一人ひとりの物語が温かい映画「本日公休」

本日公休チラシとパンフレット

理髪店を営む女性の話

台湾の映画「本日公休」を見ました。
「公休」は「休業」、「本日公休」は「本日休業」という意味です。

この映画は、台湾・台中で理髪店を営む女性、アールイさんの話です。
監督フー・ティエンユー氏が、自身の母をモデルに、実家の理髪店でロケを行ない、作った作品で、演じているのは、20年以上ぶりに復帰した女優(ルー・シャオフェン氏)です。

主人公は、夫に先立たれ、3人の子供がいます。長女は台北でスタイリスト、次女は近隣の街で美容師をしており、長男は定職に就かず一攫千金を狙っています。

主人公は、若い時に師匠から学んだ丁寧で誠実な仕事ぶりで、常連客を大切にし、40年、理髪店を続けています。
立ち仕事なので、膝が痛くなり、治療に行ったりもしていますが、それでも、一人で店をやっています。
常連客との会話は「いつもどおりで?」「いつもどおりで」です。

次女の元夫は自動車修理業で、誠実な仕事ぶりのうえ、人が良すぎ、家族よりも他人を優先するため、次女は納得していませんが、主人公からは頼りにされています。

主人公は、ある日、常連客の歯科医が病床に伏したことを知り、店に「本日休業」という札を出し、遠方まで出張します。

大きなどんでん返しは起きず、衝撃の事実が明らかになったりもしませんが、主人公と取り巻く人たちの小さなドラマは日々起き、少しずつ変化もしていきます。

普通の人、一人ひとりに「物語」がある

この映画を見ながら、パレスチナの詩人、リフアト・アライール氏「物語」という言葉を思い出しました(関連のブログはこちら)。
今生きている、そして、かつて生きていた一人ひとりに「物語」があるという意味の言葉です。

この映画の登場人物たちは、有名人でも、時代の寵児でも、歴史に残る偉業を成し遂げた人でもない、ごく「普通」の人たちです。
そして、俯瞰した目で見ると、それぞれが「ありふれた日常」を送っているのかもしれませんが、そこには喜怒哀楽があり、「物語」があります。

世界でも台湾でも日本でもいろいろなことが起きていますし、これからも何が起きるか分かりません。時代も変わっていっています。

それでも、世界の、どこにでもいるような、名もない「普通」の人たちを取り巻く世界が平和で、「いつもどおりに」暮らしていけるといいなと思いました。

台北には7年前に行きましたが、台中には大学生のときに行きました。大学生のときに、基龍、台北、台中、台南、高雄を訪れました。民家に泊めてもらったり、現地の人にいろいろ連れて行ってもらったりしました。
それを長崎新聞に記事として載せてもらったのですが、親から「危ないことをする」と怒られました。みんな、この映画に出てくるような良い人たちばかりでしたが、客観的に考えると用心深さはありませんでした。

この店は、その頃からあったことになります。パンフレットの中の台中のスポットを見ていたら、また台湾に行きたいなと思いました。