クラウドコンピューティングとは? よくわかる解説

「クラウドコンピューティング」という言葉は、昨年からかなりポピュラーなのかと思っていたら、そうでもなく、つい最近、ポピュラーになってきつつあるようです。
「解説文を読んでもいまひとつ分からない」という知り合いのために、川嵜がなるべくわかりやすく解説したので、それを載せることにしました。

「クラウドコンピューティング」という言葉は、後で書きますが2006年に使われ出し、昨年は、この言葉の使用をやめるべきだという記事も掲載されていました。けれども、イー・ウーマンの「働く人の円卓会議」で、私が担当した同じ週(2009年3月30日~4月3日)に、関口和一さん(日本経済新聞編集委員)から投げかけられたテーマ、「クラウドコンピューティングって知ってますか?」に対して、Yesが18%、Noが82%でした。
「働く人の円卓会議」の参加者は、情報をキャッチするのが比較的速い人たちなので、私のイメージ的には、Yesが多いだろうと思っていたので、ちょっと驚きました。そこで、知り合いに、この言葉を知っているかどうか聞いたところ、聞いたことはあるが、説明を読んでも意味がよくわからない、たとえば、関口さんの記事に次の文があり、わからない言葉がたくさん入っているので、頭が痛くなるとのことでした。

「コンピューターの世界は最初、メインフレームに始まり、ミニコン、パソコン、クライアント・サーバーへと進化を遂げてきました。インターネットの広がりで『Web2.0』が話題になりましたが、クラウドはさらにその先をいくコンピューターの姿だともいえます。」

「メインフレーム」「ミニコン」で挫け、「クライアント・サーバー」も耳にするけどわからない。いろいろな解説文には、このように、わからない単語が多いとのことでした。
そして、「クラウドコンピューティングって、平たく言うと何なの?」と聞かれました。

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まず、先ほどの関口さんの記事の言葉を平たく言うと、「メインフレーム」とは大型コンピュータのことです。そして、「ミニコン」というのは、ミニコンピュータのことですが、大型コンピュータと比較してミニで、大きさは冷蔵庫ぐらいです。大型コンピュータが部屋いっぱいの大きさなので、比べるとミニで、いわば、中型コンピュータです。

さらに、「クライアント・サーバー」。まず「クライアント」というのは「ユーザー」で、あなたや私のこと、つまり、あなたや私が使っている「普通のPC」のことです。

「サーバー」というのは、平たく言うと、会社などでPCからLAN(LAN線や無線LAN)でつないでいるコンピュータのことです。「クライアント」つまり「普通のPC」に対して、何らかの機能を提供しています。

何らかの機能って? たとえば、「メールサーバー」は、みんなのメールを受け取ったり送ったりしていますし、「Webサーバー」は、ホームページのデータを置いておいて、つなぐとホームページを見ることができます。
「ファイルサーバー」は、みんなのデータを保管し、共有できますし、「プリントサーバー」は、PCとプリンターをつないで、みんなでプリンターを使えるようにしています。

「クライアント・サーバー」というのは、要は「普通のPC」と「サーバー」のネットワークです。

会社では、自分のPCをLANにつないで、メールを送ったり、インターネットを見たり、プリントアウトしたり、共有のデータベースにデータを出し入れしたり、共有のスケジュール表に入力していると思いますが、その仕組みのことです。

よって、先ほどの関口さんの記事は、コンピュータの歴史は、大型コンピュータから、中型コンピュータになって、パソコンになって、現在のネットワークになったという話です。
そして、その先が「クラウド」と書いてあるので、説明します。

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「クラウド」は「雲」のことです。コンピュータのシステムを表わす図で、インターネットは雲のような絵で書かれていたのですが、グーグルのCEO、エリック・シュミット氏が、2006年8月の会議で、「クラウドコンピューティング」という言葉を使い始めました。
シュミット氏は、「クライアント」と「サーバー」の組み合わせは自由無限で、雲のように巨大なインターネットにアクセスすれば、恵の雨が享受できる時代になったと語ったそうです。

