私たちは消費税を誤解している? ―― 仕組みを整理してみた

今回の衆議院選挙では「消費税の減税・廃止」をほとんどの政党が掲げています。
それだけ、消費税は、私たちの生活にとって、いま大きなテーマになっていると思います。
一方で、消費税については、広く信じられている説明と、実際の制度の仕組みとの間に、少なからずズレがあるとも感じています。
たとえば2月4日の「長崎新聞」の記事「消費税減税『目の前は楽になる』けど」では、消費税は社会保障を支えている財源だから減税は不安という声が紹介されていました。
こうした「社会保障を支える財源」「減額する分の財源は?」という見方は多くの人が共有している感覚かもしれません。けれども、その感覚は、正しい理解に基づいているものなのでしょうか?
そこで今回は、消費税について何が誤解されやすく、どのような事実があるのかを、「消費税最大の闇」「消費税の大ウソ」(三橋貴明著)の本を参考に整理してみました。
「消費税の大ウソ」の裏表紙には、「消費税は消費者が支払っているというウソ」「消費税は預かり金というウソ」「増税しなければギリシャのようになるというウソ」「消費税は社会保障の財源というウソ」と書かれています。
もしこれら、「消費税は消費者が支払っている」以下が事実と異なるとしたら、私たちが前提としている理解は、大きく見直す必要があるかもしれません。
消費税は、消費者から預かったお金ではない
まず、消費税は、「入湯税(温泉を利用する客が支払う税金)」のような、消費者から預かったお金を事業者が納める「間接税」ではありません。
「間接税」とは、税金を課せられる人と支払う人が異なる税金です。
入湯税は、温泉を利用する客に課せられる税金で、たとえば、150円だとすると、温泉事業者がそれを預かり、預かった分を全額(150円)納税します。
消費税は、事業者に課せられている「直接税」です。
「直接税」とは、税金を課せられる人と支払う人が同じ税金という意味です。
消費税は、事業者の売上に課せられる直接税で、じつは消費者は関係ありません。
「えっ、レシートに『消費税10%』と書いてあるけど?」と思われるかもしれませんが、これは、事業者の会計処理用です。会社の経費で買った場合、経理の人の役に立ちます。
ですので、たとえば、お店で110円の商品を買って、もらったレシートに消費税10円と書いてあっても、消費者が10円の税金を支払ったわけでも、お店の人が10円を納税するわけでもありません。
会計上、「預かり金」と同様の処理をしますが、消費税は「預かり金」でも「間接税」でもないことが、政府広報や裁判結果で明らかになっています。
儲かっている企業の支払いを減らし、赤字企業にも支払ってもらう仕組み
消費税は、導入前の段階では「第二法人税」「売上税」と言われていました。
「法人税」は、事業者の利益(儲け)にかかる税金です。利益がたくさん出た場合、税金をたくさん支払うよりも、社員にボーナスを出したり、設備投資に回したりして、利益を少なくして、税金を減らしたほうがよいと考える事業者も少なくありません。
これを防ぐため、粗利(売上-売上原価)にかけるようにしたのが「消費税」です。最終的には赤字でも、粗利がプラスなら支払う必要があります。
ちなみに、正社員やアルバイトの人件費は売上原価になりませんが、派遣社員、契約社員は売上原価となるため、後者(非正規)を多く雇うことにもつながっています。
国は、これまで法人税を引き下げる分、消費税を上げてきました。
これは、“儲かっている企業にたくさん支払ってもらい、儲かっていない企業からは支払ってもらわない仕組み”から、“儲かっている企業の支払いを減らし、儲かっていない企業にも支払ってもらう仕組み”への変更です。
消費税は、消費にはかかっておらず、事業者の売上、粗利にかかるものなので、「第二法人税」「売上税」のほうが正しく、「消費税」という名前は合っていません。
けれども、当初、「売上税」という名前を出していた時に、企業経営者たちの猛反発で頓挫した経緯があります。
そのため、アメリカの間接税「小売り売上税」と勘違いする名前に変えたのではないかと、三橋氏は書いています。
アメリカの「小売り売上税」は、消費者が支払った税金を、小売業者が預かり金として納税する、先ほど挙げた「入湯税」と同じ間接税です。
旧大蔵省(現財務省)などが、消費者が支払っていると誤解を生む「消費税」という名称を使い、「預かり金」と同じ会計処理にし、「消費税は預かり金的性格を有する税金です」と、預かり金と混同する説明をすることにより、導入・継続・増税をスムーズにしているのです。
輸出企業にとっては、免税+輸出補助金の効果
この消費税を提案したのは、じつは経団連です。
儲かっている企業の税金を減らすことに加え、次のメリットがあるからです。
それは何かというと、輸出企業は、消費税が免除され、逆に、還付されるという仕組みです。
消費税は、「売上分の消費税-仕入れ分の消費税」ですが、輸出品に関しては、売上分の消費税は免税です。
国内で、110万円分売って、その仕入れ代が55万円だとしたら、(110×10/110)-(55×10/110)=5万円が消費税ですが、海外で、110万円売って、仕入れ代が55万円だとしたら、0-(55×10/110)=-5万円で、5万円が還付される仕組みです。
