ところで、いまパレスチナはどうなっている? ―― 戦争は終わったの? そして、日本は?

昨年(2025年)9月に、アメリカのトランプ大統領が、「ガザ和平計画」を提案し、10月に、イスラエルとハマスとのあいだで停戦が成立しました。
では、戦争は終わったのでしょうか? イスラエル軍はガザから撤退したのでしょうか? 攻撃はもう行なわれていないのでしょうか?

結論から言うと、停戦はしました。けれども、戦争が終わったわけではありません。

停戦はしているが、戦争は続いている?

ずっと続いてきた、イスラエルによるパレスチナへの大規模な空爆や激しい戦闘は減りました。けれども、

  • イスラエル軍はパレスチナから全面撤退したわけではありません
  • ガザやヨルダン川西岸では、衝突や軍事行動が断続的に続いています
  • 人や物の移動には、いまも厳しい制限があります

イスラエルの新聞、ハアレツなどは、この状態を「戦争が終わった」のではなく、形を変えて続いている状態として伝えています。

ニュースは減っても、まだ終わった話ではない

「停戦」ということもあり、日本におけるパレスチナ関係のニュースは減っています。
国政の動きなど、他の大きなニュースが増えていることに加え、日本のメディア自体が、現地の状況を十分に伝えられない事情もあります。たとえば朝日新聞では、現地通信員が戦闘で亡くなったこともあり、以前のような、継続的で詳細な取材が難しくなっています。

その結果、「停戦した」「会談が行なわれた」といった事実は伝えられても、その後、人々がどんな日常を送っているのかまでは、なかなか見えてきません。

パレスチナの人たちの「その後」

私たちは、「停戦=もう終わった話」と受け取ってしまいがちですが、実際には、停戦後も人々の生活は戻っていません。
相変わらず

  • 自由に行き来できない
  • 医療や教育は不安定
  • 街は破壊されたまま(さらに断続的な破壊は続いている)

「いつまた戦闘が本格的に再開されるのか」「いったいこれからどうなってしまうのか」「その前に、生き延びられるのか」、さまざまな不安の中で人々は生きています。

ハアレツの取材に対し、国連関係者は、「人々を過激にするのは思想ではなく、人々が日々の生活で追い詰められるからだ」と語っています。

爆撃が減っても、「安心して暮らせる状態」にならなければ、戦争は終わったとは言えないでしょう。

そんななかでの日本の動き

こうした状況のなか、日本の茂木外相はイスラエルを訪れ、ネタニヤフ首相と会談しました。同時に、パレスチナ側とも面会し、日本として協力を続けていく姿勢を示しています。
これは、実はとても特徴的な動きです。

日本はアメリカと同盟関係にあり、そのアメリカはイスラエルを強く支持しています。
それ故、日本は国連などでも、アメリカの立場に近い行動を取ることが多く、「中立」とは言えません。

一方で、日本はこれまで一貫して、

  • イスラエルとの関係を維持しながら
  • パレスチナ自治政府とも関係を保ち
  • 軍事ではなく、人道・復興支援を軸に関わる

という立場を取ってきました。

UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)への支援や、医療・教育・インフラ分野での協力は、長年の日本外交の柱の一つでもあります。

つまり日本は、アメリカの同盟国でありながら、実際にはパレスチナとの関係も構築し続けている国でもあります。

茂木外相になって、何か変わったのか?

では、茂木外相になって、日本の姿勢は変わったのでしょうか?

日本の基本方針である「対話の継続」「人道支援」「復興への関与」は、これまでと同じです。
今回、茂木外相は、イスラエルとパレスチナ双方と会談していますが、こうした対応自体は、上川外相の時代にも行なわれてきました。

ただし今回は、戦闘の最中ではなく、停戦後の局面において、どちらか一方に肩入れするのではなく、対話の場から降りず、その後も関わり続ける姿勢をあらためて示した形です。

つまり、日本は、混迷する世界情勢のなかでも、立ち位置を変えず、軍事や勢力争いに巻き込まれることなく、パレスチナの停戦後の生活や社会をどう支えるか、という視点で関わろうとしています。

日本は「法による国際秩序」も重視してきた国

さらに、今回の戦争は、法的な立場からも検討されています。
国際司法裁判所(ICJ)では、イスラエルの軍事行動が国際法に照らしてどう判断されるのかが審理され、国際刑事裁判所(ICC)でも、個人の戦争犯罪責任を問う動きが進んでいます。

つまり、イスラエルとパレスチナの問題は、戦場だけでなく、国際法と国際秩序の場でも扱われる段階に入っているということです。

もちろん国際法には、国内法のような強制力はありません。けれども、日本は、ICJやICCのような国際機関を支え、「法による国際秩序」を重視してきた国の一つです。

いずれにしても、パレスチナの問題は、「遠い国の、もう終わった出来事」ではありません。
中東で起きていることは、その地域だけの話ではなく、国際関係の緊張、世界経済や安全保障の動きと結びつき、結果的に日本の社会や私たちの暮らしにも影響してきます。
また、日本が国際社会でどのような立ち位置を取るのかも、私たちの将来に関わる重要な問題です。
そう考えると、この問題は、決して「他人事」ではないのだと思います。