毒物カレー事件の謎が深まる映画「マミー」
関係ないところにも影響が
「マミー」という映画を観ました。
1998年に起きた和歌山毒物カレー事件の話です。
地域の夏祭りのカレーにヒ素が入っており、67名が中毒、4名が死亡。
林眞須美被告の死刑判決が確定しています。
本人は容疑を否認し、動機も分からず、確たる証拠もありません。
けれども、当時、マスコミにホースで水をかける眞須美被告の心証は、最悪でした。
眞須美被告が着ていたブランドの服を私も持っていましたが、「これ、着にくくなった」と全然関係ないのに思いました。
そのショップの人と話をした際、「影響が出ています」と言っていました。
夏祭りやカレーに対するイメージも一時期下がっていました。
証拠として弱いかもしれない
当時、最先端技術などでさまざまな証拠が出てきたとスクープになっていたことも、今改めて振り返ると、弱い気がします。
目撃証言は、眞須美被告、もしくは次女が、きょろきょろしながら鍋を開け、湯気が出ていたというものですが、ヒ素が入っていないほうの鍋だったので、入れた証拠にはならないです。
また、鍋のヒ素と、林家にあったヒ素が同じだったことが、最先端の科学鑑定で出ている件も、同じ中国産ということが分かった程度です。
中国産のヒ素は、当時、和歌山でたくさん流通していて、シロアリ駆除材として容易に買え、林家以外の近隣の家にもあったとのことです。
眞須美被告と夫は、保険金詐欺で、何回か億単位のお金を得ています。
これらは犯罪ですが、夫が自分でヒ素を舐めて、高度障害になって保険金を得ているわけです。自分の命をかけて、お金をだましとる人たちが、お金にもならないのに、カレーにヒ素を入れるメリットはない気がします。
この映画を観て、眞須美被告がやる理由はないかもしれないと思いました。
しかし、では、真犯人は何者で、何の目的かというと、それも不明です。情報はほとんどありません。謎が深まる一方です。
十字架を背負う人、正義になる人
この毒物カレー事件は、死者と中毒者を出し、ヒ素の後遺症で苦しんでいる人もいます。
地元ではタブーになっていて、わざわざ蒸し返されたくない、関係者にとっては迷惑な映画制作でもあるようです。
林家の4人の子供たちも「加害者の家族」として、壮絶な人生を歩んでいます。
長男は映画に出ていますが、これまで人権はないに等しかったと言います。素性を隠すため嘘を重ね、メンタルがやられ、それでもあるとき素性を知られ、ありとあらゆる差別を受けてきたようです。
長女の娘は、長女とその夫(義父)から虐待死させられ、長女は別の娘と無理心中し、ニュースになりました。
加害者の家族が、重い十字架を背負い、壮絶な人生を歩む一方で、国策としてジェノサイド(大量虐殺)や標的殺害を行なう国の政権メンバーは、国際法違反でありながら、「正義の手段」「全面的に支持する」となるのが、私には許容できません。
そんなことを感じた映画でした。