「なぜ、ノウハウ本を実行できないのか」という本

「1分間マネジャー」の著者、ケン・ブランチャード氏が、人の行動パターンを変えるビジネスをしているポール・J・メイヤー氏らと書いた本が、「なぜ、ノウハウ本を実行できないのか 『わかる』を『できる』に変える本」(ケン・ブランチャード、ポール・J・メイヤー、ディック・ルー著/ダイヤモンド社)です。

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なぜ、多くの人は、本を読んだり、セミナーに参加して学んだことを実際に活用しない、活用できないのでしょうか? そして、どうすれば、活用できるようになるのでしょうか?


私、川嵜は、これまで、たくさんの経営者やビジネスパーソンと接してきましたが、うまくいく人、成長する人の共通点、そうでない人との違いがだんだんわかってくるようになりました。
そのうちのひとつが「行動力」、とくに、新しいことを始め、続ける「行動力」です。

経営者やビジネスパーソンで、夢や大きな話、アイデアを語る人はたくさんいます。けれども、実際にその準備を始めたり、何らかの行動を起こす人は多くありません。さらに、せっかく始めても、継続できる人は一握りです。

しばらくすると、「あの件は、やろうと思ったんだけど~だから」と、ネガティブな発言が出はじめ、そのうち、すっかりなかったことになり、次の夢や大きな話、アイデアがマシンガンのように語られます。しかし、それもまた、行動にはつながりません。

そういう人に、まわりの人が「それならこういう人がいますよ」とか「こういう情報がありますよ」と助言しても、助言が活かされることはありません。行動しないため、夢に近づきません。

逆に、うまくいく人、成長する人は、さっさと動き始め、何かあっても行動することをやめません。まわりのちょっとした助けも、感謝してフル活用するため、まわりは喜んで力を貸し、だんだん夢に近づきます。

行動できる人はなぜ行動でき、行動できない人はなぜ行動できないのか? 行動できない人は、どうしたら、行動できるようになるのでしょうか?

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本書「なぜ、ノウハウ本を~」によれば、知識を行動に活かせないのには、3つの理由があると言います。
それは、「情報過多」「ネガティブなフィルター装置」「フォローアップの欠如」です。

「情報過多」
本やセミナーからは、たくさんの新しい知識が得られますが、一度にたくさんの情報を得ても、頭の中から次々に消えて行ってしまいます。「一度しか読んだり聞いたりしたことのないものは、ほとんど覚えていられない」。「新しい情報に接することが習慣になっていると、忘れることも習慣になってしまう」と言います。
ゆえに、「本当に一つの分野をマスターするには、大量の情報に触れるより焦点をしぼった情報に取り組むべき」「多量の知識を一、二度学ぶより、少量の知識を何度も学んだほうがいい」とのことです。

「ネガティブなフィルター装置」
人は、ある情報を得たとき、ポジティブに考えるより、ネガティブに考える傾向があり、それは、子どもの時の、家庭や学校の教育に起因しているといいます。
つまり、長所を褒められるより、短所を指摘されることが多かったため、自分も他人も疑いの目で見るようになっている。
本当はできることも、「心配事や迷い、マイナス思考、予断、独断的な考え」が邪魔して、なかなかできると思えず、行動にブレーキがかかる。
本やセミナーに対しても、「それは間違っているんじゃないか」「自分にできるわけがない」と半信半疑で読み聞きしているから、一部しか学べないとのことです。
ゆえに、意識的にネガティブなフィルターを外す必要があると言います。

「フォローアップの欠如」
本書は「行動を変え、望むような結果を得るには、仕組みとサポートと説明責任が必要」「新年の決意がうまくいかないのは、助けを借りずに達成しようとするから」だと言います。

基本的に人は自らを変化させるのは嫌いです。まわりや人が適度に変わってくれて、自分が新しい価値を享受できるのはウェルカムでも、自ら変わるのは歓迎できません。
慣れ親しんだこと以外のこと、新しいことを始めるには、エネルギーが必要だからです。努力を要し、苦痛を伴うからです。

だから、一時的に感情が高ぶって「今年はこうするぞ」と決意しても、冷静になると「実際にやるのは面倒だ」「明日からでいい」という気持ちになってくるのです。そして、そのうち、思い出すのも苦痛になります。「まだやっていない」「ダメなやつだ」と非難される気持ちになるからです。
ゆえに、すぐに、やらざるを得ない仕組み、やりたくなる仕組みをつくる必要があります。

本書では、従業員の管理の場合、下記が必要だと言っています。
「教える → やって見せる → それをやらせる → 見守る → 上達を褒める、または方向を変えさせる → 教える…(繰り返し)」。
このなかで、「上達を褒める」は重要です。「新しいことを始める苦痛 < 褒められる快感」が、モチベーションを高めるからです。

その後、「頼む → やらせて見守る → 褒める」に変化。最終的に「自分で考えさせる → 実行させる → 自分で上達を褒める、または方向を変える」にするといいます。
さらに「一対一面談」「外部のコーチによる電話での指導」も必要だと言います。

上司に管理されるわけではない自らの決意の場合、なおのこと、フォローアップの仕組み、やらざるを得ない、やりたくなる、続けたくなる仕組みを作らなければ、始めることも、続けることも難しいのは当然なのかもしれません。

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これら3つのうち、まず大切なのは、「ネガティブなフィルター装置」を外すことだと思います。それには、強いアクセルが必要です。

「実行力」がある人は、基本的に、どうしてもやりたいこと、自分がやらなければと思うことをやっています。それをやっているだけで楽しい、やりがいが感じられるから、続けられるのです。すなわち、ブレーキをかける余地もなく、強いアクセルが踏まれるのです。
単に、「こうしたほうがよい」「こうすべきだ」ということでは、「新しいことを始める苦痛」や「ネガティブなフィルター」がブレーキをかけてしまいます。

次に、「フォローアップ」の仕組みです。
どうしてもやりたいこと、自分がやらなければと思うことをやっている人でも、自分の力だけでなく、周囲、外部の力をどれだけ借りられるかで、夢の実現の速度が変わります。
また、先の「こうしたほうがよい」「こうすべきだ」ということでも、やらざるを得ない仕組み、やりたくなる仕組みを作れば、実行し、やがて習慣化し、継続することも可能です。

また、知識・ノウハウを実行するには、「情報過多」を避けること。自分が実行する場合でも、人の力を借りるときでも、「焦点をしぼって」情報を取り入れる、もしくは、相手に伝えること、同じことを「何度も」繰り返すことが有効であることを意識するといいと思います。