「叩き活」「責め活」案件がチラホラ出てきた今年

「〇活」という言葉があります。
就活、婚活、妊活、終活、推し活……。
就職のための活動、結婚のための活動、妊娠のための活動、人生の終わりのための活動、推し(自分が気に入っている人)を応援する活動など、これらは本人が意識しておもに自分のために行なう活動です。

これらとは同列にはできませんが、誰かを叩く活動、責める活動、「叩き活」「責め活」ともいえる案件が、今年はチラホラ見られました。

私はパワハラの相談を受けているのですが、パワハラを受けた人からの相談ではなく、パワハラを行なった人に対する改善の相談が企業から入ります。
これに対して、「叩き活」「責め活」の案件は、叩かれている人、責められている人からの相談ですが、その人たちはリーダー的立場で、下の立場の人たちやリーダー仲間から、叩かれたり責められたりしているのです。

青天の霹靂!

たとえば、ある中間管理職の男性は、部署のミーティングで突然、部下たちから「これまで思っていたことですが」と、非難されるような発言を次々に浴びせられたそうです。
その人にとっては、まさに「青天の霹靂」だったと言います。
「私は上の立場から命令するトップダウンタイプ(支配型)ではなく、サーバントリーダータイプ(支援型)で、皆のことを配慮して調整してきました」ということでした。

しかしながら、それが裏目に出たのか、非難の内容は、指示が曖昧、決めたことが変わる、ミーティングが不定期、他部署に気を遣っているなど。
「それぞれの要望を聞いて、皆に無理が行かないよう柔軟に対応してきたつもりなのに」と、いきなり叩かれたことにかなりのショックを受けている様子でした。

この男性が、聞く耳がないタイプだったら、部下が要望をなかなか言えずに、溜まった気持ちを爆発させたと考えられますが、本人からすると「いくらでも聞く耳はあったのだから、その時々に『これが分からない』とか『こうして欲しい』と言ってくれればよかったのに。質問はないか、確認もしていたのに」と言います。

―――

別の会社の役職の男性は、幹部会で、ある幹部の男性から、やはりいきなり非難されたとのことです。
こちらは「おたくの部署の人から聞いたが」と、仕事の進め方を非難され、「うちの部署でも迷惑を被っている」と、これまでまったく聞いていなかったことを突然言われたとのことです。
こちらも、会議の場でいきなり責められて人間不信になっているとのことでした。

奈落の底に突き落とされる

本人たちからすると、昨日まで仲間としてやってきた人たち、部下や同僚からいきなり叩かれたり、責められたりして、奈落の底に突き落とされた気持ちです。

リーダー向けの注意として「部下を叱る場合、人前で吊るし上げのように叱るのはやめましょう」というのがありますが、リーダーであっても、いきなり吊るし上げられると打撃を受けます。

前者のケースで、部下は何らかのシグナルを出していたのかもしれませんが、本人には伝わっていませんでした。
また、後者のケースも、いきなり幹部会で非難せず、個人的に伝えられたはずですが、そうせずに皆の集まる場でいきなり非難したのは、むしろ打撃を与えてやろうという意図があったのではないかとも思えます。

これらとはまた別に、リーダーが別のリーダーたちから責められて、結局、退職するに至ったケースもあります。

叩くことで自信を取り戻す

以前から、SNSで有名人などを皆で叩くケースはあり、これは、自分たちの「正義」に反する言動をとる者は叩いてもよい、叩いたほうがよいという心理があります。

先の人たちも、部下や同僚の何らかの「正義」に反していたのかもしれませんが、身近な相手なのにコミュニケーションを取らずに(と、叩かれた人たちは思っています)、いきなり叩く行動に出ているのが新しい傾向かもしれません。

攻撃的な行動は、自己防衛の気持ちが強く働くことから起こります。本当は自分を認めてもらいたく、相手から否定されてプライドが傷つくのが怖い。自信がなく、弱い。そんな自分を悟られないように、先に叩く。
とくに、「正義」のために皆で叩き、相手がダメージを受けていると、自分たちが勝ったように思え、自信が取り戻せます。

仲間として各人が力を発揮できる組織、心理的安全性のある組織をともに創ることが出来る相手を叩いたり責めたりする、「叩き活」「責め活」は、なんとも残念な感じがします。