長崎大学リレー講座2014 田中優子氏

最終回(第6回)は、法政大学総長の田中優子氏でした。

<セミナーデータ>
タイトル:長崎大学リレー講座2014 グローバルに活躍する力
第6回 法政大学総長 田中優子氏「今求められる学びの力」
日 時:2014年12月8日(月)19:00~20:30
場 所:長崎大学
主 催:長崎大学 共催:長崎新聞社

■田中優子氏の講演内容

法政大学は、1880年に、3人の20代の無名の若者が作った学校。20代の若者が学校を作るなど考えられないかもしれないが、マララ・コスフザイさんは、11歳から活動を始め、17歳でノーベル賞を受賞している。
私たちはすっかり「教えるのは大人で、教えられるのは若者」という考えになっているが、決してそうではない。
知識は世界をつなげる。知識は差別を乗り越える。
そう考えると、20代の若者が、学校を作るのはおかしくない。

知識基盤社会と大学の役割

現代は「知識基盤社会」と言われている。資源(天然資源、労働資源)があっても、知識がないとうまくまわせない。
知識に国境はなく、グローバル化が進む。パラダイムの転換と、広い知識、柔軟な思考力が求められる。

私たちは、年齢にかかわらず学ぶ必要がある。たとえば、新しい技術が生まれ、それを勉強することが必要だ。その場合、大学に戻って、あるいは、大学院で勉強することになり、大学はいろいろな年齢の人がいるところになる。

そして、知識の内容そのものより、学び方、学習意欲、継続力、生涯学習がより重要となる。効率よく働き、時間を作り、さらに学習する生活が必要だ。

教師の役割の変化

教師は、学ぶ人を動機づけ、励まし、相談を受けることが必要になってきている。
偉そうに権威を振りかざすのではなく、学ぶ生涯を送るための手助けをする人であることが、教師に求められる。

よい会社の基準の変化

よい会社の基準も変わりつつある。
大企業、有名企業が決してよい会社ではない。
24時間働かせる会社ではなく、一人ひとりがよい人生を送れるようにサポートする会社、働く人と企業とが連携できる会社がよい会社。無名な会社、小さな会社で、グローバル展開していたりする。
会社選びは、親や世間の声に従うのではなく、本人が自分で調べて、決断することが必要だ。

学びの力に必要な条件

学びの力に必要な条件は、「グローバル化」「リーダーシップ教育」「日本学」。

法政大学は、今年度のスーパーグローバル大学等事業に採択されたが、その構想名は「課題解決先進国日本からサステイナブル社会を構想するグローバル大学の創成」。

日本はこれまで世界に先駆けて、公害、原子力、少子高齢化という課題を抱え、解決してきている。サステイナブルとは持続可能という意味。社会全体と理想を共有することで、教育の使命が果たせる。

「リーダーシップ」とは、丁寧に耳を傾けてすすめていく協同的な方法をもって調整し、最終的に決断して責任をとること。
異なる個性を見極め、全体を構築する「コーディネーター・タイプ」、あいだに入って交渉、調整する「ネゴシエイター・タイプ」、集団でアイデアを出しもっともよい選択肢を決定する「ミツバチ・タイプ」がある。

日本学は、海外で仕事をするときも、日本の方法を受け継ぎ、技術や発想を次の世代に残すこと。巻き込まれるのではなく、多くの情報を得ながら自分のものにしていくことが大事だ。