アンガーマネジメントに対する誤解と、アンガーマネジメントと人権、ダイバーシティとの関係

アンガーマネジメントに対する誤解

「アンガーマネジメント」という言葉が、世の中で、だんだん知られるようになってきました。

私が、人にアンガーマネジメントを教える資格「アンガーマネジメントファシリテーター」を取得した2014年には、検索エンジンで「アンガーマネジメント」と入力すると、「アンガールズ?」と聞いてきていました。けれども、今は、Googleで184万件、YAHOO!で172万件が出てきます。

一方で、アンガーマネジメントは「怒らないよう我慢すること」「怒らない人になること」と誤解されていたりもします。そして、この誤解から次のような声をよく聞きます。

「我慢をすると、ストレスが溜まり、不健康ですよね」「部下や子どもの指導になりません」「怒らないと相手になめられる。相手が言うことを聞かなくなる」「失礼な人や間違ったことをしている人には、即座に怒り、正すべき。そうしたほうが、その人や世の中のためになる。そうせずに、事なかれ主義になるなんてとんでもない」

さらに、アンガーマネジメントは「怒りっぽい人」や「怒鳴ったり暴力を振るったりする人」が学ぶものというイメージもあったりします。

「当社には、怒鳴ったりする上司はいませんので、アンガーマネジメントは不要です」「アンガーマネジメント研修のことは内緒にしてください。問題のある組織だと勘違いされては困りますので」と言われることもあります。

アンガーマネジメントは、「怒らないよう我慢すること」でも「怒らない人になること」でもなく「怒る必要のあることは上手に怒れ、怒る必要のないことは怒らなくて済むようになること」を目指しています。

そのため、そもそも人はなぜ怒るのかという「私たちを怒らせるものの正体」や「怒りが生まれるメカニズム」を知ります。そして、怒りを感じたときに、建設的なアプローチがとれる方法を学びます。上手な叱り方に関しても「アンガーマネジメント叱り方入門講座」で学ぶことができます。

アンガーマネジメントと人権、ダイバーシティとの関係

そして、アンガーマネジメントは、じつは「人権」を尊重し、「ダイバーシティ(多様性)」を「インクルージョン(包括、受容)」することとも関係しています。

「人権」は市民が国王の支配から脱却するためにヨーロッパで生まれた考え方ですが、奴隷や植民地の人は市民には含まれず、女性や子どもも男性と同じ人権を持つものとは考えられていませんでした。

第二次世界大戦後、国際連合ができ、「世界人権宣言」が採択されてから、「すべての人間」が対象となりました(奴隷制度は禁止)。その後、「植民地と人民に独立を付与する宣言」がなされ、人種差別撤廃、女子差別撤廃、子どもの権利の条約も採択されています。

ビジネスにおいては、海外の下請け工場での児童労働が問題になり、セクハラ、パワハラ、マタハラ、非正規雇用や外国人、障害者、性的マイノリティの差別に関連して「人権」が言われるようになってきています。

「ダイバーシティ」は、多様性という意味で、年齢、性別、人種、国籍、宗教、障害、性的指向、能力、価値観、考え方、働き方、その他の違いを指しますが、それらを「インクルージョン(包括、受容)」し、変化と発展においての強みとして、組織運営や経営に積極的に取り入れていこうという動きになっています。

「アンガーマネジメント」のベースとして、自分と人は、考え方や価値観などにおいて、共通点もあるけれども、相違点もあるという考え方があります。

怒っている人は「いちいち言われなくても、普通こうするよね」とか「Aさん、『前の会社ではやらなかった』と言っていたけれど、社会人の常識としておかしいと思う」などと言います。つまり、自分との「違い」が怒りの原因となっていることが少なくありません。

けれども、「普通」「常識」は、人によって違います。

アンガーマネジメントは、違いがあることを前提として、人間関係をよくしていく心理トレーニングです。

違いを「悪」として捉え、分断、対立し、戦うのではなく、違いを「個性」「別の可能性」として捉え、コミュニケーションをとり、よりよい方法を考え、コンセンサス(合意)をとる。そのために「アンガーマネジメント」の考え方、アプローチは役に立ちます。

「アンガ-マネジメント」という言葉が知られるようになってきましたが、誤解もありますし、「人権」「ダイバーシティ」までは、なかなかイメージしてもらえていません。

ですので、自分ができる「平和活動」として、今年も「アンガーマネジメント」を推進していきたいと思います。