いま、アメリカと中国は何を目指しているのか?

「新たな冷戦」とも言われる米中関係

世界はつながっていて、さまざまなことが絡みあっていますが、なかでもアメリカと中国の影響力は世界にとっても、日本にとっても無視できないものがあります。

アメリカによる関税率の引き上げはもちろん、中国による日本へのレアアースの輸出停止も世界に影響を与えています。台湾海峡での緊張も高まっています。

アメリカと中国は「新たな冷戦」とも言われる、世界の覇権争いをしているわけですが、かつてのアメリカとソ連の冷戦とは、状況が異なります。
ソ連との冷戦では、米ソ両国は、相手の経済とはほぼ関係なかったのが、米中の経済は相互依存しています。

米中の覇権争いは、これから10年、20年と続くかもしれない対立であり、日本も世界も影響を受けます。

そこで、今回は「いま、アメリカと中国は何を目指しているのか?」についてまとめました。また、次回は、そういったなか「日本はどこへ向かうのか? ―― 高市政権が目指すものと、その可能性」について書きます。

アメリカが築いた「戦後の世界秩序」

第二次世界大戦後、アメリカは圧倒的な経済力と軍事力を背景に、世界の中心となる仕組みを築いてきました。

ドルを基軸とする金融体制、自由貿易のルール、同盟国との安全保障ネットワーク、そして、海洋の安全を支える軍事力。
これらは単なる制度ではなく、アメリカが主導して築き、維持してきた「世界の枠組み」です。

1991年にソ連が崩壊してからは、アメリカは事実上、唯一の超大国となりました。しかし今、その前提が揺らいでいます。

中国の台頭に加え、産業構造の変化、国内の分断といった課題に対し、アメリカは「これまでの枠組みを守る」のか、「自ら再設計する」のかを迫られています。

揺らぐアメリカの土台

いまのアメリカは決して余裕がある状態ではありません。中国による外からの挑戦だけでなく、国内にも課題を抱えています。

1 製造業の海外移転がもたらした影響

かつてアメリカは、自動車も家電も国内で大量に生産していました。
しかし、1990年代以降、多くの工場がより安い人件費を求めて、中国やメキシコなど海外へ移転しました。

アメリカは、産業を「高付加価値分野」へ移行し、「頭脳産業の国」となるという考えのもと、ITや金融、エンタメ、バイオ・軍事技術を成長させてきました。

確かにGDPは拡大しましたが、恩恵は、シリコンバレーやニューヨークなど一部の都市の高学歴層に集中し、これまで国を支えてきた地方の工業都市は衰退し、中間層の雇用が減少しました。
経済は伸びても、地方の中間層にとっては「自分たちは豊かになっていない」「取り残された」という不満が広がったままです。

また、半導体や医薬品、軍需部品なども海外依存になると、サプライチェーン(供給網)の一部が止まったり、他国に情報が流れたりするリスクも発生します。

2 分断が深まる社会

産業の移行による、地方の中間層の不満は政治にも影響しています。
都市部と地方、保守とリベラル、移民をめぐる対立などで、選挙のたびに、国内が割れ、妥協が難しくなっています。
経済的不安が、価値観の対立と結びついているのです。

中間層が不満をもつだけでなく、相対的に貧困層が増えると、治安も悪化します。
経済的影響だけでなく、社会の“心の疲弊”も今のアメリカの現実です。

3 ドルの強さと財政の重み

さらに、アメリカ政府の借金は増え続けています。
減税、軍事費、社会保障費、そしてコロナ対策。
ドルは世界の基軸通貨なので、すぐに危機になるわけではありません。
けれども、金利が上がれば、財政の負担は重くなります。

