長崎大学リレー講座2014 黒田玲子氏
長崎大学リレー講座、第3回目は、黒田玲子氏です。
<セミナーデータ>
タイトル:長崎大学リレー講座2014 グローバルに活躍する力
第3回 東京理科大学教授 東京大学名誉教授 国連科学諮問委員 黒田玲子氏
「研究者に求められる現代の教養」
日 時:2014年11月18日(火)19:00~20:30
場 所:長崎大学
主 催:長崎大学 共催:長崎新聞社
講演内容ダイジェスト
■黒田氏がされている研究
「カイロモルフォロジー」Chiromorphology=左右が違う形態
「キラル(キラリティ)」chiral(左右非対称)+「モルフォロジー」morphology(形態)
=右と左の区別がある性質(例:手、足、靴)
これに対して、右と左の区別がないものを、「アキラル」という(例:靴下、動物の外観)
私たちの体内は、心臓が左など、左右が違う形態である。
そして、生物はすべて、DNAレベルで、左右一方の分子(糖とアミノ酸)からできている=「ホモキラル」
この性質が、薬の副作用や、効き方の違いにもつながっている。アルツハイマー病などの医療や、味や香りなどの食品分野にも関わっている。
研究は、分子、超分子、結晶の構築などの「化学」分野と、遺伝子、生物個体の構築などの「生物」分野の両方を対象にしている。
キラリティ(左右非対称)に着目し、生命の謎を解き明かし、医療、創薬などにも役立てる。
■研究者に求められる教養、今の世の中で重要なこと
20世紀 分析によって、共通原理、根本原理を明らかにしてきた
21世紀 科学技術は飛躍的に発達している。課題も山積み
多様性の説明、複雑系の説明をするのに、知識を融合、統合して考える必要がある
研究者は、基礎知識を持ち、本質を理解し、科学的なものの考え方をしてほしい。
情報を、鵜呑みにせず、クリティカルシンキング(批判思考)で読み取ることが大事。
池上彰さんの文章を紹介:
同じ松坂大輔選手の試合でも、新聞各紙(日本)で、その印象が異なる。
また、アメリカの記事は別のことを書いているという内容。
記事には数字(観客数)が書かれているが、その意味がわからないと、違う印象になってしまう(球場の規模がわからないと、混んでいたのか、ガラガラだったのか、間違った解釈をしてしまう)。
科学者は、科学技術のプラス面とマイナス面を意識し、責任感と倫理観をもつ必要がある。
若い研究者は、一生かけるに値するものを見つけて、視野を広げ、チャレンジしてほしい。世界の潮流を知り、時代認識をもち、ビジョンをもってほしい。
一生懸命やっていれば、いつか道は開ける。