長崎大学リレー講座2014 金 美齢氏
<セミナーデータ>
タイトル:長崎大学リレー講座2014 グローバルに活躍する力
第1回 評論家 金 美齢氏「日本人であることの意義と意味」
日 時:2014年10月6日(月)19:00~20:30
場 所:長崎大学
主 催:長崎大学 共催:長崎新聞社
■金 美齢氏の講演内容
長崎に来たら、言おうと思っていた決め台詞があった。
それは、「長崎は今日も雨だった」。
しかし、長崎はよいお天気。
台風で飛行機が飛ぶかどうかわからなかったので、昨日の最終便で来たが、羽田は大変だった。日本は、場所で天気が違う。決して小さな国ではない。
今回のリレー講座のテーマは「グローバル」だが、グローバルな世の中だからこそ大切なのが、自分はどういう人間なのか、自分のもっている物語は何かということ。
グローバルの出発点は「私」。人だけでなく、地方、国家も同じ。
国際的な場では、どんなあなたが何を語るのかが大事。
私たちが政治家を選ぶときも、それをわかっていて語れる人を選ばないといけない。
私たちは、判断力、読解力を養っていかなければならない。そういった力のある人を、国の代表として選び、育て、応援して、グローバルな場に送り出さなければならない、オリンピックのように。
国際社会では鋭い質問もされる。本音での勝負。言わなくてはいけないことはきちんと伝えなければならない。
ジェスチャーでもいい。並んでいて割り込みがどんどん入る。言葉がわからない。そんなときは、肩をポンポンと叩いて、指を左右に振ればいい。
トイレに入っていて、ドアを叩かれる。「入ってます」を英語で何といえば正解かと悩んで何も言わないより、咳をするなり、声を出せばいい。いることがわかればいいのだから。
言葉は反射神経。「イエス」でも「ノー」でも言えばいい。わからないときは「イエス アンド ノー」と言っておく。
私が今、演壇ではなく、舞台の真ん中で話しているのは、背が低くて演壇では見えないから。
グローバルでは、自分の存在感を印象付けなければならないし、いつまでも決断がつかないのは、通用しない。
日本は小さな国ではない。面積は、200ぐらいの国のうち60位。空気がよくて、水がきれい。緑がきれい。
代々の日本人が大切に育ててきた国土。素晴らしいこの国を、私たちは誇りに思って、感謝しなければならない。さらによくして、次の世代に引き渡す。そうすることによって、国際社会でも胸を張って発言できる。
グローバルで心がけなければならないことは、自分を大切にすること。自分の故郷を愛すること。
自虐史観に関して
教育のせいやメディアのせいにしない。人のせいにしない。自分自身が考えることが大事。
自分の物語に関して
自分ができるひとつ上のランクを目指し続けること。
きちんと勉強して、本を読み、現場を知ることが大事。
素晴らしい本を読むことがとても大事。本は、誰かの経験を知ることができる。
今後の目標
80歳になってからも楽しいことがある。
88歳まで現役で働くと言ったら、息子が100のほうが区切りがいいと言った(笑)。
生涯現役であることが、私の目標。
(以上)
―――
長崎大学リレー講座は、今年で5年目。ということは、私が長崎に帰ってきてから5年目、早いですね~。
今年のリレー講座の講師は6人全員女性! 単に女性というだけでなく、「日本を引っ張る6人の女性リーダー」と、パンフレットに書いてあるように、「リーダー」というのがミソ。
「女性の力」ということに関しては、もう何十年も前から言われていますが、リーダー、とくにビジネス、政治経済における女性リーダーの割合は微々たるものです。
私が長崎に帰ってきてから感じたのは、さまざまな場所で女性が活躍しているものの、適正なリターンが得られていないケースが多いということ。これは、長崎に限らず、東京もそうですが、地方のほうがより顕著です。
長崎は男女比で、全国で一番女性が多い県であり、優秀な女性が地元に残っている。実力はある。けれども、十分に力を発揮し、適正なリターンを得られる仕組みになっていないように感じます。そして、そのことに気づいていない。それは、その状態が「普通」だから。
ある意味、「井の中の蛙」になっている。けれども、狭い世界で得意になっているのではなく、むしろ自己評価が低い。
既存の枠組み、狭い世界で、そこに組み込まれていない人が、成功するのは難しい。広い世界、新しい挑戦を評価してくれる世界で、成功するほうが簡単だったりします。
金美齢さんは、祖国を離れ、日本、そしてイギリスでも勝負し、認められた。
グローバルな時代、競争は激しくなっていますが、本当に力をもっている人が認められる機会も広がっていると思います。
ノーベル物理学賞を受賞した3氏のこれまでのいきさつでも、そんなことを感じます。
金美齢さんがおっしゃっているように、自分自身で考える、きちんと勉強して、本を読み、現場を知ることが大事だと思います。
そして、現場は「井の中」ではなく、「大海」でしょう。