「クライアント・サーバー」と「クラウド」はどう違うのか?
ちょっと乱暴に言うと、「クライアント・サーバー」は自社のサーバーで、自社の人しか使えませんが、「クラウド」は他社のサーバーで、無料だったり、有料で一定の期間借りられ、みんなが使えるという違いがあります。

他社のサーバーを借りるというと、1台を何社かで使う「レンタルサーバー」のイメージがあると思いますが、「クラウド」のサーバーは、たとえば、グーグルは、アメリカだけでなく世界中に大量のサーバーを置いていて、まさに雲のように世界中に散っています。そして、これらの大量のサーバーのそれぞれに処理を分担させ、巨大なサーバーとして使うことが可能です。

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日経ビジネスオンライン「今こそイノベーション特集」の「今実現中の技術」の一番目に「クラウド・コンピューティング」が「持たずに使う」コンピュータ資源として掲載されています。
そこには、ワシントン・ポストが、必要な情報を効率的に検索するための処理に、アマゾンのサーバーを借りた話が載っています。サーバー200台に相当する処理能力を使い、9時間で処理が完了して、144ドル62セントだったと書いてあります。

ここで「サーバー200台の処理能力」ではなく、「サーバー200台に相当する処理能力」と書いてあるところがミソです。これは、200台のサーバーが動いているのではなくて、もっと多くのサーバーが、それぞれ空いている時間、空いている処理能力(余力)を提供しているということです。
アマゾンは膨大な数のサーバーを持っていますが、常に全部を動かしているわけではないので、余力を他社に有料で貸し出す「クラウド・サービス」を始めたというわけです。

企業は、必要に応じて「クラウド・サービス」を利用すれば、自社でサーバーを購入、運用しなくて済むので、その分のコストがかかりません。

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個人だと、たとえば、インターネットのブラウザからアクセスする「Webメール(ウェブメール)」を使えば、どのPCや携帯からもメールを見ることができます。また、同様に「オンラインストレージ」(インターネット経由で、データを保存できるサービス)を使えば、これまた、どのPCや、サービスによっては携帯からもデータを取り出すことができます。

かつて、PCのスケジュールを、パームトップなどの携帯情報端末(PDA パーソナルデジタルアシスタント)にも保存して持ち歩いていましたが、これだと、手動で、随時、PCと同期化する(同じ内容にする)必要があり、PCかパームのどちらかをメインにしておかないと、どっちのデータが新しかったのか分からなくなり、2重になったり、消したりすることがよくありました。
「クラウド」なら、同じひとつのサーバーに入っているものを取り出すだけなので、同期化は不要ですし、たとえ自分のPCや携帯が壊れても、人のPCや携帯、インターネットカフェのPCから、メールを見たり、データが取り出せるというメリットがあります。

また、クラウドコンピューティングで提供しているアプリケーション(ワープロ、計算、スケジュール管理、その他のプログラム)を使えば、個人でも企業でも、それぞれのPCにいろんなアプリケーションを購入し、インストールしたり、バージョンアップしなくてもいいので、そのコストも浮きます。

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クラウドコンピューティングのデメリットとしては、次のようなことが挙げられます。

たとえば、ネットがつながらないと、当然、メールもデータも、アプリケーションも使えません。

また、ひとつのサーバーにデータを置いているので、何らかのトラブルでデータが消えたら、なくなってしまいます。バックアップ(=データの複製)をとっておくと安心です。
また、インターネットには皆がアクセスできるので、セキュリティの問題もあります。よくも悪くも、ID、パスワードが分かれば、誰でもデータを利用できます。

ところで、以前、「ユビキタスコンピューティング」という言葉が流行りました。
これは、「いつでも、どこでも、何でも、誰でも」コンピュータネットワークなどのネットワークにつながることで、さまざまな恩恵を受けるというものでした。
「クラウドコンピューティング」と似ていますが、違うのは、「ユビキタス」のネットワークはインターネットに限らないというところです。

いずれにせよ、世界中のコンピュータネットワークという大規模なインフラを、コストをかけずに使えるということは、とくに個人や中小・零細企業にとっては画期的で、価値あることだと思います。
さらに、コンピュータを利用したネットワークは進化していくでしょう。