すなわち、輸出企業にとっては、税金は免除され「輸出補助金」を受け取るのと同じ効果になります。さらに、消費税率が上がるほど、還付金の額が大きくなるため、増税を推進させることになります。
消費税の税収は、毎年33兆円で、このうち9兆円を輸出企業に還付しています。
2023年度にトヨタ自動車が還付を受けた輸出還付金の推定額は6102億円など、自動車産業は巨額の還付を受けています。
自動車以外でも、たとえば、キヤノンが719億円、任天堂が266億円の推定額です。
ちなみに、アメリカのトランプ大統領は、日本の「輸出戻し税」を、「リファンド(還付)」ではなく、「リベート(補助金)」と呼び、得をしていると問題視していました。
赤字企業にも支払ってもらえる安定的な財源
なお、インボイス制度導入による税収は、2000億円と考えられており、33兆円からすると、わざわざ導入しなくてもよいぐらい少額です。
インボイス制度のため、企業は、会計上、大幅な手間を被っています。
税収的にはメリットが少ないインボイス制度を導入した背景には、輸出企業の仕入れ先に免税業者が含まれていれば、還付金が実際よりも多額になり、WTO違反になるためではないかと、三橋氏は書いています。
「WTO違反」とは、WTO(世界貿易機関)の協定(国際ルール)に関する違反です。
企業の手間や中小企業の負担よりも、輸出企業が国際ルール違反にならず、安心して「輸出補助金」を受け取れることを優先させているともいえるでしょう。
法人税率を下げて、儲かっている大企業がたくさん支払っていた税金を減らし、さらに、輸出企業には補助金を出す。その財源として「消費税」という形で、たとえ赤字であっても、中小企業、個人事業主にも負担してもらうというわけです。
消費税が「安定的な財源」と言われるのは、法人税では負担してもらえない、赤字の事業者にも負担してもらえるからです。けれども、赤字の事業者にまで負担させると、倒産し、雇用が失われたりもします。
そこで、負担を減らすため、価格の値上げができる企業は、価格に反映させます。また、人件費などを減らします。結果的に、消費者や労働者に負担が行きます。
消費者は、消費税という税金を負担しているわけではなく、値上げ分の価格を負担し、労働者は賃金の減額を負担しているのです。
そういう意味で、消費税が減税、廃止されて、企業の負担が減れば、消費者や労働者の負担も軽くなる可能性があります。
ギリシャと日本の事情はまったく異なる
消費税は、わざわざ誤解を生む仕組みにしているため、一般の人はもちろん、インフルエンサーや政府の人も事実と異なることを信じていたりします。
増税にあたって、政府(当時の首相)は、財務省に「消費税を増税しないと、ギリシャのように財政破綻する」と説得されたようです。
けれども、ギリシャ国債は「自国通貨建て」ではなく「ユーロ建て」だったため、ギリシャ中央銀行に買い取らせることが出来なかったのに対し、日本国債は「日本円建て」であり、日本銀行に買い取らせることができ、破綻はしにくいのです。
たとえると、ギリシャは他人にお金を借りているが、日本は家族にお金を借りているようなものです。日本は急に返せなくなっても破綻する可能性は低いです。借金が増えすぎると、家族が困ることもありますが、一方で、家族から借りたお金を家族のために適切に使うと、家族の生活がよくなったりもします。
つまり、増税して、国民の負担を増やすよりも、国債を国民のために使って、国民の生活をよくするほうがベターなのです。
社会保障は社会保険料、国債などで賄われている
さらに、「消費税は社会保障の財源」というのも誤解を生みやすい表現です。
社会保障の財源は、6割が社会保険料、被保険者つまり労働者と、事業主つまり雇用先が支払っている保険料で、残りの3割が公費、1割が積立金の運用収入等です。
公費は、国債や各種税金ですが、各種税金は、消費税とは限りません。源泉所得税も多く含まれています。この源泉取得税は、労働者の給与などから天引きされているものです。
すなわち、社会保障の財源は、労働者と事業主が支払った社会保険料や税金、国債などで多くを賄われているため、「消費税を減額する分の財源はどうするんだ」と、まるで全額を消費税で賄っているかのような言い方をされる必要はないのです。
消費税が減税、廃止されると困るのは、還付金を失う輸出企業ですが、じつは、輸出企業は困りません。
たとえば、トヨタ自動車の2026年3月期の業績予想は上方修正され、売上高は5年連続で過去最高を更新し、50兆円になり、純利益は3兆5700億円になっているので、還付金など出す必要はないのです。
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税金の話は難しく、専門家の間でも意見が分かれます。
けれども、税金は私たちの生活に大きく関わっています。
消費税に関しては、誰にメリットがあり、誰に負担が及んでいるのか、どういう経緯で導入され、なぜその名称になったのか、まずは実際のところを知ること。そして、このままでいいのか、変えたほうがいいのか、声を上げていくことが大切だと思います。

