「不況後の日本はどうなるか?」というセミナー

「不況後の日本はどうなるか?」という、ソフトブレーン主催のセミナーに行きました。



<セミナーデータ>

タイトル:不況後の日本はどうなるか?

講師他:

第1部 不況は最大の教師

宋 文洲氏(ソフトブレーン株式会社 マネージメント・アドバイザー)

第2部 不況後の日本はどうなるか?

竹中平蔵氏(慶應義塾大学教授 / グローバルセキュリティ研究所所長)

第3部 eセールスマネージャー活用事例

日時:2009年05月20日 (水) 13:00~16:00

場所:ホテルパシフィック東京


◆宋 文洲氏「不況は最大の教師」



宋氏は、いくら景気が悪くなっても、人が生きていくためには毎日消費するので、最低限のニーズはあり、それはバカにならない、今年の前半、在庫がなくなり、景気の底をつくという見方でした。



宋氏は、自分が創業したソフトブレーンを退任してから3年、同社にアドバイザーという形で関わっているけれども、同社も経営が悪化し、宋氏が著書に書いたような「変な会社」、会議が長く、メールが長い会社に、いつの間にかなっていたと言います。



それは、農業と同じで、「雑草」が多い状態だったので、雑草、つまり、「よくない状況」を除去するだけで、会社はよくなる、実際、回復したといいます。



そして、不況が来ないと、よくない状況には気がつかない、不況で危ないと思えばよくなると言います。



今回、経済は回復するけれども、皆にチャンスはない、たとえばエコなど、違う産業でチャンスをつかむしかないと言うことでした。



また、宋氏は、日本は格差が少ない。「格差」の「格」は「人格」の「格」で、人格のランクのように捉えがちだが、違うのは単なる「収入」の差。あるのは、「人材の格差」で、人材を生かせない雇用制度がよくない。人材は入れ替わるから活力が出るのに、日本の大手は社長がやめても、会長になり、同じ。新しくならない。人材を流動化させない、違うところに行かないことが問題だと言います。



さらに、宋氏がいつも元気で、前向きなのは、「癖」のようなもので、「たくさんの修羅場をくぐること」で養われてきた。人は、不安になると、元気になるということでした。



また、宋氏は、6月以降、家族で中国に移り、住民票も移すとのことでした。

その理由として、今、日本では「宋先生」などと呼ばれたりするが、先生と呼ばれたらおしまい、中国は欠陥がたくさんあるけれども、宋氏は中国で仕事を本格的にしたことはないのでやってみたい、とのことでした。

また、華僑は「世界が家」だが、息子がそういう考えではなくなってきているので、自分のためにも、息子のためにも、異なる世界に飛び込みたい、試しに数年間行ってみたいとのことでした。



◆竹中平蔵氏「不況後の日本はどうなるか?」



竹中氏は、経済学者、シュンペーターの「資本主義は不況があるから強くなった」という言葉を紹介し、日本は大変厳しい状況だが、「100年に1度」を excuse(言い訳)にしてはいけないと言います。



そもそも、大きな間違いとして、「100年に1度の不況」と言っているけれども、アメリカは大恐慌のときと比べると、経済成長率も失業率も低くない。

また「アメリカ発の金融恐慌」と言うのも間違いで、ヨーロッパは、不動産バブルとユーロバブル、日本は円安バブルで、世界中のマルチなバブルが崩壊した。ヨーロッパにはヨーロッパの、日本には日本の不況の理由があり、それを解決しないといけないとのことでした。



そして、日本の経済は、企業が弱っている。企業が相対的に地位を落としている。世界のTOP100社を、株価総額(企業価値)ではかると、日本は2社、トヨタとホンダのみしか入っていないと言います。



さらに、日本の15兆円の経済対策の中身は、「policy to help(助ける政策)」であって、「policy to solve(解決する政策)」ではない。ガンになって、ガン細胞をとらず、痛み止めを打つようなもの。体力そのものが弱っていて、痛み止めが効いているあいだに、体力が戻ってこない。薬が切れたら終わりという見方でした。


