人権って何だっけ?(4)法の下の平等

「法の下の平等」は、世界人権宣言では、第七条に「すべての人は、法の下において平等であり、また、いかなる差別もなしに法の平等な保護を受ける権利を有する」とあります。

また、国際人権規約では、自由権規約の第十四条に「すべての者は、裁判所の前に平等とする」、第二十六条では「法律の前に平等」ということが書かれています。これら以外にも、婚姻や、選挙権、その他における平等が書かれています。

日本国憲法では、第十四条に「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と書いてあります。

日本国憲法の「法の下の平等」は、じつはけっこう画期的です。憲法制定後の民法、その他の改正内容で、後述しますが、とくにそれまで認められていなかった女性の権利が認められています。

日本の「法の下の平等」に関しては、衆議院の憲法調査会の資料、衆憲資第38号「『法の下の平等 (平等原則に関する重要問題~1票の格差の問題、非嫡出子相続分等 企業と人権に関する議論を含む)』に関する基礎的資料」(平成16年2月、PDF)が参考になります。

「平等」の解釈で問題になる2つ

まず、「法の下の平等」でよく問題になること2つ。

一つ目は、この「法の下の平等」という言葉は、「法適用の平等」だけを意味するのか、「法内容の平等」まで意味するのかです。

前者は、法律をすべての人に平等に適用すること、後者は、法律の中身もすべての人に平等であることですが、現在は、後者と解釈されています。差別的な法律だと、平等に適用しても意味がないからです。

二つ目は、「平等」は、絶対的・機械的平等なのか、相対的平等なのかです。

前者は、すべての人に一律に同じ内容とし、後者は、事情や条件を配慮した内容とするというもので、後者となっています。たとえば、労働条件における女子の産前産後休暇や、未成年者の喫煙禁止などが当てはまります。

差異を設ける場合、社会通念からみて合理的かどうかで判断されます。

旧民法で、既婚女性は「無能力者」とされていた

先ほどの憲法調査会の資料には、日本国憲法の第十四条に挙げられている、人種、信条、性別、社会的身分に関する「法的平等の具体的内容」が書いてあります。

それを見ると、とくに「性別」に関しては、日本国憲法制定後に、男女平等に関するさまざまな措置がなされていることが分かります。

それまで、明治に新たに作られた民法などの法律では、現代の視点からすると、女性に人権を認めていない内容になっていました。

たとえば、旧民法14-18条では、女性は結婚すると「無能力者」として、準禁治産者(心身耗弱者、聾者、唖者、浪費者)と同じ扱いになり、財産は夫の管理下に置かれ、重要な行動は夫の許可を得る必要があるとされました。

なお、禁治産者制度も廃止され、成年後見制度に変わっています。

ちなみに、現在、芸能人などが結婚の意味でよく使っている「入籍」は、もともと旧民法で、結婚すると、女性は男性の家(戸籍)に入る(入れてもらう)ことからの言葉です。現在「入籍」(籍を入れることが)できるのは、誕生時のみです。

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さて、この「法の下の平等」は、基本的には、国(公権力)と国民の関係として捉えられてきました。すなわち、国民の権利を守らなければならないのは国の役割で、国以外の存在は念頭にありませんでした。

しかしながら、企業や団体で、大きな力をもつ存在もあり、そういった「社会的権力」をもつ存在と個人の関係においても、「人権」を考える必要が出てきました。

たとえば、マスコミによるプライバシー侵害、企業・団体による公害、労働者に対する人権侵害などです。 ということで、次回は、企業と人権について書きます。