人権って何だっけ? 人類・人間って誰?

今回も「人権」について書いています。何回か書きます。

人権は、何らかの「人権侵害」に関するニュースなどに触れないかぎり、普段は意識しないことが多いと思います。

子どもに「人権って何?」と聞かれたら、「どう説明しよう?」と思いますし、抽象的な概念のようでもあり、ネットを検索しても、分かるような、分からないような?

一方で、2011年に「ビジネスと人権に関する指導原則」というのが国連で支持され、2020年に日本が「『ビジネスと人権』に関する行動計画」を策定したりもしています。後者には、働きがいのある人間らしい仕事(ディーセント・ワーク)の促進やハラスメント対策の強化、AIに関することなど、働く人にとって比較的身近なことも入っています。

そこで、改めて、現代の人権の流れについて書いていきたいと思います。

世界人権宣言よりも先に、日本国憲法に「人権」

現代の人権の考え方は、第二次世界大戦後の国連の「世界人権宣言」がベースになっていますが、日本の場合、「日本国憲法」が「世界人権宣言」よりも先に作られ、この第三章が「国民の権利及び義務」で、「基本的人権」や関連する自由などについて書かれています。

「日本国憲法」は、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の草案がもとになっていますが、日本の民間グループ、憲法研究会の草案がGHQの草案作成に大きな影響を与えたとも言われています。

「日本国憲法」は1946年11月公布で、「世界人権宣言」(1948年12月に国連総会で採択)の影響は受けていませんが、「個人の尊重」「法の下の平等(第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない)」など、考え方は共通しています。

「人類すべて」が対象の世界人権宣言

そして、「世界人権宣言」(Universal Declaration of Human Rights)ですが、前文の外務省の仮訳文がこちらです。

前文(クリックして表示)


前文

 人類社会のすべての構成員の固有の尊厳と平等で譲ることのできない権利とを承認することは、世界における自由、正義及び平和の基礎であるので、
 人権の無視及び軽侮が、人類の良心を踏みにじった野蛮行為をもたらし、言論及び信仰の自由が受けられ、恐怖及び欠乏のない世界の到来が、一般の人々の最高の願望として宣言されたので、
 人間が専制と圧迫とに対する最後の手段として反逆に訴えることがないようにするためには、法の支配によって人権保護することが肝要であるので、
 諸国間の友好関係の発展を促進することが、肝要であるので、
 国際連合の諸国民は、国際連合憲章において、基本的人権、人間の尊厳及び価値並びに男女の同権についての信念を再確認し、かつ、一層大きな自由のうちで社会的進歩と生活水準の向上とを促進することを決意したので、
 加盟国は、国際連合と協力して、人権及び基本的自由の普遍的な尊重及び遵守の促進を達成することを誓約したので、
 これらの権利及び自由に対する共通の理解は、この誓約を完全にするためにもっとも重要であるので、
 よって、ここに、国際連合総会は、
 社会の各個人及び各機関が、この世界人権宣言を常に念頭に置きながら、加盟国自身の人民の間にも、また、加盟国の管轄下にある地域の人民の間にも、これらの権利と自由との尊重を指導及び教育によって促進すること並びにそれらの普遍的かつ効果的な承認と遵守とを国内的及び国際的な漸進的措置によって確保することに努力するように、すべての人民とすべての国とが達成すべき共通の基準として、この世界人権宣言を公布する。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/udhr/1b_001.html

前文は、読点(、)はあっても、句点(。)がなくて読みづらいですが、原文(英文)自体がそうなのです。

前文で重要なのは、最初の「人類社会のすべての構成員」の権利ということと、最後の「すべての人民とすべての国とが達成すべき共通の基準」というところだと思います。

各条文も「すべての人間は(All human beings)」「すべて人は(Everyone)」「何人も~ない(No one~)」というふうになっています。

この「人類すべて」を対象としているところが特徴ですが、人権思想の先駆者と言われている17世紀のイギリスの思想家、ジョン・ロックも「人民」「人間」と表現はしています。けれども、この場合の「人間」は、当時の考えに則って、理性と財産を持つ「男性」だけで、「女性」は男性に従属するものとして「人間」には入っていません。

日本に原爆を落としたアメリカのトルーマン大統領も、日本人は「獣」と表現し、人間、人類と見なしていませんでした。

「獣(beast)」との表現

1945年8月9日に、アメリカキリスト協会連邦評議会から、トルーマン大統領にあてられた「多くのキリスト教徒は、日本の都市に対する原爆の使用について深く動揺している」という趣旨の電報に対して、手紙を返信しているなかに、原爆の使用に関して「獣に対処しなければならないときは、獣として扱わなければなりません」と書かれています。

この手紙の写真が、シェイプルマニュスクリプト財団(アメリカの歴史保存団体)のサイトに挙げられています(英文)。

https://www.shapell.org/manuscript/truman-defends-use-of-atomic-bomb-against-japan/


この「人類すべて」が、性別や国籍ほか、何らかの条件付きで使われると意味をなさなくなってしまいますが、そうなりがちなのが、人権における課題でもあります。

次回は、「世界人権宣言」の条文を見ていきます。