カーティス教授の「日米関係の行方」セミナー
ジェラルド・カーティス教授の、今年第2弾のセミナーに行きました。
前回(今年第1弾)のセミナーは、「オバマ大統領と今後のアメリカ」というテーマでしたが、今回のテーマは「日本の外交転換と日米関係の行方」で、次のような内容でした。
- オバマ政権の特徴、外交の特徴
- 今後のアメリカと世界経済
- 日本の総選挙とその後
- 北朝鮮にどう対応すればいいのか?
- 日米関係 日中関係 米中関係
セミナーデータ
タイトル:日本の外交転換と日米関係の行方
講師:ジェラルド・カーティス氏(コロンビア大学教授)
日時:2009年5月27日 (水) 19:15~20:45
場所:アカデミーヒルズ
オバマ政権の特徴、外交の特徴
オバマ大統領は、能力主義であり、5月26日に米連邦最高裁判所判事に指名されたソニア・ソトマイヨール判事は、ブロンクス生まれのプエルトリカンの54歳の女性。生まれや性別に関わらない人事は、アメリカの理想である「自由と平等」の実現として、多くのアメリカ国民に勇気を与えているとのことです。
そのため、アメリカの7割の人が自分や家族の失業の不安を抱えているにも関わらず、アメリカはいい方向に行っているという人が、オバマ大統領就任時の3倍になっているとのことです。
また、オバマ大統領の外交アプローチは、正面から対立せず、対話し、努力して協調関係を築くという、アジア的なもので、南米やイランとの関係も、対話をすることにより、新しい国際秩序をつくろうとしているとのことでした。
今後のアメリカと世界経済
アメリカは元に戻れない、つまり、過剰消費の時代には戻らない。アメリカ人が慎重に生活するようになると、輸出国の日本、韓国はアメリカ以外への輸出を拡大していくしかない。日本は、中国への輸出など、アジアのマーケットをもっと重視したほうがいい、とのことでした。
日本の総選挙とその後
カーティス教授は、総選挙の日と、その後に関しても、予想を述べられました。
北朝鮮にどう対応すればいいのか?
カーティス教授は、2月に北朝鮮を「セカンドトラック」という形で、アメリカ人7名で訪問されています。「セカンドトラック」は、政府のオフィシャルな外交である「ファーストトラック」ではなく、民間人や議員個人による外国の要人との交流(会談)です。
このときの体験も踏まえたお話がなされました。
北朝鮮は、核保有国になりたいわけではないが、核兵器を放棄することはあり得ない。また、制裁は効かない。国民を犠牲にすることを何とも思っていない政権なので、制裁しても効果がない。いい政策はなかなかとりにくいとのことでした。
そして、北朝鮮への制裁が強まれば、中国に北朝鮮からの難民が入るため、中国は自国の安全を心配している。これから中国が北朝鮮に対してどう考えていくかが重要で、そのために、米中の新しい話し合いが始まるだろうとのことでした。
日米関係 日中関係 米中関係
ブッシュ時代までの日米の関係は、アメリカが日本に何かを求め、日本はそれをどう実施するか、というのが問題でしたが、オバマ政権は、日本に何かを求めることはない。日本からアメリカに、何かを提案し、力を合わせてやろうという形でないと、何も進まないだろうとのことでした。
さらに、世界におけるアメリカの相対的な力が弱くなっているので、日本は、中国、アジアなど多面的な外交関係を考えていくべきとのことでした。
また、中国の重要性は、アメリカにとっても高まっており、バランスが崩れると、日本の安全が危なくなる。
いずれにしても、アメリカ、中国に対して、日本がどういう政策をとるかが重要で、相手の動きを待つのではなく、日本から積極的に働きかけていくよう、日本の姿勢を変えていく必要があるとのことでした。
◆ ◆ ◆
セミナー後に、カーティス教授に、最近話題になっている「ドルが暴落する」という話に関して聞いてみました。
アメリカの国債をたくさんもっている日本も、中国も、ほかの国も困るので、一時的にドルが下がっても戻る(戻す)とのことでした。ただし、円高は、100円には戻らない。もっと円高になるという前提で、日本企業は考えないといけないとのことでした。