NHKの番組を見て分かったイスラエルの状況と思ったこと

先日、NHKのオンデマンドで、イスラエル、パレスチナ関係のドキュメンタリー番組を4本見ました。それらのうち1本に関してまとめました。

・クローズアップ現代 ガザと“ホロコースト生還者” 殺りくはなぜ止まないのか(1月29日放送)

10月7日のハマスによる攻撃を、イスラエルの市民は「2回目のホロコースト」と表現し、ネタニヤフ首相も「ホロコースト以来、最悪の犯罪」と語る。

けれども、ホロコースト生還者は、「国(イスラエル)は正しい道を進んでいない」と言い、故郷を追われたパレスチナ人の苦難の歴史に思いを寄せる。また、別のホロコースト生還者も「残虐な行為は自ら止めるべきだ」、望むのは「平和」だと言う。

ホロコースト研究の第一人者、モシェ・ジメルマン教授(ヘブライ大学、ユダヤ人)は、イスラエルの市民がパレスチナ人の痛みを理解しないのは、「教育を中心としたイスラエルの国家政策によるものだ」と言う。同教授は、イスラエル建国時、ホロコースト生還者は、軽蔑され、差別されていたのに、中東戦争を通し、国は「私たちは犠牲者だから、攻撃を受けたら何をしてもいい」と、ホロコーストを、攻撃を正当化する道具に変えていったと言う。

そして、国の攻撃の姿勢に対し、異論を許さない空気が拡がっている。

東京大学の鶴見太郎准教授は、イスラエルには「被害者スイッチが入ってしまった」と表現する。イスラエルは、女性にも兵役があり、国を守るという意識が叩き込まれる。また、80年代から教育でホロコーストを教えるカリキュラムが組まれている。一方で、若い世代は、イスラエルの建国時のことは知らない。

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先日、1月27日のホロコースト追悼の日に、生存者の子孫たちは、動画で、バイデン大統領にイスラエル政府によるパレスチナ人虐殺の終結を呼びかけています(訳したXへの投稿はこちら)。

彼らは、「Never Again for Anyone」誰にとっても、再び繰り返すことのないようにと言っています。

ナクバを知らない、イスラエルの若者

他の番組では、イスラエルとパレスチナの現状と歴史もレポートしていました。
(下記は、番組での報道からと、そうでないことの両方を書いています。)

イスラエルは1948年の建国時に、パレスチナ人に対して「ナクバ(大災害)」、すなわち、イスラエル軍によるパレスチナ人の虐殺、土地の占領を行なっています。
ナクバにより、パレスチナ人1万5000人が死に、70万人が難民となりました。

その後もイスラエルは、国際法に反し、パレスチナの土地にユダヤ人入植地を拡げていっています。

中東戦争や、イスラエルでのテロ、ハマスの誕生や今回の奇襲は、これまでイスラエルが行なってきたことからもたらされています。
しかしながら、イスラエルの若い人は、イスラエルがパレスチナ人に与えた苦難の歴史は知らず、パレスチナ人、アラブ人は怖い人たち、悪い人たち、殺さなければやられると思い込んでいるのです。それは、加害者としての側面を知らず、被害者意識だけ教育で植え付けられているからです。

ハマスのほうが古代ユダヤ人の子孫かも

若くない人たちは、これまでのいきさつを分かっていても、ネタニヤフ政権の閣僚、ニル・バルカト経済産業相が言う「パレスチナの土地などそもそもないのだ。2000年前、3000年前から、ここは唯一のユダヤ人の国家なのだ」というほうを信じているのかもしれません。

しかしながら、イスラエルの歴史学者、シュロモー・サンド教授は、シオニズムの根拠とされている、聖書に書かれているユダヤ人の歴史は史実ではない、考古学的な痕跡がないと言っています。同教授は、ユダヤ人の離散はなく、むしろ、ハマスのほうが古代ユダヤ人の子孫であるかもしれないとも言っています。

そして、これを裏付けるような遺伝子研究の結果が、ナショナルジオグラフィックの記事にありました。
それは、聖書では古代イスラエル人に征服されたことになっているカナン人の遺骨のゲノム分析により、その遺伝子が、現代の中東に生きるアラブ人とユダヤ人に受け継がれているというものでした。つまり、カナン人が古代ユダヤ人であり、離散せず、その子孫がパレスチナに住み続けていた。別の土地のシオニストは古代ユダヤ人とは関係のない人たちの子孫かもしれないということです。

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いずれにせよ、イスラエルの攻撃で、毎日パレスチナの人たちが死に、傷つき、街が破壊されており、その惨劇を一刻も早く止めることがまずは必要だと、私は強く思っているわけです。

そして、ハマスによるテロは容認できませんが、そこに至るまでの経緯があることは、多くの人に知ってほしいと思います。

ナクバや入植地の拡大、パレスチナが天井のない監獄と言われる状況に対して、パレスチナの人たちが声を上げても、イスラエルは武力で支配し、国際社会も容認、むしろイスラエルに資金援助をしてきました。

国際社会には、今こそ適切な対応が求められています。
番組でも言っていましたが、暴力の連鎖を止めるには「外からの政治介入」が必要だと思います。
番組では、これまでのあり方を変えないと「イスラエルの存続を危うくする」「世界大戦を引き起こす恐れさえある」とも言っていました。

異文化コミュニケーションによる平和的解決への道、その方法論はありますが、まずは、イスラエルの攻撃を止めることだと思います。