不安と希望のメカニズム(下)どうすれば「希望」を育てられるか

子どもに対しては周囲の大人の姿勢が大切

前回、日本で「将来に希望を感じていない人」の割合は、2023年の調査で7~8割であり、金銭的な不安を抱えている人が多いこと、「失われた30年」で国際競争力が低下したことなどを挙げました。
そして、「失われた時代」に、私は希望が溢れるベンチャー企業にいたけれども、世の中的にはむしろ“学習性無力感”という、何をしても無駄だと感じる心理状態に包まれていたのでは?ということも書きました。

では、どうすれば「希望」を育てられるのか?

子どもに対しては「教育の力」が大きいと思います。
学習性無力感は、努力しても報われない積み重ねから生まれ、希望は、うまくいきそうな手ごたえから生まれます。そこで、まずはできていることを改めて認識したうえで、さらに小さなチャレンジと成功体験を積み重ねていくといいと思います。
逆に、周囲の大人が「頑張るのは頑張り損」だと思い、繰り返し子どもに「失敗だ」「お前はできない」「やっても無駄だ」と言い聞かせると、子どもはその影響を受けるようになります。

そもそも人には「できること」と「できないこと」があり、それぞれの人の「得意」「不得意」、「好き」「嫌い」もあるので、どこにスポットを当て、何をどのくらい伸ばすのか、あるいは克服するのか、本人が納得のいく選択をできるようにすることが大事ではないかと思います。

大人には3つの行動を

すでに大人で、不安を感じている人たちに対しては、3つの行動をおすすめします。

1つ目は、語ること。
「これができたらいいな」「こうなったらいいね」という自分の未来に対する願望を言葉にすること。
最初は、言ってもできるかどうか分からないことを言うのは、言うだけムダ、どうせできないことを言うのは、かえって悲しいと思うかもしれませんが、これは、知らず知らずのうちに、無力感にさいなまれているのかもしれません。

昔から、この「無力感」を相手に感じさせることは、軍事、外交、政治、ビジネスでは、有効な戦略のひとつとされています。
戦う前から、敵に「戦ってもメリットがない」「戦うのはムダなので言うことを聞こう」と諦めさせる、戦っている途中で、戦意を失わせる、相手には逆らえないと思わせておいたほうが、有利に物事が進むのです。
ですので、自らみすみす「無力感のわな」にはまるのはやめましょう。

語っているうちに、可能性も見えてきます。

私は「火星にピザ屋を出す会」という野望を語る会を主催しているのですが、これは、いっけん荒唐無稽なことでも、まずは語ることで、可能性が出てくるという会です。十数年前に、私が大学の非常勤講師をした際、大学生に「覇気」のようなものが足りないと思って始めたものです。

2つ目は、動くこと。
考えているだけでは、物事は進みません。
小さくても、何らかの行動をすれば、現実が少しずつ変わっていき、希望につながっていきます。

3つ目は、つながること。
一人で決めて、動くのもいいのですが、誰か、できれば前向きな人に、「自分はこうしたい」とか、「こうしている」と言えば、「こんなのあるよ」と情報を教えてくれたり、「こうするのはどう」とアイデアを出してくれたり、助けてくれたりもします。
また、仲間になる人が生まれ、一緒に進めることができるかもしれません。

以上、「不安」は守りたい心のメカニズム、「希望」はそれを実現したい心のメカニズムと言えるかもしれません。
いずれも、未来を見つめている証拠なので、そこから一歩、進んでみるといいと思います。