「頑張っている」人に大事な仕事は頼みたくない

今年ももう2月になってしまいました。しかも11日。光陰矢のごとし。
とくに、「わんこそば」のように次々に降ってくる仕事をこなしていると、あっという間に時間が過ぎます。

これまでを振り返ったときに、いつも感じるのは、月日が瞬く間に過ぎ去っている、竜宮城で働いているのではないか、ということです。
ちなみに、竜宮城の3年は地上では700年とのことですから、地上での10年は竜宮城では15、16日、地上での20年は竜宮城では1カ月になります。

まあ、そこまで速くはないのかもしれませんが、しかしながら、長いようで短い人生、やはり瞬く間に過ぎ去ってしまうのだろう、と思います。


さてさて、アエラは相変わらず「幸福」にこだわっているようです。
「過渡期」の世の中、「幸福観」も「過渡期」にあるということでしょう。

2月8日号では、「40代男性正社員の不安」という企画が組まれ、「本誌1月18日号の1200人調査では『幸福度』が低いと出た。『40代、男、正社員』。何が彼らを不安にさせるのか。」とあります。

また、2月15日号は、「がんばり世代 38歳の浮遊」という企画で、「自立している。楽しい。でもさみしい」という38歳の女性たちを取り上げています。

「40代男性正社員の不安」は、これまで待遇もよく、プライドも高い層に、主に不況の影響で陰りが見えてきたという内容です。まだ恵まれている状態ではあるが、憂鬱という感じです。

「がんばり世代 38歳の浮遊」は、幸せになるために、仕事も恋愛も頑張ってきたのに、それなりの成果が得られず、泣けてくる。必死でやってきた、こんなはずではなかった、と壁に当たっているという内容です。

アエラは、「努力で幸せになれますか」という、勝間和代さんと香山リカさんの対談をはじめとして「努力」と「幸せ」が好きなようです。

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私は、「幸せ」にはあまり興味がないというのは前に書きましたが、「努力」「頑張り」を重んじるのも好きではありません。「努力」をしているあいだ、正確にいうと、本人が「努力をしている」「頑張っている」と思っているあいだは、たいしたことはできないと思うからです。

本人が、「努力をしている」「頑張っている」と思っている状態は、本人にとって、本当は「したくない」けれど、「せねばならない」ので、嫌だけど、無理して、耐えてやっている状態だと思います。

そういう「頑張っている」状態のとき、本人は「こんなに頑張っている」「死ぬ気でやっている」と思っていますし、そういう発言をしますが、傍から見ると、たいしたことはない場合が多いように感じます。

たとえて言うと、50キロの荷物を、命がけで頑張らないと持てない場合、100キロの荷物はとても持てません。
けれども、50キロの荷物を笑いながら軽々と持てる場合、100キロの荷物も持てる可能性があります。

ある意味、「頑張っている」状態はちっとも自慢にならない。自分に精一杯で、周囲を見る余裕もなく、人を助けたりもできない。「頑張っている」状態を脱却して、寝てても出来るぐらいになれば、余裕で人も助けられるでしょう。

そういう意味で、「頑張っている」人には大事な仕事は頼みたくない。
たとえば、手術をしてくれる医者が、本当は「したくない」けれど、「せねばならない」ので、嫌だけど、無理して、死ぬ気で頑張って手術をするつもりですということなら、別の人に変わって欲しいと思うでしょう。その手術が得意で、馴れていて、楽々出来るプロに頼みたいです。

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最初は「頑張っている」「必死でやっている」状態でも、続けているうちに、コツがわかり、だんだん面白くなってくる、だんだんレベルが上がってきて、楽しくなってくる。「せねばならない」から「したい」になり、わくわくしてくる。熱中して、経験を積み重ねているうちに、力がついてくると思います。

そうなるまで黙々とやり続けず、いつまでも「頑張っているのに成果が得られない」「必死でやっているのに、こんなはずではなかった」と言っているのは、やり方が悪いか、向いていないか、そこまで本気でやる気はないのかもしれません。別のことをやったほうがいいと思います。

そして、業績のため、ノルマのため、お金を稼ぐために、嫌なことにも耐えて、「こんなに頑張っている」と、連日恨みがましく思ったり、言っているとき、そんな「努力」では、幸せになれるはずがないと感じます。

働いている側は、嫌なことに耐えることでお金を得ていると思っているかもしれませんが、経営側からすると、そこには何の価値もありません。
経営側は、働いている人が嫌だろうが、楽しかろうが、売上や利益、その他の成果に結びつかないと意味はない。楽しんで、力を発揮して、売上や利益、成果が上がるのなら、そうしてもらったほうがよいと思っているはずです。

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本田健さんが、「大好きなことをやらなきゃ、幸せに成功なんてできないよ」という富豪の言葉が人生を変えた、と著書「大好きなことをしてお金持ちになる」に書いていますが、私もこの富豪の言葉に同感です。
とくに好きでもなく、得意でもないことを、「こんなに頑張っているのに」などと言いながらやっているときは、精神的にも苦痛だし、仕事の効率も悪いと思います。

基本的にはやりたいことをやって、ひたすら面白く、楽しい状態をキープできるといいと思います。

「面白い」という言葉に関しては、かつての上司で役員だった人が言った言葉が印象深く記憶に残っています。
それは、「面白い」の語源は、「面(顔)白し」で、夜が明けると、顔が白くはっきり見え、誰だか分かるようになる。これまで闇の中で見えなかったものが見えてきて、目の前が開ける。見えるようになる、分かるようになれば、面白い。
「面白い」の逆は「たそがれ」で、薄暗くなってくると、「たそ、彼?」と、彼が誰だか分からなくなってくる、まわりが見えなくなる、分からなくなる状態は、終わりに近づいている。
仕事、とくに新規事業は、やっていて面白くないとダメだということでした。
この人は、ドラッカーの言葉などもよく紹介していて、なるほどと思ったものでした。

個人的には、「未来の幸福」より「今の面白さ」のほうがよい。「頑張っている」状態を脱却して、「楽しんでいる」状態でありたいと思います。
そして、今は、「面白さ」が足りない、「わんこそば」に「頑張っている」ような気がします。