「何だか違う」と思ったら、立ち止まって考え、手を打ったほうがよい

「悪人」という映画が話題になっていますね。
予告編を見て、九州の言葉っぽいなあと思っていたら、長崎、佐賀、福岡を舞台にしていました。長崎県フィルムコミッションが、ロケ地のガイドマップを作っています。
映画は見ていないので感想は書けませんが、予告で次のようなニュアンスのセリフが気になりました。「仕事をしていたら1日があっという間に終わり、あっという間に1週間が過ぎて、気がつくともう1年」

そうなんですよ。あっという間に時間が過ぎる。光陰矢のごとし。

あっという間に時間が過ぎても、充実し、納得していればよいのですが、「何だか違う」と思いながら、軌道修正できないまま過ごしてしまうのはよくない。「何だか違う」と思ったときにどういう行動をとるかが、その後の人生に大きくかかわると、最近、改めて思います。そこで、気になった本。

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まず、「ほしいものはなんですか?」(益田ミリ/ミシマ社)という漫画。
専業主婦のミナ子さんと、その義理の妹で独身一人暮らしのタエ子さんの日常が描かれています。2人の会話の端々から、2人、とくにミナ子さんが、自分の可能性に対してあきらめているように感じられて切ないです。

本のカバーには「悩める二人の女性に、一人の少女が大切なものを運んでくる」とあります。
少女とは、ミナ子さんの娘で、小学生のリナちゃんです。
リナちゃんの率直な質問に答えながら、ミナ子さんとタエ子さんは、いろいろなことを自問自答します。

ミナ子さんは、40歳ですが「40歳は嫌」だと思っています。理由は「しぼんでいく気がする」「ママのお花はもうおしまいって気がする」から。「わたしもうおばさんなんだよ」と感じています。
ミナ子さんの一番ほしいものは「存在感」。「外の世界から取り残されちゃってる気がする」。けれども、「この先も『それなりに』を越えることがない。『それなりに』を越えたくない気持ち」もあります。
ミナ子さんは「ピアニストになりたかった」けれど「結局、何にもなれなかった」と言います。

タエ子さんは、会社で事務の仕事をしています。
「なりたいものになれなかったの?」という質問に、「そうとも言えるけど、そうとも言いきれない」と答えています。
「なりたいものっていろいろあったけど仕事ってそれだけじゃないし、なりたいものになっている人ばかりじゃ、世の中、てんやわんやになっちゃうしね~」と言っています。

タエ子さんがほしいものは「保証」。
「うちの会社だっていつつぶれるかわかんないし」と感じています。

タエ子さんは「大人になるといろいろ大変だから」子どもには「できるだけ長く夢見る時間を過ごしてほしい」と思っています。

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本のカバーに、ミナ子さん、タエ子さん、2人からの吹き出しがあり、「このまま歳をとって、”何にもなれず”終わるのかな…」とあります。

リナちゃんは「何になりたいかはわかんないけど、誰にもなりたくない」と言っています。「ママは『何にもなれなかった』っていうけど、ちゃんとそこにいる」「それは、とても、すごいことなんだ」と感じています。

ミナ子さんとタエ子さんは、将来に対して「”何にもなれず”終わるのかな…」という不安を感じているけれども、具体的に「なりたい何か」があるわけではなく、それを探すことも考えていないようです。
また、「私はちゃんとここにいる」という自信をもっているわけでもありません。

リナちゃんとの会話で、とくにミナ子さんが、自分の可能性について少しずつ気づいて、変わりつつある気はしますが、ミナ子さんは、ある意味、人生の転機に立っていると思います。
この際、「なりたい何か」について考えて、納得のいく答を出したほうがよいと思います。今のままでよいならよいで、ただ「しぼんでいく」と嫌な気分になるのではなく、自信をもって、前向きに過ごしてほしいと感じます。

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将来について希望がもてないということで、「希望格差社会」(山田昌彦著/筑摩書房)の本を思い出しました。
ミナ子さんとタエ子さんは、いわゆる中流の人たちで、「負け組」でもなく「絶望」もしていないので、状況は違いますが。

