わざわざ現地に行く、人に会う価値

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ネットの普及によるメリットやデメリットに関しては、多くの人がさまざまなことを語っているが、個人的には、ネットの普及は非常にありがたい。

物理的な距離を気にせず、タイムリーに情報が入ってくるし、発信することもできる。いる場所を問わず、仕事や買い物ができている。

テレビ会議システムのような、場所をつなげるシステムが、もっと高度化し、無料で、広い場所をつなげられるようになったら、さらに便利になると思う。これは、東京にいたときよりも、長崎に来てからよく思う。

ネット環境の高度化は、インフラとして重要だが、それと同時に、余裕があれば、実際に現地に足を運んだほうがよいと思う。

私は、イベント、セミナー、会合などがある場合は、できるかぎり現地に行くようにしている。時間とお金はかかるが、何に自分の時間とお金を使うかという意味で、優先度は高い。そもそも、さまざまな場所を訪れるのは好きだ。

その場の空気、臨場感、エネルギーが感じられるからだ。さらに、人とは実際に会ったほうがよりよいと思う。

雑誌社からの依頼で、お会いしたいことのない人を、スカイプや電話で取材することが多々ある。その依頼も、ネットで来て、編集者と会わないケースも少なくない。
仕事は滞りなくできるのだが、その後、何かの機会に実際に会って、話ができれば、なおよい。理解も深まるし、親近感が湧く。

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何よりも、行動範囲が広がると、視野も拡がる。
場所は、それぞれ特徴をもっている。違うスピード、エネルギー量だし、さまざまな価値観、考え方の人が生きている。その中に入ると、いろいろなことを感じることができる。

また、物理的に離れた場所でも、自分と近い価値観、考え方、エネルギー量の人がいたり、自分が好きな雰囲気の場所があったりもする。

以前、私が経営者向けのビジネス雑誌の編集長だったとき、アメリカのニュービジネスの雑誌の編集長の女性を取材したことがある。
通訳を通じた会話だったが、考え方が似ているうえに、お互いが独自に作った進行管理表が似ていて、面白かった。

そういう発見があると面白い。
とくに、自分と同じ考え方やエネルギー量の人に出会えると、物理的な距離が気にならなくなる。

自分が実際に行ったことがある場所、よく行く場所は、親近感が湧き、自分にとっては、庭、隣町の延長になる。

海外から帰って来たある夜、ふと空を見上げると、月が、前日か前々日に海外で見た続きだったので驚いたことがあった。
そんなことは当然なのだが、月や太陽など他の天体から見ると、地球上の位置は、誤差みたいなものだと思えた。そして、実際に、地球上ならたいていのところには行けるし、行けばいいじゃないかと思った。