長崎大学リレー講座2012 為末大氏

長崎大学リレー講座2012は、サンカクスタジオのセミナーと重なっている回もあり、今年は半分しか出れませんが、今回(2回目)は来れましたので

レポートします。

<セミナーデータ>
タイトル:長崎大学リレー講座2012 長崎からグローバルを考える
     元プロ陸上選手 為末大氏「世界で戦うということ」
日時:2012年11月1日(木)19:00~20:30
場所:長崎大学
主催:長崎大学 共催:長崎新聞社

■為末大氏の講演内容

幼稚園から足が速い子で、走るのは自分にとって大きなことだった。

中3で、6種目(100m、200m、400m、走り幅跳び、三種競技A/B)が全国ランキング1位だった。
このとき、15歳で、身長170センチ、体重66キロだった。これは今と同じ。つまり、早熟型だった。

高校では、陸上に人生をかけていた。自分は1番だったが、2番の子がだんだんと追いついてきた。そこで、自分は一生懸命練習したが、差を縮められる一方。
やがて、陸上で、中学校チャンピオンがオリンピックに行くのは稀、データ上は厳しいということを知った。早く成長した子が中学校チャンピオン

になっていて、自分も早熟型だと知る。

18歳のとき、シドニーで開催された、20歳以下の世界陸上である「世界ジュニア」に出た。
そこで、ハードルと出会う。
ハードルの種目を見ていたら、世界で戦っている人たちなのにあまり上手くない。自分が早く参入したら勝てると思った。自分は、体をうまく使う

能力、巧緻性は優れていると思った。

「勝てない戦場は捨てる」ということ。
長くやってもうまくいかない場合は、うまくいくものを見つけたほうがよい。

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そして、憧れの選手、伊東浩司さんが行なっていた旬のトレーニング方法を試すがうまくいかず、3年間のスランプに陥った。
何が正しいのかわからなくなり、だんだんこんがらがってくる。そして、切羽詰まってくる。
そんなとき、100メートルチャンピオン、モーリス・グリーンの理想の動きを見て、これまでやっていた練習をすべてやめた。

「流行」というのがある。トレーニング法でも、そのときに旬なもの、「あの練習さえやればうまくいくのでは」と思えるものがある。けれども、自分とタイプが違うものを真似してもうまくいかない。

「自分の強みを徹底する」ということ。
自分に合うもの、自分の強みを知って、長所を徹底的に伸ばすことだ。

===

2000年に、初めてのオリンピックに出た。
転倒し、1カ月放心状態だった。
オリンピックは、陸上選手にとって人生で3回のチャンス。次のチャンスは4年後と残酷だ。

けれども、なぜうまくいかなかったのかと考えたら、答えが出た。
風が吹いていて、走りが狂った。
日本の競技場はしっかりとしていて、風の影響はなく、踏んだときの反発もよいから、慣れていなかったのだ。
つまり、それさえ埋めたら、戦えると思った。

そして、海外のグランプリに出ようと思い、エージェントに会って、交渉したいと思った。
友だちに英語を書いてもらい、大阪グランプリに来ている海外のエージェントに声をかけた。
けれども、連絡はなかった。

その後、大会で賞をとったとき、以前、声をかけていた人から連絡があった。
「3日後、ローマだがどうするか?」と。

OKして、ローマに行った。3位に入った。
気をよくしたエージェントは、すぐクロアチアのザグレブに行けという。1位になった。
そして、スイスのローザンヌで3位、パリで5位。
この間、8日間で、4カ国をまわったことになる。

これで名前が売れた。
自分が憧れていた「むこう側」に自分が混じり、その一員になっていた。
1カ月後、世界陸上エドモント大会で、銅メダルを獲得した。

「学ぶより馴染む」ということ。
あまり準備に時間をかけ過ぎず、反復したほうがいい。

その後、またスランプに陥る。周囲の期待と、自分の実力とのギャップ。
海外の選手は、最後のところで力を発揮する。どこが違うのか?
安定した会社員ではなく、賞金で食っていく人になろうと、プロに転向した。

そして、思ったのは「成功は一瞬で終わる」ということ。
メダルを獲れば、シンデレラが王子さまと結婚してハッピーエンドで「いつまでも幸せに暮らしました」となるのかと思ってい

た。
けれども、また登らなきゃいけない次の山、次の山がある。いつまでたっても休めない。

===

そして、2005年に2度目の世界陸上で、銅メダルを獲った。
このとき思ったのは「失敗は生きる」ということ。
以前の自分の失敗が生きて、うまくいった。

ずっと競技をやっていると、何が成功か失敗かわからなくなる。
けれども、取り組み続けていると、失敗が生きてくる。

なぜ走り続けるのか?
自分が25歳のとき、父親が亡くなり、人はいつ死ぬかわからないと思った。
そして、「精一杯に生きる」ことを思った。

県から日本、日本から世界と終盤になると、頑張っても頑張っても結果が出ないことも多い。
目標が達成されなくなる。
うまくいくかどうか、山頂に行けるかどうか、わからない。
けれども、結局のところ、精一杯に生きるしかない。必死で徹底的にやるしかない。

運はあまり信じていない。
けれども、チャンスが来たら、と想定しておく。
そんなことを考えて、本当に狙っている人は、けっこういない。人は案外あきらめる。
毎回狙う、狙い続けているとチャンスが来る。チャンスがチャンスに見えない人もいる。

陸上は、素質もあるが、習慣も大事。
自分がどこを歩いて、何を食べて、誰に会って、どう過ごしているのか。
自然とそうなっているもの、習慣を1回見直して変えてみる。

やらないことを決めるのも大切。
何が本当に大切で、何を捨てていいか。やるメニュー増やして、何時間もトレーニングするようになると、体が回復しなくなる。

世界に行きたい人へのアドバイス。
失敗なんて全然失敗にならないということ。
失敗するサイクルを早める。「挑戦-失敗」を10回より100回やること。
自分の会ったことのない種類の人と会うなかで、自分の立ち位置や戦い方が見えてくる。
(以上)

          ◆ ◆ ◆

「勝てない戦場は捨てる」「自分の強みを徹底する」「学ぶより馴染む」「成功は一瞬で終わる」「失敗は生きる」「精一杯に生きる」など、為末さんの話を聞いていて、これは、仕事やビジネスにも、プライベートにも言える話だなと思いました。

うまくいくかどうかわからない。けれども、必死で徹底的にやるしかない。狙い続けているとチャンスが来る。
「挑戦-失敗」を繰り返すなかで、何かがつかめてくる。
その通りだと思います。
とくに新しいことに挑戦する場合は。
失敗を恐れ、完璧を追究して、結局やる前にあきらめてしまうより、ある程度の準備段階で、仮説を立て、試して調整したほうがいい。
そんなことを感じました。

■セミナーレポート
リレー講座 2011 東日本大震災後の日本を考える (2011年10~12月)
寺島実郎責任監修リレー講座 (2010年10~12月)