          ◆ ◆ ◆

竹中氏は、日本の政策として、次の3つをやったら、状況が変わると言います。

1)法人税の引き下げ

日本は40%とどの国よりも高いが、香港(17%)並に下げる

2)ハブ空港の整備

3)農業に法人が進出できるようにする



また、政治は、志をもったいいリーダーが出ればいいが、キーを担うのは国民一人一人だということでした。

さらに、小泉氏を振り返って、リーダーの資質とは何かについても語られました。
最大のポイントは「パッション」で、細かいことは言わない、戦略は人に任せる、一番わかっている人にやってもらうことだということでした。
ちなみに、オバマ政権は、経済政策に、大恐慌研究の権威等、ベストの布陣を敷いているとのことでした。

そして、リーダーの資質は、人間的な魅力、熱い気持ち、人間らしさをもつこと、一緒にやる仲間への思いやりがあることとのことで、小泉政権時代のエピソードが語られました。

なお、今年の景気に関しては、日本の不況は、15兆円が効き、ひと休みとなる。少し一服感が得られる。けれども、やがて薬は切れる。今の状況では「solve(解決)の政策」がとられていないから、本当の回復はしない、回復まで時間がかかるとの見方でした。

また、日本の経済は、最終的には皆の幸せを目指さないといけないが、それは、「所得が成長している状態」「基本は一人あたりの所得が上がっていくこと」であり、チャーチルの「成長はすべての矛盾を消してくれる」という言葉が紹介されました。

          ◆ ◆ ◆

今後、日本はどうなっていくのか、リーマンショックの前から「不安」を感じている人は多かったと思います。昨年秋、ある意味、「不安は的中」したのですが、それが、「アメリカ発」「100年に1度」ということで、「日本の不況の理由」「日本の不安の原因」から目をそらすことになったのではないかと、私も感じます。
竹中氏の言うように、「日本には日本の不況の理由があり、それを解決しないといけない」「policy to solve(解決する政策)」が必要だと思います。

そして、日本の「不況」「不安」は、多くの人を「悲観的」「後ろ向き」にし、それが、若い層へも影響を与えているのではないかと感じます。
今回の不況の前、2006年に財団法人日本青少年研究所が行なった「高校生の意欲に関する調査-日本・アメリカ・中国・韓国の比較-」(2007年4月発表)では、次のような報告がされています。

生活意識:
日本「暮らしていける収入があればのんびりと暮らしていきたい」
米国「一生に何回かはデカイことに挑戦してみたい」
中国「やりたいことにいくら困難があっても挑戦してみたい」
韓国「大きい組織の中で自分の力を発揮したい」

心情:
「よくいらいらしている」日本28.0%、米国18.4%、中国17.8%、韓国13.2%
「よく疲れていると思う」日本50.0%、米国38.2%、中国31.8%、韓国37.0%

ほかの項目や調査と合わせてみると、さらに詳しい状況がわかります。

私が思うのは、日本は、大人が将来への夢や希望、可能性を感じられない、むしろ、不安を抱え、疲れている、そんな空気が漂っているので、子供も影響を受けているのではないか、ということです。そして、同時に感じるのは、私たち日本人は今、精神的に弱いのではないか、挑戦したり、切り開いていく気持ちが薄れている、動きも鈍っているのではないかということです。

「もう疲れた」「だるい」「面倒くさいことはしたくない」という気持ちになりがちなのは、「一時的な消費の享楽」はあっても、「本当には楽しくない」、それは、「創り上げていく楽しさ」かもしれませんし、「全力を出し切って乗り越える楽しさ」かもしれませんが、ある意味、楽しい毎日がおくれていない。本領発揮できていない、生かされていない(生かしていない)のかな、とも思えます。
そして、このあたりの根本的な問題が、今後の日本に大きく関わってくるのではないだろうか、と思います。