終戦の日の翌日に想う

NHKスペシャル「70年目の戦争と平和」シリーズの、いくつかの番組を見ました。

広島の御幸橋で、原爆投下3時間後に撮影された写真に写っている人たちの証言を聞き、写真を分析した「きのこ雲の下で何が起きていたのか」

70長崎の原爆で生き残った子どもたちの70年後を訪ねた「“あの子”を訪ねて~長崎・山里小被爆児童の70年~」

ビルマ戦線とフィリピン戦線に派遣された従軍看護婦の証言をたどる「女たちの太平洋戦争~従軍看護婦 激戦地の記録~」ほか、数本

そのなかでも、印象に残っているのは、「“あの子”を訪ねて」で、4歳で被爆し、孤児になり、親戚の家に引き取られた女性。
「なんでも自分でする。自分でしなきゃいけない」と頑張って生き抜いてきたものの、弱視やてんかんの発作、慢性的な頭痛により、35歳で被爆者のための福祉施設に入居し、以来38年間、ほとんど外に出ることのない生活をおくっているとのことでした。

その方の「戦後70年、そうねえって感じで。私、70年、何してたんだろうって思うことありますよ」という言葉が、なんとも切なく心に残ります。
その方は、原爆が落ちなければ、結婚していたかもしれない、どんな家庭をつくっていたんだろうとも話されていました。

この方に限らず、原爆で生き残った子どもたちの多くが、家族が亡くなるなど、生活環境が変わり、苦労を強いられていました。
さらに、健康を害したり、ケロイドが残ったり、差別されたり、被爆したことを隠さざるを得なかったり、心身ともに傷を負って生きてきています。


写真戦争は、明らかに人々の人生を変えてしまいますが、大人でも生きていくのが大変ななか、いわば巻き込まれてしまった幼い子どもなど、弱い立場の人たちへのしわ寄せは大きいと感じます。

いまや、世界の国々はかつてより影響し合っていますし、戦争の仕方も、テクノロジーの進化で変わっているので、世界大戦のような規模の戦争が起きたら、人類滅亡もあり得るでしょう。

「憎しみはこうして激化した~戦争とプロパガンダ~」で、プロパガンダ映像の撮影に携わった、ノーマン・ハッチ氏が言っています。
「ひとたび戦争が始まってしまったら誰にも止めることはできません。たとえ途中で間違いだと気づきこんなはずではなかったと思っても手遅れなのです」

あの狂気のインパール作戦すら上回る、破滅に至る危険性は、ゼロではないため、歴史から学び、過ちを繰り返さないようにしないといけないと強く感じます。


歴史学者のアンヌ・モレリ氏の「戦争プロパガンダ 10の法則」によれば、私たちは、次のようなプロパガンダの罠に陥るといいます。

101 われわれは戦争をしたくはない
2 しかし敵側が一方的に戦争を望んだ
3 敵の指導者は悪魔のような人間だ
4 われわれは領土や覇権のためではなく、偉大な使命のために戦う
5 われわれも誤って犠牲者を出すことがある。だが敵はわざと残虐行為におよんでいる
6 敵は卑劣な兵器や戦略を用いている
7 われわれの受けた被害は小さく、敵に与えた被害は甚大
8 芸術家や知識人も正義の戦いを支持している
9 われわれの大義は神聖なものである
10 この正義に疑問を投げかける者は裏切り者である

この10の法則は、意識しておいたほうがよいと思います。
敵は悪であり、われわれは正義、疑問を投げかける者は裏切り者という図式は要注意です。
同様に、異なる考え、価値観、違いを許さない。自分が正しく、相手が間違っているという気持ちが、怒り、争い、暴力にもつながります。

相手と自分の「べき(信じていること、常識)」の違いを認識し尊重する「アンガーマネジメント」、相手を尊重したうえで自分の気持ちや意見を伝える「アサーティブ」「異文化コミュニケーション」は、あらためて重要だと感じます。