ビジネスを創る力
この前、大学生と接していてふと思った。「ビジネスを創る力」はかなり重要かもしれないが、多くの人にとって、それを身につける機会はほとんどないのではないかと。
「ビジネスを創る」ことは、学校では通常教えていない。MBA(経営学修士)か、家が事業をやっていて「新規事業を考えろ」とでも言われないかぎり「ビジネスを創る」ことなど考えもしないだろう。
多くの人にとって、お金を得るためには、会社員、団体職員として就職することが「常識」となっている。学校でも家庭でも、生徒、子どもたちには「よいところ」に就職して欲しいと思っている。「よいところ」とは、有名な大企業、安定した団体で、賃金、待遇、イメージがよいところだ。
そのためか、ビジネスを創る力を養成しようという先生や親はほとんどいない気がする。
先生や親自身が、起業家ではなく、会社員、団体職員なので、ピンと来ないのかもしれない。
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お金を得るための、会社、団体で働く以外の選択肢としては、家業を継ぐ、手に職をつけて独立するなどがある。
これらは、「ビジネスを創る」ことと似ているが、イコールではない。
「ビジネスを創る」は「0から1」だが、家業は0ではない。既にある事業をどう維持するか、伸ばすかだ。
そして、「手に職で独立」の場合、「仕事を得る力」があれば、「ビジネスを創る力」はなくてもよい。
「手に職で独立」は、たとえば、フリーのグラフィックデザイナー、講師、士業などの資格を取得してやっていく方法だ。誰かが自分に仕事を依頼してくれればよい。
「ビジネスを創る」のは、グラフィックデザイナーを募って「デザイン事業」を、講師を募って「教育事業」を行なうといったたぐいのものだ。自分がグラフィックデザイナーや講師である必要はない。事業の内容と回す仕組みを考え、創っていくものだ。
ビジネス(事業)を創る力は、グラフィックデザイナーや講師としての専門的な力とは別の力だ。何もないところに、人やいろいろな材料を投入して利益を生み出す力だ。
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ビジネスを創ることは、それなりのリスクはあるが、うまくいけば相応のリターンがあり、やりがいもある。
「ビジネスを創る力」は、例えると、荒波の中を泳ぐ力のようなものだ。生き抜く力とも言える。仕事がない、産業がない地域でも、それらを創ることができる。
これまでの時代なら、ビジネスを創るなど「わざわざ苦労しなくても」と思われたかもしれない。けれども、今の時代なら、たとえ、社員や団体職員であっても、そういうセンスがあったほうが、たいへんな状況下でも自分や組織を生き残らせることができるだろう。
もっと言うと、「ビジネスを創る力」は「わざわざ苦労して」身につける力ではない気がする。むしろ、こういったセンスをもっている人が「出る杭」にならないよう、その力を発揮させないよう、ある意味、封印されてきた気がする。
こういう「生き抜く力」を身につけた人は、組織において「籠の中の鳥」にならず、管理しにくいからだ。
しかし、「ビジネスを創る力」は、周りにビジネスを創り成功している人がいないと、なかなかピンと来ないかもしれない。
そして、そんな人は周りにいないと思われている。が、紛れているかもしれない。ビジネスを創り成功している人が皆、外車に乗り、ブランド品で身を固めているわけではない。むしろ、傍目には「労働」をしていないように見えるので、「仕事あるの? 大丈夫?」「どうやって食べていっているの?」と心配されている人もいる。
「ビジネスを創る力」は、職歴、学歴、性別、年齢、住んでいる場所など、さまざまな属性を超えて、お金を生み出せる力だ。これまでのパラダイム(認識)が大きく変わる故に、養成しようという先生や親は今のところはほとんどいないかもしれない。