カーティス教授の「オバマとアメリカ」セミナー

ジェラルド・カーティス教授のセミナーに行きました。
セミナーで、カーティス教授は、難しいことをやさしく喋るのが政治家にとって大切だと仰っていますが、カーティス教授のお話も大変わかりやすく、興味深いものでした。
セミナー後に少しお話をさせていただきましたが、日本人はもともと悲観的なのに、この経済危機で必要以上に悲観的になっている。技術や仕事に対する姿勢など素晴らしいのに、もうダメだと思っている。経済状況はますます悪化し、ずっと回復しないと思っているが、そんなことはない、と仰っていました。
逆に、アメリカ人は楽観的で、オバマさんに期待をかけているので、すぐに経済が回復しないと、絶望感も大きく、それが心配だと仰っていました。

カーティス教授のセミナーは、5月と7月にもあるので、その頃の政治経済の変化と合わせて楽しみです。また、3月22日放映の時事放談のゲストは、カーティス教授と与謝野馨大臣です。

セミナーデータ

タイトル:オバマ大統領と今後のアメリカ
講師:ジェラルド・カーティス氏(コロンビア大学教授)
日時:2009年03月19日 (木) 19:15~20:45
場所:アカデミーヒルズ

ジェラルド・カーティス氏 プロフィール

40年を超える研究活動を通じて、広い国際政治の視野を背景に日本の政治システムや政策決定プロセスなどに精通した政治学者。日本の政治家の友人、知人を有する傑出した知日派として知られている。

講演メモ

日本とアメリカの経済状況は同じように悪いが、アメリカ人は希望をもっている。アメリカ人はリーダーがそういうふうにもっていくし、もともと楽観的。日本人は良いときも悲観的。

オバマ氏は、偉大な大統領、偉大なリーダーになる素質をもっている。
どういう国にしたい、というしっかりした自分の考えや戦略をもっていて、ぶれない。プライオリティもはっきりしている。現在の対策だけでなく、21世紀のアメリカ、30年、50年先のビジョンを持ち、すでにやろうとしている。

政治家の重要なキーワードは、国民への「説得力」、コミュニケーション。彼は、時間をかけて一生懸命説明する。麻生さん、小沢さんは、国民を説得しようとしているのか?

簡単なことを難しく喋る学者が多いが、難しいことをやさしく喋るのが政治家。オバマさんは、このことを意識している。
彼は、リンカーンとルーズベルトを意識しているが、ルーズベルトは、1930年代の不況のとき、ラジオで国民に話をするのに自分で原稿を書いたが、意識的に、知っている大工さん、八百屋さん、家庭の主婦の顔を思い浮かべて原稿を書いた。オバマさんは、ルーズベルトと同じように、誰が聞いてもわかるように話をする。

オバマさんが、ブラックベリー(携帯端末)でメールを使ったり、インターネットを活用していることが取り上げられるが、21世紀のやり方であり、インターネットはひとつのコミュニケーションの道具にすぎない。重要なのは、何を、どう言うか。

日本で、政治家が国民とのコミュニケーションをすること、言いたいことをわかりやすく言うことは、これまで重要ではなかった。
これは、日本の教育の問題でもある。
日本からコロンビア大学に来る学生は、最初、ゼミで困る。自分の意見を求められるからだ。教授が、自分と違う意見を聞きたいと思っても、日本の高等教育では、学生が自分で考えて、先生と違う意見を言うという、そんな訓練は受けていない。

          ◆ ◆ ◆

オバマさんは、感情的にならず、冷静に分かりやすく国民に説明する。できるだけみんなのコンセンサスをつくろうとするアジア的なところがある。芯は強いが、穏やかだ。

また、リンカーンはライバル、敵を自分の内閣に入れたが、オバマさんも同じ。自信がないとできない。そして、本当に自信がある人は威張らない。威張る必要がない。

オバマさんのカリスマ性はケネディに似ているが、上回るものをもっている。
彼は、大統領就任後、3週間で、7800億ドルの景気刺激策を通した。ヒラリーに勝つ前から、すでに基本的なことを決め、大統領になったらすぐ動けるようにしていた。

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最近、オバマさんへの批判もあがっている。AIGのボーナスの問題がオバマ大統領への怒りになりかねない。上手に対応する必要がある。

オバマ政権で心配なのは、「議会との関係」「経済の見通し」「アフガニスタン」だ。

  • 議会との関係

アメリカは、議会と大統領は対等な立場で、同じ民主党とも交渉し、説得する必要がある。アメリカの政治家にとっては、たえずねじれ国会のようなものだ。議会との関係がうまくいくかどうかが決定的な条件となる。

  • 経済の見通し

アメリカの経済がいつよくなるのかが見えない。1年ぐらいはアメリカの国民は我慢するが、来年の今頃、よくなっていないと、非難が集まる。

この金融危機が、アメリカ人のものの考え方を変えた。
これまでアメリカ人の過剰消費が、世界経済を支えていた。アメリカ人の貯蓄率は10%から0%になり、マイナスになったが、だんだん元に戻っていっている。クレジットカードでの無責任な消費を改めるのはよいことだが、消費が普通になると、そんなに早く経済がよくなるとは思えない(※)。

※講演が終わった後、川嵜が、いつ頃アメリカ経済がよくなると、カーティス教授がお考えなのか伺ったところ、5~6年はかかるだろうとのことでした。

  • アフガニスタン

オバマ政権では、意見が割れていて、結論が出ていない。

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オバマ政権と日本の関係に関してもお話をしたい。
ヒラリー・クリントンの訪日の意味。
まだオバマ政権の政策が決まっていないときに、アジアに行くことを、反対する意見もあった。政策に関して聞かれてもきちんと答えられないからだ。しかし、成功したと思う。

日本を一番最初に訪れたが、日本では、「ファースト」であることが重要。政策の中身に関して話し合うのなら、その中身が重要であって、何番目に来ようが関係ない。しかし、日本側にも中身はないので、一番最初に来たということでほっとした。

これに対して、中国は中身を求めている。アメリカは中国と総合的な関係を求めており、今回のアジア訪問で、じつは中国への訪問が重要だった。

日本はアメリカから「何を求められるか」と思っているが、別に何かを求めているわけではない。
アメリカは、日本に対して、日本が何か提案するのなら、密接な関係を持ちたいと思っているが、アメリカから積極的に働きかけることはしたくない、そんなエネルギーと時間はかけたくないと思っている。
日本は自分のビジョンをもって、アメリカに求めるべきだ。

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アメリカは、政権が変わっても、国益は変わらないので、外交は継続するが、ブッシュ政権の評判が悪く、さまざまな国との関係が悪くなっているので、オバマさんは新しいことを始めようとしている。

ロシアとの関係の改善や、北朝鮮とも積極的に交渉するだろう。
また、拉致問題の進展もあり得るように思う。

オバマさんは、勇気を持って、つらいことも、苦いことも国民に正直に喋る。
感情的にならず、戦略的にリーダーシップを発揮することが、政治家には必要だ。

日本の政治家の問題は、それをよしとしている有権者の問題でもある。