条、第三十条は、これまで挙げてきた権利に関する義務と、但し書きとなっています。

第二十九条では、自分の権利だけでなく、他人の権利や、公の秩序、法律も守らなければならないことが書かれており、第三十条では、宣言の権利や自由の破壊を目的とする活動、行為は権利として認めていないことが書かれています。

「世界人権宣言」で書かれていることを、ものすごく平たく言うと、下記のような感じではないでしょうか?

世界の誰もが、人の迷惑にならなければ、自由にいろいろできます。人は、法律や制度によって守られています。


この世界人権宣言に、法的な拘束力はありません。そのため、世界人権宣言を細かく規定し、拘束力を持たせた「国際人権規約」が作られています。次回は、それについて触れます。また、「法の下の平等」についても、次回、もしくはその次の回に触れます。