週刊ダイヤモンド「あなたの知らない貧困」

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「週刊ダイヤモンド」3月21日号(3月14日発行)は、写真のようにインパクトのある表紙で、「あなたの知らない貧困」という特集を組んでいます。


貧困の定義は?
同誌には「日本政府は『貧困』を公式に認めていないため、その基準はじつはあいまいである。一般に用いられているOECD(経済協力開発機構)の基準によれば、日本の場合、一人当たり年収一五〇万円前後が貧困ラインとなる。そして、この数値は生活保護の最低生活費ともほぼ一致している。」とあります。
そして、OECD加盟国の相対的貧困度ランキングで、日本はワースト4位と書かれています。

この特集では、日本はこれまで徐々に貧困層が増えていっていたのが、今回の経済危機で、急速に拡大している様子がよく分かります。

特集によると、生活保護を受けている世帯数、人数は、この15年で2倍になっており、その原因のひとつとして、年金だけでは暮らしていけない高齢者の増加があげられています。そして、生活保護を受けている世帯の44.1%が高齢者世帯というグラフが載っています。
さらに、もうひとつの原因として、20代、30代の若年層の生活困窮者があげられています。

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こういう現実、つまり、老後、年金だけでは暮らしていけない現実、若くてもまともに稼げない現実があり、世の中から「希望」が失われ、「不安」が広がっているのが、いまの日本だと思います。そして、いつ何が起こるかわからない不安、そして、老後の不安から、人々はよりお金を使わなくなっているのではないでしょうか?
最近の新卒や若い社員で、毎月貯金をしている人は増えていますし、ewomanの円卓会議でも「もし株などで3億円儲かっても、それ(3億円)だけでは不安」という人もけっこういました。

さまざまな「不安」からお金を使わないことが「消費の低迷」につながり、次のような「負のスパイラル」を加速させています。
消費の低迷→ 企業の収益悪化→ 雇用環境の悪化→ 消費の低迷→ …

定額給付金も、目的は消費の刺激にありますが、しかしながら、マスコミでは結果的にさらに「消費の低迷」につながることを勧めていたりします。
「アエラ」1月26日号には「お金持ちの合理的清貧」という記事があり、億単位の資産をもつ人が、節約し、質素な暮らしをしていることを紹介し、「実はお金持ちのほうが、お金とシビアに付き合っている」「お金持ちの金銭感覚を学ぶことで、少しでも資産を増やすことができるという」と評価しています。

本来お金を使うべき人たちがお金を使わないと、お金が循環しない、生きない。たとえていうと、1万人分の食糧をもっている人が、人に分け与えるでもなく、ただ保管しているようなものでしょう。

さらに、このダイヤモンドの貧困の特集にも「今この記事を読んでいるあなたも貧困スパイラルに滑り落ちないとも限らない。」と、書かれています。ダイヤモンドの読者で、とくにこの号を読んでいる人で、日本の現在の状況を他人事だと考えている人は少ないと思います。そういったなか、この記事のトーンが読者をさらに不安にし、結果的に消費の低迷を加速させなければいいのですが。

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負のスパイラルから抜け出すための方法のひとつに、消費の改善につながる商品・サービス、産業の登場があります。昨今のITや携帯電話(モバイルインターネット)がそれですが、もっと多くの企業の収益につながる必要があります。多くの企業の収益が上がり、雇用が改善されれば、消費の改善につながります。

さらに重要なことは、人々の意識が「不安」から「希望」へと変わることです。
どんなにお金を使える状況になっても、不安が払拭されないかぎり、消費は改善されません。

「いまの社会では、自営業の環境ができていない。自分で自分の面倒を見る、そういう制度がない。」「いまは、働くなら営利の企業で働くしかない。」というのは、ムハマド・ユヌス氏のセミナーでの発言ですが、このことも、現在の不安、「雇用が失われたら生きる術が失われてしまう」ということにつながっていると思います。

「従来的な考え方だと、仕事があってハッピー、なくてアンハッピー。勤めている職場の外は地獄に見える。しかし、自営業は、好きなことができる。仕事として、24時間好きなことができるので、苦にならない。」(ムハマド・ユヌス氏)というのは、教育と大きく関わっています。教育で何を目指すのか、どういう人間を作ろうとするのか。どういう指導がなされるのか。
「教育は国家百年の計」といわれますが、これは非常に重要だと思います。