なぜ争いをやめられないのか?「国家戦略のリアリズム」

Book Data
書名:国家戦略のリアリズム~国際政治の「妄想」をとく
著者:ジョン・J・ミアシャイマー、セバスチャン・ロザート
出版社:経営科学出版
発行:2025年7月
YouTubeで1分で説明しています。
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なぜ争いをやめられないのか? 400ページの本「国家戦略のリアリズム」を1分で説明
400ページ以上ある本ですが、この本の結論はとてもシンプルです。
国家は「存続」のために、合理的に行動する。
これが本書の基本的な考え方です。
ウクライナ侵攻も真珠湾攻撃も合理的
筆者の一人、ミアシャイマー氏は、シカゴ大学の教授で、国際政治学の重鎮です。昨年末には日本にも来られています。
ロシアによるウクライナ戦争を予測する一方で、イラク戦争に反対したり、物議をかもす説を提示することでも知られ、その見解をめぐっては賛否が分かれています。
もう一人の著者、ロザート氏は、ノートルダム大学の教授です。
ミアシャイマー氏は、大国は最終的に覇権を目指す(=一番強い国になろうとする)という「攻撃的現実主義」の立場をとっています。
一方、ロザート氏は、国家はまず自国の安全を守ろうとする、つまり「攻められないようにする」という立場に立っています。
本書では、国家は基本的に「合理的に動いている」ということが、さまざまな歴史的事例を通して説明されています。
たとえば、西側諸国では、ロシアのウクライナ侵攻は非合理的な行動だと見られがちです。しかし、本書では、ロシアにとっては、NATOの東方拡大という国家の危機に対する自衛の行動として、合理的だったと説明されています。
また、日本の真珠湾攻撃についても、日本には当時、4つの選択肢があり、1つ目のアメリカとの交渉はアメリカに拒否され、2つ目のアメリカの要求をすべて受け入れることは出来ない、残り2つの武力行使が選ばれたと分析されています。
道徳性と合理性は異なる
国際政治という不確かな世界で、ほとんどの国家は「存続を図る(=自国がなくならないようにする)」という目的のために、その時々でもっとも合理的だと思われる選択をしているというわけです。
もちろん、「合理的なら、国際協力を進めるべきだ」「戦争をしても意味がない」という意見もあります。
しかし、著者は、それは「道徳性」の問題であって、「合理性」ではないと述べています。
国家の存続のためには、他国を脅したり、武力を使ったりすることも合理的な行動になり得る、というのです。
この「国家は合理的に行動する」という考え方はもっともだと思います。
日本人にとっては、日本の国がなくなることはイメージしづらいですが、歴史上、繁栄していた国が実際にいくつもなくなってしまっています。
ただし、その合理性は、それぞれの国の歴史や価値観から生まれる「こうあるべき」という考え方にも影響されています。
国ごとに違う価値観を前提に”合理的に”行動すれば、結局は「力の強い国が勝つ」という世界になってしまいます。
だからこそ人類は、単なる「力による支配」ではなく、一定のルールと合意にもとづく「法による支配」へと、少しずつ進んできたのではないかとも感じました。

