ビジネスを創っていく力
このところ「スタートアップ」という言葉を、周囲でよく耳にします。
福岡市が、国家戦略特区(創業特区)になり、起業家を輩出する「スタートアップ都市」宣言をしたことも関連しています。
この「start up(スタートアップ)」という英語は、始める、起動するという意味のため、単にビジネスを始める=創業という意味で使われたりもしますが、本来の意味は違います。
■スタートアップと、ベンチャー、スモールビジネス、創業はどう違うのか?
スタートアップは、アメリカでは、新しいビジネスモデルで急成長を狙うこと、すなわち、ドラッカーのいうイノベーション(顧客が既にもつ欲求を満足させるのではなく、新しい欲求を創り出し、社会・市場に変化をもたらすこと)を起こすこと。
ベンチャーは、アメリカでは、ベンチャー・キャピタルとは言っても、ベンチャー起業家という使い方はしないらしいのですが、投資家から資金を集めて、短期間で株式公開を目指すこと。集めた資金は、融資ではないので、返さなくてよいですが、急成長できるかどうかがカギ。ビジネスモデルが新しいかどうかは関係ありません。
スモールビジネスは、主に個人で始める小さなビジネス。ビジネスモデルが新しいかどうか、成長を目指すかどうかは関係ありません。
創業は、単に事業を始めるという意味。創業支援は、それを支援するということ。
■ビジネスを始めるということ
私は、会社員時代に、取材あるいはコンサルティングで、たくさんの経営者にお会いしたり、新規事業の立ち上げに携わったりしたのですが、今思うのは、会社員はあくまでも会社員で事業主ではないということ。
会社員のとき、自分が管理していた部門の年間予算(経費)は4億円で、今なら「4億円!」と思うのですが(笑)、当時は、社内の他部署と比べても決して多くはなく、他社の同じ部門と比べると、何分の一かの予算で、「それでよくやってるね」と言われてました。
この経費を使い、他部署とも連携してビジネスが成り立ち、それなりのお金が入ってきていたわけですが、この経験、ノウハウというのは、当然ですが、個人事業としてはほぼ使えない、別世界です。
人、物、金、情報がある会社と、まったくない個人事業は、何もかもが雲泥の差。大型船と手漕ぎボートぐらい違うのではないでしょうか。
そして、思うに、多くの人が、ゼロからビジネスを始めるというより、「自らビジネスを創っていくこと」を、学校でも、社会でも、全然学ぶ機会がないのに、そういった力を徐々に求められつつあるのが、いまの時代なのかなと思います。
以前、グラミン銀行のムハマド・ユヌス氏のお話を聞く機会があったのですが、「いまの社会では、自営業の環境ができていない」「自分の頭を使って、アイデアを出して、自分で雇用をつくる、セルフ・エンプロイメント、自営業をやるというのが、非常に困難だ。本当は、起業家としての才能をもっているはずなのに」とおっしゃっていました。
働く=就職する以外の発想がないし、それ以外の方法が困難。訓練の機会もなく、サポート体制も不十分。それにもかかわらず、先進国では、近年、就職の環境も、厳しくなってきているという話でした。
それで、最近、切に感じるのは「ビジネスを創っていく力」を身に着けるのは、たとえ就職するとしても、大事だということ。就職しても、事業を、経営者目線で考えられるようになるので。
そういう気持ちもあって、「ビジネスを創っていく力」をつけようということで、「ビジネスを創る『Bizクリ』ワークショップ」っていうのを考えました。
やり方としては、「火星ピザ」みたいに、ハイテンションになって、ドーパミンと共にクリエイティブな発想やイノベーション、知恵を出すという感じです。
参加の方みんなで、それぞれがビジネスでお金を得られるよう、知恵を出し合ったり、協力し合えればと思っています。
ムハマド・ユヌスさんが、「これからは、1人のリーダーが引っ張るのではなく、全員が小さなエンジンとして引っ張る」という話もされていましたが、この先どうなるかわからないと不安に怯えるよりも、望む未来を自分たちで創っていったほうがいいと、そんなことを思っています。