つまり、アメリカは、

  • 産業の再建が必要で
  • 国内の分断を抱え
  • 財政の重荷もある

という状態で、中国と向き合っているのです。

だからこそ、半導体製造の国内回帰や、同盟国との連携強化に本気で取り組んでいます。
これは単なる経済政策ではなく、「国家の土台を立て直す試み」でもあります。

アメリカがいま目指しているのは、「覇権の維持」+「産業の取り戻し」です。
具体的には

  • 半導体・AI・軍事技術での優位確保
  • サプライチェーンの再構築(脱中国)
  • 同盟国とのブロック化
  • ドル基軸体制の維持

つまり、「これまでの秩序を壊させない」というのが基本姿勢です。

中国の台頭、その実力と課題

では、中国はどうなのでしょうか。

中国は、この30年で劇的に成長しました。
「世界の工場」と呼ばれ、膨大な人口(14.2億人)と安価な労働力を武器に、製造業で世界を席巻しました。
スマートフォンも、家電も、太陽光パネルも、多くが中国で生産されています。
しかし、中国の目標は「安い工場」であり続けることではありません。

1 製造を武器にした成長

アメリカが工場を海外に移すなかで、中国は逆に、製造の中心地になりました。
しかも単なる組み立てではなく、部品、材料、物流、組み立てを国内に集約しました。
そのため、開発から量産までのスピードが非常に速いという特徴があります。電気自動車や太陽光発電などは、その象徴です。

2 技術大国への野心

いま中国が目指しているのは、「製造大国」から「技術大国」への転換です。
半導体、AIの開発、宇宙・量子通信、先端通信技術に関して、国家主導で投資を行ない、アメリカ依存から抜けようとしています。

中国が2015年に発表した10年計画「中国製造2025」は、その第一段で、建国100周年の2049年までに「世界トップの製造強国」を目指すことを掲げています。

3 中国の課題

ただし、中国も順風満帆ではありません。
不動産不況、地方政府の債務問題、人口減少、アメリカの制裁、そして、国家の統制が強まることで、企業活動の自由度が下がる懸念もあります。

4 強い統制はなぜ必要とされるのか

中国のもう一つの側面として、強い国家統制、一党支配、チベットや新疆ウイグル、内モンゴルでの人権問題があります。

中国は歴史的に、内乱、分裂、外部勢力の侵入を繰り返しています。漢民族の王朝だけでなく、北方や西方の「征服王朝(独自文化)」「浸透王朝(漢化)」が支配もしています。
そのため、中国政府が強い危機感を持っているのは「国家の分裂」です。

分裂につながらないよう、中央の権力を強く保ち、地域の独立や分離の動きを抑えることが体制維持の最優先事項になります。

新疆ウイグル自治区やチベットは、地理的に国境地帯にあり、資源が豊富で、戦略的に重要な地域です。
中国政府から見れば、ここが不安定になることは、国家安全保障上の重大問題です。
そのため、厳しい治安管理、監視体制、同化政策が取られています。

国際社会からは「人権弾圧」と強く批判されており、実際、そうなのですが、中国政府としてはあくまでも「国家の安定のため」には必要な措置という考えに基づいています。

5 台湾という象徴

さらに、中国にとって、台湾統一は、1949年からの課題です。
中国共産党が大陸を掌握した後、国民党政権は台湾へ移りました。
北京から見れば、これは「分裂」です。

そして、古代中国の政治思想「天命思想」では、台湾を統一することが、正統性に結びつくことになります。もちろん、「天命思想」をそのまま現代政治に当てはめることはできませんが、このような思想も背景にあるのです。

台湾は、地理的には「第一列島線の要」であり、安全保障上の重要拠点です。
中国側からすると、沿岸地域をアメリカなどの外部の脅威から守る場所にあり、海洋進出の鍵となる位置でもあります。
そして、台湾にはTSMCという世界最大級の半導体メーカーもあります。

軍事・経済・思想的な理由から、中国は「台湾統一は歴史的使命」と位置づけています。

中国は、軍事、経済、技術や資源、通貨において「アメリカに並ぶ、あるいは超える大国になる」という、明確な目標を掲げています。
だからこそ、アメリカとの競争は避けられません。

アメリカは、これまで築いてきた秩序を維持しようとしている。
中国は、その秩序の中で力を伸ばし、アメリカに並ぼうとしている。
その力のぶつかり合いが、いま世界を揺らしています。

次回は、日本の現状と、高市政権の目指すこと、その可能性と課題について書きます。