エボラの話を聞いてきた~長崎大学熱帯医学研究所の公開講座
8月26日に開催された「エボラ出血熱とは何か?」に行ってきました。
<セミナーデータ>
タイトル:市民公開講座 長崎大学熱帯医学研究所・緊急企画「エボラ出血熱とは何か?」
講 師:長崎大学熱帯医学研究所 教授 安田二朗氏
日 時:2014年8月26日(火)19:00~20:30
場 所:長崎市市民生活プラザホール(メルカ築町)
主 催:長崎大学熱帯医学研究所(熱研)
■長崎大学熱帯医学研究所(熱研)とは?
1942年3月に長崎医科大学(現長崎大学医学部)附属東亜風土病研究所として設立されるが、1945年8月の原爆投下による消失など困難にも遭遇。
現在は、熱帯医学研究では日本唯一の公的機関として、感染症などを研究している。WHO協力センターの指定も受け、この8月には、同研究所の准教授が、エボラ出血熱の対策要員として、スイスのWHO本部へ派遣もされている。
ケニアとベトナムにも拠点をもつ。
http://www.tm.nagasaki-u.ac.jp/nekken/
■安田二朗教授とは?
ちょうど「Webナショジオ」に記事が掲載されています。
安田教授は、新興感染症ウイルスの専門家で、バイオテロ対策への貢献で表彰もされています。エボラウイルスについて10年以上の研究歴がある方です。
プロフィール(ナショジオ)
長崎大学熱帯医学研究所・新興感染症学分野
http://www.tm.nagasaki-u.ac.jp/emerging/index.html
公開講座の内容を簡単にまとめました。
■エボラ出血熱はどんな病気?
症状:初期はインフルエンザに似ている(発熱、倦怠感、筋肉痛、頭痛)
その後、顔面、胸部の紅潮、点状出血、浮腫などが見られ、重症化すると、多臓器不全、出血性ショックが見られる
感染経路:空気感染はしない。飛沫感染もしない。接触感染(血液、体液、排泄物を直接触ることによる感染) エイズ、ラッサ熱、MRSAと同じ感染方法
※エボラウイルスは、水道水、洗剤、アルコール除菌液、熱、乾燥、酸、アルカリで、簡単に壊れる
治療法:特効薬、ワクチンはない。水分補給、点滴、栄養剤、解熱剤の投与など、対症療法で回復することも少なくない
エボラ出血熱は、1976年にザイールで初めて報告されてから、20回以上の集団感染が起きており、その致死率は、25~90%
今回、西アフリカでの集団感染は初めて(これまでは、中央アフリカと東アフリカ)で、8月20日時点で、下記のような数になっている
国名 | 感染者 | 死亡者 |
ギニア |
607 |
406 |
シエラレオネ |
910 |
392 |
リベリア |
1,082 |
624 |
ナイジェリア |
16 |
5 |
合計 |
2,615 |
1,427 |
今回、西アフリカで猛威を振るっているのは、現地の独自の事情がある
・ぜい弱な医療体制、公衆衛生上の問題
・行政の対応の遅れ
・住民の栄養状態の悪さ
・文化的な問題や、さまざまなルールが徹底されないこと
■日本、長崎は大丈夫か?
日本は、医療体制が整い、国民の栄養も十分で、教育レベルも高いことなどから、同様の感染拡大は考えられない
以上のような話に加えて、今話題になっている抗エボラウイルス薬「Zmapp」や「ファビピラビル(アビガン)」などの話がありました。
ナショジオ記事(第3回 エボラにもエイズにもインフルエンザにも効く薬)
http://nationalgeographic.jp/nng/article/20140825/412542/
ナショジオ記事は、3回目でも「つづく」となっているので、さらに読むとよくわかると思います(笑)。
今回の講座のサブタイトルは「感染症研究者の戦い 一つひとつの命を守るために」。
同研究所は、エボラ出血熱をはじめとする感染症の制圧のため、関連機関と協力して、研究を続けていますが、世界中、さまざまな分野で、さまざまな研究者が、協力し合いながら、今日も粛々と研究をしています。
ということで、長崎大学国際連携研究戦略本部のリンクも貼っときます。
http://www.cicorn.nagasaki-u.ac.jp/