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「希望格差社会」は、日本社会は、将来について希望がもてる人と、希望がもてない人に分かれていくプロセスに入っているのではないか、なぜこのような事態が起きたのか、将来どうなっていくのか、何をすればよいのか、について書いた本です。

希望がもてない人は「努力したところで報われない」と感じています。希望がもてないから、やる気が起きず、無駄だと思うから努力もしない。将来について考えても暗くなるので考えない。考えないし、努力しないから、ますます見通しが立たなくなる。

ミナ子さんとタエ子さんのみならず、将来に対する不安を感じている人は多いと思いますが、漠然と感じているだけで、結果的に何も手を打たなければ、ますます見通しが立たなくなるでしょう。

「何だか違う」と思ったときは、スルーせず、やはり立ち止まってきちんと考え、手を打たなければいけないなあと、そういうことを感じます。

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そこで、参考になる本が「10-10-10(テンテンテン)人生に迷ったら、3つのスパンで決めなさい!」(スージー・ウェルチ著/講談社)。

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「10-10-10」とは、人生の折々で「私は○○をすべきかどうか?」と迷ったとき、また、人生を立て直したいとき、10分後(現在)、10カ月後(予測できる将来のある時点)、10年後(未来のある時期)、すなわち、短期・中期・長期的にどうなるかを予測して、決断するというもの。

予測は、十分な情報を集め、徹底的に分析し、客観的に見つめなおして行ないますが、自分の心の奥底の価値観や本心、自分が本当に信じているものは何か、自分はどんな生き方をしたいのかと照らし合わせて、「自分なりの人生を築くためにもっとも役に立つ決断はどれだろう?」と、答を導き出します。

本書には「人間には、自分にとってプラスであれ、マイナスであれ、それが遠い未来のことになればなるほど軽視する傾向がある」「わかりやすく言うと『人は未来など存在しないかのように行動する』」とあります。
また「自分の価値観に忠実に生きている人が少ない」ともあります。

不安で、このままじゃダメな気がすると感じながらも、人はそれを放っておく。そして、放っておいた結果について、考えたくないから考えない。文字通り、後回しにしてしまう傾向がある。ゆえに、あえて意識的に「10-10-10」で、中期・長期的な予測をし、決断するのが賢明だと感じます。

また、自分の本心をもっと大切にしたほうがよい。
タエ子さんも「なりたいものになっている人ばかりじゃ、世の中、てんやわんやになっちゃうしね~」などと、”すっぱい葡萄”のようなことを言わず、本当に自分がなりたいもの、なりたい自分になることを考えればよいと思います。
「大人になるといろいろ大変」ですが、自由も増えるので、自ら「夢見る時間を過ごし」、夢を実現させればいいのではないかと感じます。

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そのために参考になるのが、「大好きなことをしてお金持ちになる」(本田健著/フォレスト出版)という本です。

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この本にはいろいろ参考になることが書いてありますが、「大好きなことでお金持ちになる人が持つ9つのメンタリティー」の一番目は「自分らしく生きる」です。
成功のために「自分以外の何者かになろうとして、足元をすくわれてしまう」と書いてあります。
「誰にもなりたくない」というリナちゃんのスタンスでよいのです。本当に自分がなりたい自分になればよいと思います。

本書の新書版の「おわりに」に、「私の周りの友人で成功している人は、それぞれ紆余曲折を経て、今のライフワークに行き着いています」「彼らの多くも、二〇代で迷い、三〇代で迷い、四〇代で迷いながら、自分のハートを羅針盤にして、現在の成功を手にしています」とあります。

「努力したところで報われない」ことは、実際、たくさんあります。不安の種はたくさんありますし、せっかく手に入れた保証も突然なくなったりします。
けれども、悪いこともあるけれど、よいこともある。あれこれやっているうちに、だんだんよい方法がわかって、うまくいったりするので、あきらめずに続けることが大切に違いないと、そんなことを感じます。