職場の「不機嫌な人」にどう対応する?~「不機嫌の盾と矛」を使うフキハラ

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それ、ハラスメントかもしれません

職場に、こんな人いませんか?

  • 部下の報告にため息をつくが、何も言わない上司
  • 部下が「これでいいですか?」と聞いても、いいとも悪いとも言わない上司
  • 上司からの仕事の依頼に、自分の席で資料を叩きつけるように置いて舌打ちする部下
  • 「お疲れ様」と言っても、チラッと見て無視する部下

不機嫌な態度で、明らかに不満そうですが、何か言うわけではありません。
まわりの空気が重くなります。

じつは今、相談が増えています

このような、不機嫌な態度で相手に圧力をかける「不機嫌ハラスメント」、通称「フキハラ」に関する質問、相談を受ける機会が増えています。

アンガーマネジメントやパワハラ防止の研修だけでなく、コミュニケーション、リーダーシップ、メンタルヘルス、人権・コンプライアンスがテーマの研修でも、職場の「不機嫌な人」にどう対応すればよいのかという質問をいただくことがあります。

そのため、パワーポイントのなかに、対応方法を入れていたりもします。

上司の不機嫌な態度を「ハラスメント」と見なしていいのか、人事担当者は困っています。

また、不機嫌な部下の場合、立場上、ハラスメントとは言えなくても、対応に悩む上司が増えています。

自分の弱さを「不機嫌の盾」で守り、「不機嫌の矛」で攻める行動

フキハラは、誰かの発言などに、嫌な顔をする、ため息をつく、舌打ちをする、返事をしないなどで、本人は幼児のように無意識に、むしろ防衛的にやっていることが少なくありません。

上司であれば、部下に不満があれば、本来なら「〇〇さん、この書類、ここを修正してください」などと伝えればいいわけです。

しかしながら、人に言葉で伝える勇気はないのです。
「えっ、修正ですか?」「それ、私がやらなきゃいけないんですか?」などと、不機嫌に言い返されたらどうしようという不安が、内心あったりします。

そもそも人に何かを頼んだり、相手から反論された場合に説明するのは苦手で、うまく対応できずプライドが傷つくことを恐れていたりもします。

そこで、“攻撃は最大の防御”作戦を遂行します。
その際、“比較的安全な”「不機嫌な態度」を使うことで、自分の弱さやプライドを守りながら、不満を伝え、相手を動かそうとしているのです。

“比較的安全な”というのは、2つあって、ひとつは「要望を伝えないので、拒否されるリスクが少ない」という意味です。もうひとつは、暴言を吐いたり、暴力を振るったりするわけではないので、「これはパワハラではない」「問題になりにくい」から安全という意味です。

相手が「すみません」と謝ったり、顔色をうかがったりなど、反応すると、不機嫌で人を動かせるという成功体験になり、これは有効だと、何度も繰り返すことになります。

フキハラとは、言葉で伝える勇気がない人が、自分の弱さを「不機嫌の盾」で守りながら、「不機嫌の矛」で攻め、人を自分の思い通りに動かそうとする行動なのです。

不機嫌な上司に対する部下の対応

部下の対応は、結論から言うと、「自分のせいだと思わない・反応しない・記録する」です。

部下は、上司がそんな態度をとるのは「自分のせいかもしれない」と思いがちですが、そう思う必要はありません。

上司は、具体的に「こうしてください」と指示を出す必要があります。それをしないのは、上司に責任があります。

上司がため息をついたり、舌打ちをしたりしても、何も反応せず、普通に接しましょう
「すみません」と謝ったり、「怒ってますか?」と聞いたり、顔色をうかがったり、機嫌を取ろうとする必要はありません。上司の機嫌は、部下の責任ではないのです。

不機嫌な態度で、心理的安全性を損なったり、信頼を失ったりするのは相手(上司)であり、部下には関係ありません。

とはいえ、部下はメンタル的に打撃を受け、仕事に影響したりもするので、「いつ・どういうとき・どんな態度だったか」記録は残しておきましょう。

そして、自分を守ることを考えましょう。
上司の態度が一時的なものなら、上司がストレスや心身の不調で、自分をコントロールできなくなっていた可能性があり、気にするのはやめましょう。

