仕事の大変さと金額は比例しない

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「仕事の大変さと、ギャラ(報酬)の高さは比例しない」というと、
「それはそうだろう」と思う人もいれば、
「そう? 仕事が大変なのに安い場合はあるかもしれないけれど、逆に、仕事が楽で高い場合ってある? だいたい比例しているのでは?」と思う人もいるだろう。

しかし、仕事が大変でも安かったり、楽でも高かったりすることは大いにある。

同じ仕事なのに、金額が20倍違う、というのは、私が働き始めてすぐに体験したことである。その場合、働く人の能力やキャリアの問題ではない。同じ人の同じ仕事に対して金額が違うのだ。

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私は、長崎大学を卒業して、東京でいきなりフリーランスのライター&編集者として働き始めた。そのいきさつは別の機会に書くが、大学のときに読んだドラッカーの本と、編集プロダクションの社長のアドバイスのおかげで、順調に仕事が入ってきた。

そのとき、フリーランスの仕事は、ほぼ同じ仕事でも、依頼先や、仕事の受け方でギャラが下手すると20倍違うことを体験した。

同じような取材先を、同じように取材して、同じような原稿を書くのに、片や3000円、片や6万円だったりしたのだ。

その違いは、出版社の規模や考え方、直接の依頼か下請け、孫請けかにもよった。有名な出版社でも、「うちの仕事をさせてもらえるだけでもありがたいと思え」と安いところがあったり、小さくても安くないところもあった。

そして、高い仕事の場合、経費は別に出るし、先方の担当者の指示が的確で、いわゆる仕事ができる人のことが多かった。こういう人は、親切・丁寧なうえ、他の編集部に紹介してくれたりもした。フリーランサーとしては、ありがたい先だ。

逆に、安い仕事の場合、交通費などの経費が出ないうえに、指示は的確でなかったり、面倒だったり、「ついでにこれもタダでやって」などと、大変なことが多かった。

前者は、何事も余裕があり、好循環しやすく、後者は何事も余裕がなく、悪循環しやすく、社会人になってすぐに、世の中の仕組みに気づいた感じがした。

同じ仕事で、単価がそこまで違い、対応も違うと、こちらの仕事のモチベーションも効率も違ってくる。当然、「仕事の単価は重要だ」と思った。

さらに、今、単価は20倍どころか、100倍以上違うこともあると感じる。
人と話をしていても、クリエイティブ系やIT系の仕事の単価は、幅があると思う。

会社の規模や直の仕事かどうか、首都圏と地方でも違うが、ひと昔前ならプロ向けではあり得ない格段に安い仕事も増えている気がする。

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以上のことは、フリーランサーや事業主にとっては、よくある話だが、大学生や社会人(会社員、アルバイト)は、「仕事の大変さと金額は無関係」ということを、よくわかっていなかったりする。

大学生や、社会人で、「高い仕事はしたくない」という人がいる。
理由を聞くと、「高い仕事は、大変だったり、面倒だったり、危険だったり、責任が重かったりするに違いない」と思っていることがわかる。

社会人で、「今の給与よりも1.5倍高い給与の仕事は、仕事の拘束時間が1.5倍になるか、大変さ、つらさが1.5倍増える」と思っている人もいる。

なかには、待遇の悪い会社に勤めていて、「ここでさえ、こんなに大変なのに、高い賃金の会社に行ったら、どんなに大変になるのか」と思っている人もいる。けれども、待遇の悪い会社ほど、あらゆることに余裕がなく、大変だったりするのは、先ほど書いたとおりである。

「仕事の大変さと金額は比例しない」ことは、これから働こうという人、転職を考えている人は、わかっておいたほうがよいと、強く思う。

人からの依頼で働く場合、つまり、自分で仕事を創るのではない場合、仕事は竹筒のそうめん流しと一緒で、なるべく流れの上流でキャッチしたほうがよく、どこがその仕事の上流かを知り、近づいたほうがよいと思う。

さらに、会社を辞めて独立することを考えている人は、仕事を時給、月給の延長で考えてはいけない。労働時間と利益はこれまた無関係なので。利益の上がる仕組み(ビジネスモデル)を考える必要がある。