とくに非常時にはリーダーの実力が問われる
今、世界中の同じ課題に対して、各国のトップがそれぞれの方法で解決を試み、さらに、国内でも各地の長が記者発表などで施策を語ることが増えたことにより、リーダーの資質についてさまざまに語られています。
どういう人がリーダーかによって、その地域、組織、企業等に属する人たちの前途は、大きく変わってきます。とくに非常時には、リーダーの人間性、能力によって、関わる人たちの人生が左右されてしまいます。
そんなことは、古代ローマの時代から、いえ、もっと昔からそうではあるのですが、現在、リアルに見せつけられているのかもしれません。
私は、学生の頃、歴史上の人物のリーダーシップに興味があって、そういう本を読んでいました。
そして、素晴らしいと言われているリーダーに感心し、かなり問題があると感じるリーダーに対しては、勝手に腹を立てていました。
たとえば、インパール作戦の牟田口廉也司令官の話を知って、しばらく怒り続けていました。インパール作戦は、「史上最悪の作戦」「もっとも無謀な作戦」と評され、戦死者は3万人、傷病者は4万人以上と言われています。牟田口司令官はもちろん、上層部、組織構造においても問題が指摘されています。
いずれにせよ、非常時には、関係者の生死が関わってきて、優れたリーダーのもとでは生きられる人たちが、そうでないリーダーのもとでは死ぬことにもなるので、重要だと感じます。
そういう意味では、今回の新型コロナウイルスへの対応において、台湾は健闘していると言えるでしょう(NHKでも以前そういう番組をやっていましたが)。
台湾の取り組み
台湾の人口は約2360万人(2020年2月 日本の外務省データ)で、新型コロナウイルスの感染者は429人、死者6人(4/26 13時 NHK統計)です。
今、学校は授業が再開され、店も営業している、通常通りの活動だそうです。入国者に関しては、2週間の自宅(ホテル、施設)隔離措置が続いています。
下記は、ニュース等で公表されている、台湾の動きです
- 12/31に、陳時中氏(保健当局のトップ)が、WHOにメールで警告文を送る(中国の武漢で非定型の肺炎が少なくとも7例出ていると報道されている。現地当局はSARSとはみられないとしているが、患者は隔離治療を受けている旨)。この頃から、入国者への検疫を実施、武漢からの入国者には(飛行機内での)機内検疫。中国への渡航者には注意勧告
- 1/2から、武漢からの観光客の足取りをスマホ等で把握
- 1/21 台湾で初めての感染者が発生
- 1/28から、湖北省への渡航者(帰国者)2000人にスマホでのモニタリング、自宅隔離を開始(罰則あり)
- 1月下旬から、陳時中氏が毎日記者会見を開き、Youtubeで中継
- 2/3 武漢にいる台湾人、チャーター機で帰国。14日間の隔離措置
- 2/6 中国からの(中国人の)入国禁止
- 2/7 香港、マカオからも入国禁止
- 3/11から、中国からの帰国者は、公共交通機関利用禁止。専用タクシーに乗ることを義務付ける(罰金あり)
- 3/20 すべての国、地域への渡航禁止、入国者は14日間の自宅隔離
- 輸入に頼っていたマスクを、機械メーカーなどに協力を要請し、自給できるようにした。買い占め防止のため、市民が、薬局などで健康保険カードを提示すれば、購入できるようにした
リーダーに求められること
とくに非常時、リーダーに求められることは「いち早く正しい情報を入手、共有(公表)し、目的に沿って、いち早く戦略・戦術を検討し、決断して、実行する」ということでしょう。
まず、正しい情報かどうかの見極め方として、次のような点に注意します。
- 一次情報(その人のオリジナル)か、二次情報(伝聞)か
- 一次情報でも、その人の知識、解釈が入るので、どういう立場の人なのか、どういう状況か、職業(その職業の人ならではの見方が入る)、信頼性などを見極める
- 裏付け、関連情報を調べる
重要な情報がいち早く入る仕組みは、しかし、一朝一夕にはできませんし、「いち早く戦略・戦術を検討し、決断して、実行する」というのも、同様です。日頃のあり方が大切ということでしょう。
そして、立場が上だからできるというわけでもありません。立場が下でもできる人はできるのです。
ですから、組織、企業などでは、自分がトップだったら、上の人だったら、どうしたらいいのだろうかと、常に考えてみたほうがよいでしょう。
そして、そこで、「他ではこういうことをやっているのに」と羨ましがったり、「うちはなぜそうしない」と批判して終わりにするのではなく、自分ができる方法を考えて、自分で構築すればよいと思います。
自分がトップ、上の人でなくても、トップ、上の人の立場で考え、トップ、上の人がやったらよさそうなことを、自力でできるようにすればよいわけです(私が前にいた会社では、社員にそれを勧めていましたが)。
とくに、情報収集は、CIAをはじめとする各諜報機関の情報アナリストの情報源は、大半が、世界中の公開情報だと言われているので、やり方によってある程度入手できるはずです。
戦略・戦術、決断、実行に役立つ情報も、世界中の歴史、現在の手法が公開されているので、研究して、まずは、自分の周囲から試してみればよいと思います。
そういう意味では、リーダーシップは、立場が上だから発揮できるわけではなく、まずは自分が意識して、できることをやってみるのがよいのかもしれません。