続くようなら、パワハラの相談窓口(会社内外)に相談しましょう。
場合によっては、異動希望を出したり、転職を考えたほうがよいかもしれません。

人事担当者の対応

不機嫌な態度をとるのが、上司の場合、「舌打ち、ため息、無視」は、威圧的な態度として、パワハラの6類型の「精神的な攻撃」となることがあります。

また、「無視、業務に必要なことを伝えない、必要な指示・決裁などを行なわない」のは、6類型の「人間関係からの切り離し」「過大な要求」になる恐れがあります。

人事担当者は、「パワハラに該当するかも」という認識をもって、上司の態度が周囲の人にどういう影響を与えているか、チームの心理的安全性が損なわれていないか、メンバーのメンタルヘルスに悪影響を与えていないか、上司が指示を与えないことで、仕事の生産性が下がっていないかなどを調べ、対応してください。

不機嫌な部下に対する上司の対応

一方、不機嫌な態度をとるのが部下の場合、上司の対応は、先ほどの部下の対応とは異なります。

上司の対応は、結論から言うと、「責めない・心配ベースで声をかける・フラットな気持ちで聞く」です。

部下は、不満があっても一般的に上司には言いにくいです。

もちろん、部下でも「〇〇の仕事とこれ、優先順位的にはどちらが先でしょうか?」などと聞ける人もいますが、部下の性格や、職場環境的にそれが難しい(と部下が感じる)こともあります。

その際、不機嫌アピールをするのは、不満を伝えたい気持ちが強いか、その部下のこれまでの経験・環境にもよります。つまり、これまで不機嫌アピールが有効に働いてきたため、それを繰り返しているということです。
そして、不機嫌な態度の裏には、「困りごと」「SOS」が隠れていることがあります。

部下には、「心配している」「気にかけている」という対応をとります。
決して、NGの言い方例のように、相手を責める言い方をしてはいけません。責めれば、部下は、自分を守るために心を閉ざし、望ましくない方向に行く可能性があるからです。

【NGの言い方例】

「〇〇さん、なんでそんな態度とるの。言いたいことがあれば言いなさいよ」
「〇〇さん、最近、態度悪いよ。何か不満があるんなら、言えば」
「〇〇さん、そんな態度はよくないよ。そんな大人気ない態度は改めたほうがいい」

まずは、下記の伝え方をしてみます。
なるべく他の人に聞こえないよう本人に言います。

【OKの言い方例】

「〇〇さん、最近、ストレスを抱えているように見えて心配なんだけど。実際どう?」
「〇〇さん、最近、何か困っていること、悩んでいることある? いつもと違う感じで、心配なんだ。もしよかったら、教えてもらえるかな?」
「〇〇さん、最近、いつもと違う感じだから心配してる。私ができることがあるかもしれないので、言える範囲で言ってもらえるかな?」

OKの言い方をしても、すぐに、「じつは」と話してくれるかどうかはわかりません。相手は用心、警戒し、「別に何もありません」などと言う可能性があります。
しばらく相手の様子を観察し、「心配している」「気にかけている」という声掛けを続けます。

相手の話を聞く際には、「相手が悪い」と決めつけず、フラットな気持ちで聞きます。
もしかしたら、相手が不満な態度をとったのは、上司の指示の仕方や何かに対して、誤解も含め、問題があったのかもしれません。

話をフラットな気持ちで聞けば、「ああ、なるほど、こういうふうに受けとったんだ」とか「確かに〇〇さんにはそうだったかも」と、気づき、部下の心理、SOSがわかることがあります。

上司の立場の人は、「いろいろな部下がいて、自分とは違う考え方、価値観の人もいて当然」「いずれにせよ、部下たちが安心して働け、力を発揮してもらうのが、上司である自分の任務」という気持ちをもち、焦らずに対応するとよいでしょう。

もちろん、なかには、自分の手に余る部下もいます。上司も感情を持った一人の人間なので、その際は、人事担当者などに相談したほうがよいでしょう。

第三者が入ったほうがうまくいくこともあるので、上司も自分の力だけでどうにかしようとして疲弊しないようにしましょう。