食料品のみ消費税0%がまずい理由 ―― 中小の外食企業に打撃

弱者にやさしい、よい政策では?
いま、食料品のみ消費税0%にするという政策が上がっています。
「食料品は生活必需品だから、0%にするのは生活者、弱者にやさしい、よい政策」という声も聞かれます。
けれども、結論から言うと、中小の外食企業、とくに個人経営の飲食店は、大きな打撃を受けることが考えられます(大手は打撃を受けるケースとそれほど受けないケースが考えられます)。
また、「消費税0%が、非課税扱いなのか、免税扱いなのかで違う。後者の場合は問題ない」という声もありますが、中小・個人経営の飲食店にとっては、非課税でも免税でも同じ打撃を受ける可能性大です。
その「まずい理由」を説明します。
「消費税を0%にすると、仕訳が大変になるから」ではありません。
すでに0%の仕訳は普通に行なわれています。たとえば、PayPalなどの海外が本拠地の決済サービスの手数料などは、消費税0%です。
問題は仕訳の手間ではありません。
「食料品のみ消費税を0%にする」ことで、外食産業の税負担構造が大きく変わり、経営が厳しくなることが問題なのです。
外食産業で何が起きるのか
消費税は、本則課税(一般課税)の場合、「売上分の消費税 - 仕入れ分の消費税」、簡易課税の場合「売上分の消費税 -(売上分の消費税×みなし仕入れ率:業種によって違う。40~90%)」です。前々年の売上高が5000万円以下であれば、簡易課税も使えます。
飲食店は、これまで、食料品の仕入れ分の消費税を、申告の際に差し引くことができました。けれども、食料品の消費税が0%となると、差し引けなくなります。
もちろん、食料品の仕入れ金額が、消費税分安くなるのならよいのですが、安くはならない可能性が高いです。なぜなら、食料品を提供している側の費用(原材料費、物流費、人件費)が、食料品の消費税が0%になっても、8%から0%に下がるわけではないためです。
モデルケースで考えてみる
下記のような「年商1100万円の個人経営の飲食店」のケースで考えてみましょう。
個人経営の場合、「免税事業者でいいじゃないか」ということも言われますが、外食(飲食店)の場合、少し売上が伸びると、1000万円を超えて免税事業者でなくなってしまうことが少なくありません(前々年の課税売上が1000万円を超えると免税事業者にはなれません。飲食店の通常の売上高は課税売上です。非課税になるのは、住宅を貸す家賃収入などです)。
ちなみに、このモデルケースの費用や利益の割合(食材費30%など)は、個人経営としては、現実的かつ悪くないものです。個人経営の場合、オーナーが店に入って働くことで人件費を抑えられるので、人件費の比率が低くなっています。逆にいうと、人件費を抑えないと、この事業だけで暮らしていける利益が出ません。
- 売上1100万円(月91.7万円 1日3.7万円×1カ月25日営業)
売上にかかる消費税10% 1100万円×10/110=100万円
[費用]
- 食材費30% 330万円(月27.5万円)
消費税8% 330万円×8/108=24万4444円 - 人件費10%(アルバイト)110万円(月9.17万円 時給1000円で1日3~4時間分)
不課税 - 家賃・光熱費他20% 220万円(月18.3万円)
消費税10% 220万円×10/110=20万円 - 利益(オーナーの取り分。会社員で言えば、給与=総支給額にあたり、本人と家族が暮らしていくためのお金)40% 440万円
この場合の消費税は、
本則課税で、100万円-(24万4444円+20万円)=55万5556円
簡易課税は、飲食店(第4種事業)は、みなし仕入れ率60%なので、100万円×(1-0.6)=40万円となります。
このケースは、簡易課税のほうが、支払い分が少ないですが、個人経営の場合、オーナーが店に入り、家賃・光熱費等も抑えていることが多いため、この結果になっています。
飲食店は、食材費30%以下、人件費30%以下、家賃・光熱費等30%以下、利益10%以上が健全経営の目安です。
個人経営の場合、利益率は高くても、オーナーの取り分から、国民健康保険、国民年金、所得税、住民税など、約110万円が引かれ、さらに、消費税40万円(簡易課税)が引かれると、手元に残る金額(手取り)が290万円になり、現状でも消費税の負担が大きいです。
それが、食材費の消費税が0%となるのに、食材費の金額が変わらない場合、本則課税で、100万円-20万円=80万円と、支払う消費税が増え、さらに手元に残る金額が減ります。
簡易課税も、今はみなし仕入れ率60%ですが、食料品の消費税が0%になれば、40%もしくは30%に引き下げられる恐れがあります。
ということで、食料品の消費税が0%になると、中小の外食企業は、打撃を受けます。
非課税と免税(ゼロ税率)の場合の違い
ここで、「消費税0%」について、もう一つ整理しておきます。
0%には、大きく分けて 非課税 と 免税(課税0%・ゼロ税率) があります。
食料品の消費税が0%という場合、食材を加工するための加工委託費などにかかる消費税の扱いが、非課税と免税では変わるのです。
非課税の場合は、税額控除できませんが、免税の場合は、税額控除できます。
大手外食の場合、仕入れた食材をそのまま使うのではなく、加工を委託する、工場・セントラルキッチンを使う、冷凍・冷蔵をする、運ぶ(物流費)、そのシステム・管理費がかかっていることが多いですが、これらの費用の消費税を、非課税の場合は仕入税額控除できませんが、免税の場合は仕入税額控除できます。
こういう理由で、免税なら「それほど影響を受けない」こともありますが、免税でも、フランチャイズなど、各店舗で調理する場合は、有利にはなりません。
免税は、外食産業全体を救う制度ではなく、外食産業の中で「構造差」を拡大する制度ともいえます。
食料品の消費税を0%にすることは、よい政策に見えます。
けれども、地域で食を支えている中小の外食企業に、確実に負担が集中することになり、丁寧に検討する必要があります。
こうした理由から、私は、消費税の部分的な調整ではなく、制度そのものの見直しが必要だと考えています。
ちなみに、私は、輸出企業にしかメリットがない消費税は一律下げるか廃止し、現場の負担が大きすぎるインボイス制度は廃止してほしいと思っています。

