「妻からのオファーがない」怒り

「妻からのオファーがないんですよね」

Aさんは、腹が立つこととして、そう言いました。コンサルティングでの話です(この話は、ご本人たちの許可をとり、書いています)。

Aさんのもともとの相談は、部下指導でしたが、妻にも腹が立つとのこと。

「オファー」は、物を販売するときの条件や、仕事の依頼の条件を指しますが、 妻からのオファーとは?

私「オファーってどういうことですか?」

Aさん「仕事の依頼です。妻は常に不機嫌で、『あなたは何もしない』と言います。そこで、『やってほしいことを言って』と言うんですが、まったくオファーがない」

私「ああ、家の仕事のことですね」

Aさん「そうかもしれないし、そうでないのかもしれない。『何もしない』と言われても、正直オファーがないから分からないんですよね。オファーを出さずに不機嫌になられても……」

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そこで、次に、Aさんの妻、Bさんの話を聞くことに。

Bさん「オファー? 何を言ってるんだか! 以前、私が家でやっていることを全部表にして渡していますから、やることが分からないわけがない。だいたいAは会社では管理職です(Bさんとは違う会社)。主体的に仕事を進めていかなければならない立場でしょう。なのに、家のことはまったく何もしない。私がどんなに忙しそうにしていても無視! オファーを出さずに機嫌が悪いとかよく言うよ!」

Aさんは、確かに表はもらったけれども、「それが何?」という感じでした。

2人の話をまとめると、

Aさん「具体的なオファー(仕事の依頼)がないので、何をすればよいのか分からない」

Bさん「家の仕事は全部表にして渡してある。主体的にやってほしい」

ということで、話がかみ合っていないのです。

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そして、これ、先に似たような話をAさんから部下指導に関して聞いていると気がつきました。それは、Aさんの部下が「指示待ちタイプ」ばかりで、主体的に動かないという話でした。

Aさんは、部下に「自部署の仕事は、全部説明しているから、指示しなくても、主体的に自分がやるべきことを判断して動いてほしい」と怒っていたのです。

つまり、Aさんが部下に求めることを、Aさんの妻、Bさんは、Aさんに求めているようなのです。

そのことをAさんに伝えると、「私は部下にオファーは出していますよ。全部説明していますから」とのこと。

私「Bさんも、Aさんに全部の仕事の表は渡していますよね」

Aさん「そんなものもらっても、私が具体的に何をすればよいのか分かりません」

私「部下の方も、具体的に何をすればよいのか分からないのでは?」

Aさん「観察して、頭を使って、主体的に動いてほしい」

私「Bさんも、Aさんにそう思っているのではないでしょうか?」

Aさん「いやいや、Bが私に仕事を頼むんだから、具体的なオファーが必要でしょう?」

私「その理屈なら、上司が部下に仕事を頼むのにも、具体的なオファーが必要では?」

Aさん「う~ん……」

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この話の結論は、BさんがAさんに、Aさんが部下に、して欲しい仕事を「具体的に伝えるようにする」ということになりました。

「いちいち言わなくても分かって動く」のは、それが出来ていない場合、いくら期待、要請しても、自分のイメージ通りに相手が動く可能性は低いです。伝わるように伝える必要があります。